103.部屋の模様替え。
寒い日はまだあと一ヶ月くらい続くけれど
俺は片付けと改装に追われていた。
外の壊れた物置小屋を直して
ロフトに置いていた使わない物を移す。
窓辺の僅かなスペースだけど明るさもあるし
狭い方が集中出来るから良いと思う。
カレンと床のワックスをかけて
そこに小さな机と椅子も運び入れた。
ベッドは要らないって言ってたからよし。
あとは服とかを仕舞う引き出し付きの...
「明日だよね!(嬉しそう)」
「そうだよ。きれいにしておかないと」
コンコンコン...
あとは彼女にお願いしたら完成だ。
「こんにちはカレン。レオナルドはどんな具合?」
「もう終わったみたいだよ〜!」
ぐらつく階段はしごを降りる。
これも作り直さないとだな。
「いらっしゃいカーラ。来てくれてありがとう」
「飲み物とかお菓子買ってきたから」
「やった〜!たべるたべる!」
俺がわざわざ家まで呼んだのに
カーラは何だか色々と買ってきてくれた。
(なんて気の利く精霊なんだ...)
それはまた後で頂くとして
今日彼女に来てもらったのには理由がある。
片付けも終わり改装も済んだら
残るはただ一つ。
「それでどんな雰囲気がお好みなのかしら」
彼女にお願いしたのは壁の模様替え。
業者に頼んだら時間もかかって料金も高いけど
色彩の女神なら一瞬で色を染めてみせる。
「難しいな...女子が好きそうな感じとか?」
「それだとざっくり過ぎるわよ」
「女子っていっても今は色々な女子がいるの」
一括りに女子と言っても
最近は“女子”の定義が崩壊している気がするし
10代でも年齢によって嗜好が違うらしい。
大人っぽい色や可愛い感じの柄など種類も様々。
試しにと居間の壁で見本を見せてくれたが
たくさんあってどれが良いのかわからなくなる。
ここは見た目が近いカレンの助言を...
「んーっと、白がいいかな!」
「それは君の好きな色じゃないかな...」
ダメだ...参考にならない。
雲の白、青空の青、木漏れ日の黄色。
どれもウェザー好みの配色だ。
「だったら無難なレースの柄を入れて...」
「ベースは明るいベージュとベビーピンクかしら」
お姫様の部屋みたいな感じもするけど
全体的には落ち着いていて上品な雰囲気。
これなら大丈夫そう。
サッ...ササッ.....
一瞬でロフトの壁紙が変わった。
ついでに俺とカレンの部屋まで好きな壁紙に。
この程度の能力であれば手をかざすだけで
魔力も殆ど使わないのだという。
「だから気にしないで」
「本当に?でもなんか悪いな...」
「いいのよ。この前のお詫びも兼ねてね」
模様替えも終わったから
俺達は居間でひと息つくことにした。
シュワシュワシュワ.....
お菓子の袋を広げて
彼女の買ってきた飲み物をコップに注ぐ。
最近発売されたパチパチソーダは凄く人気で
学生さん達がよく飲んでいる。
シュワっとしていてパチパチ美味しい。
「ぷはぁ...ところで仲直りしたの〜?」
いきなり直球を投げつけるカレン。
会話の流れで聞こうとしていたのに台無しだ。
(機嫌悪くならないといいけど...)
「まあね。いちお謝ってくれたし?」
「とりあえず家出はしないって約束したわ」
その後無事に解決したらしい。
これでマハト氏も安心だな。
「だから今日は泊まりに来たのよね」
「.......はい?」「部屋も空いてるしイイでしょ?」
“泊まり”だから家出ではないと言い張るカーラ。
たしかに一部屋空けたから泊まれるけど
家出少女を匿うつもりはない。
「だって模様替え手伝ったじゃない」
「それはそうだけど...」
やたらと大きなリュックの中から
枕やらパジャマやら...完全にお泊りモードだ。
なんだか罠に嵌められた気がするけど
とりあえずマハトの許可を貰うように言った。
ピロン♪
「レオナルドいいって!」
「絶対に駄目だって怒られると思ったわ」
少し寛容になったのか外泊を許したマハト氏。
意外な返事に嬉しそうなカーラ。
泊まるお礼にと夕飯を作ってくれた。
(マハトが言うほど面倒な性格ではないな)
お腹いっぱいになったところでもう寝る時間。
「私はそこのベッドを使うから」
「...えっと、俺はどこで寝ればいいのかな?」
笑顔で上の方を指差す。
(さっき可愛く改装したロフトだよね...)
ベッドじゃなきゃ嫌だとか言って
俺の一人部屋は乗っ取られてしまった。
カレンのとこで一緒に寝ればいいのに...
「それは駄目。っていうか一緒に寝てるわけ!?」
「私は気にしないよー」「気にしなさいよ!」
ガサガサ...冒険用の寝袋に包まる。
寒い日は時々カレンと一緒に寝ていたけれど
なぜだかカーラに叱られてしまい
俺はロフトで一人凍えながら眠った。




