返事
おいしいお昼ご飯を食べた後、騎士のみんなに思い出したことを話した。
世界中に恵みを与えるにはどうすればいいかって。
みんなは驚いていたけど納得してくれて、それならいつ出発するかって話し合いになったんだよね。
その間ずっと、部屋の隅っこにアマリがいたから、あれ以上お母様のことは話せなかった。
あと、シリウスのことも。
あっという間に時間は経って、気が付いたら晩御飯の時間まであと少し。
続きは明日にしようってことになって解散。
うん、難しい話はお腹がすいてると集中出来ないしね。
一旦部屋に戻ることになって、みんなが会議室を出て行く。
「カイド、あの……ちょっと待って!」
いくらお腹がすいてても、ちゃんと言わないといけないことがあるから。
だから私は慌ててカイドを呼びとめた。
「ジャスミン、どうした?」
カイドが足を止めて優しく訊いてくる。
でも答えるのはもう少しあと。みんな出て行ってくれたけど、あと一人。
「あのね、アマリ。今からカイドと二人だけで大切な話をしたいの」
私が言いたかったことがアマリにはすぐにわかったみたい。
アマリは無表情のまま私をじっと見て、頭を下げた。
「……かしこまりました」
ドアがぱたんと閉まって、ほっと一息。
さて、これからなんて言えばいいんだろう。
カイドはさっきの席に戻って、静かに私が話し始めるのを待ってくれてる。
うむむ、困ったな。
「……もし、私がこの間言ったことを、ジャスミンが気にしているなら忘れていい」
なんで私が言いたかったことがわかるんだろう。
なかなか言い出せない私を気遣ってくれたみたい。
この間って、あの婚約とか、す、好き……ってこととかのことだよね。
頑張れ、私。逃げちゃダメ。
「あのね、カイド。この前のことっていうか……その、婚約は出来ないの。それが言いたくて……」
「なぜ?」
「あ、あの……約束したの、シリウスと。だから私、シリウスと結婚するの」
「だがそれは一年以上前のことだろう? それから状況は色々と変わって――」
「でも約束したの! 約束は破っちゃダメなの! 裏切っちゃダメなの!」
カイドの口からそれ以上聞きたくなくて、ビックリするほど大きな声が出ちゃった。
そりゃ、一年前と今は全然状況が違うよ。
シリウスは王様になったし、私は長い旅に出る。
それでも約束は約束。
「……すまない、ジャスミン。言い方が悪かった。だが、シリウスとは一度きちんと話し合った方がいい」
「でもシリウスは……会いに来てくれたから。十六歳になった日、どうしても鳥に、綺麗なハクチョウさんになりたくて尖塔から飛んだ時、やっぱりネズミにしかなれなくて落ちた私を、変化したシリウスが助けてくれたの」
でも、すぐに国へ帰らないといけないからって、あまりお話できなくて。
あとで王様に結婚のお願いに来たって知って、嬉しかったな。
シリウスはちゃんと約束を守ってくれたんだもん。でも、王様が断ったって聞いて悲しかった。
だからあの時は、自分からシリウスの所に行くつもりだったんだ。もう神殿には戻らないつもりだって。それで――。
「シリウスは家族に裏切られちゃって、すごく悲しんだの。だから私は裏切らないの」
「……そうか、わかった」
私の話を最後まで聞いてくれて、カイドはそこで頷いてくれた。
カイドのことは大好きだけど、これ以上好きになっちゃダメ。
大好きなシリウスのことを裏切れないもん。
うつむいたまま膝の上でぎゅっと両手を握りしめたら、カイドの大きな手がそっと重ねられた。
いつの間にそばに来てたのかな。全然気付かなかったよ。
「ジャスミン、これだけは言っておく。私はジャスミンの騎士だ。この先、何があっても離れない。ずっとそばにいて守り続ける」
「カイド……」
椅子に座る私の足元にひざまずいて、まっすぐに見つめてくる蒼い瞳はとても真剣で。
ううん、カイドはいつも真剣だ。
「……ごめんなさい、カイド」
「謝るな、ジャスミン。これでこの話は終わりだ。いいな?」
「……うん」
「では、我々は一歩一歩前へ進もう。ジャスミンと騎士である私達が、女神達と同じ道を自分達の足で歩むことで、世界は生まれ変わるんだろう?」
「うん」
「これから何年かかるかわからない旅なんだから、力をつけないとな」
「うん」
「では、食事にしようか」
「うん!」
そうだ、これから世界中を女神様達のように歩いて回るんだ。
だから考えてる暇はない。早く、この神殿を旅立とう!




