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ネズミの姫と七星の騎士  作者: もり
第四章

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返事


 おいしいお昼ご飯を食べた後、騎士のみんなに思い出したことを話した。

 世界中に恵みを与えるにはどうすればいいかって。

 みんなは驚いていたけど納得してくれて、それならいつ出発するかって話し合いになったんだよね。

 その間ずっと、部屋の隅っこにアマリがいたから、あれ以上お母様のことは話せなかった。

 あと、シリウスのことも。


 あっという間に時間は経って、気が付いたら晩御飯の時間まであと少し。

 続きは明日にしようってことになって解散。

 うん、難しい話はお腹がすいてると集中出来ないしね。

 一旦部屋に戻ることになって、みんなが会議室を出て行く。


「カイド、あの……ちょっと待って!」


 いくらお腹がすいてても、ちゃんと言わないといけないことがあるから。

 だから私は慌ててカイドを呼びとめた。


「ジャスミン、どうした?」


 カイドが足を止めて優しく訊いてくる。

 でも答えるのはもう少しあと。みんな出て行ってくれたけど、あと一人。


「あのね、アマリ。今からカイドと二人だけで大切な話をしたいの」


 私が言いたかったことがアマリにはすぐにわかったみたい。

 アマリは無表情のまま私をじっと見て、頭を下げた。


「……かしこまりました」


 ドアがぱたんと閉まって、ほっと一息。

 さて、これからなんて言えばいいんだろう。

 カイドはさっきの席に戻って、静かに私が話し始めるのを待ってくれてる。

 うむむ、困ったな。


「……もし、私がこの間言ったことを、ジャスミンが気にしているなら忘れていい」


 なんで私が言いたかったことがわかるんだろう。

 なかなか言い出せない私を気遣ってくれたみたい。

 この間って、あの婚約とか、す、好き……ってこととかのことだよね。

 頑張れ、私。逃げちゃダメ。


「あのね、カイド。この前のことっていうか……その、婚約は出来ないの。それが言いたくて……」


「なぜ?」


「あ、あの……約束したの、シリウスと。だから私、シリウスと結婚するの」


「だがそれは一年以上前のことだろう? それから状況は色々と変わって――」

「でも約束したの! 約束は破っちゃダメなの! 裏切っちゃダメなの!」


 カイドの口からそれ以上聞きたくなくて、ビックリするほど大きな声が出ちゃった。

 そりゃ、一年前と今は全然状況が違うよ。

 シリウスは王様になったし、私は長い旅に出る。

 それでも約束は約束。


「……すまない、ジャスミン。言い方が悪かった。だが、シリウスとは一度きちんと話し合った方がいい」


「でもシリウスは……会いに来てくれたから。十六歳になった日、どうしても鳥に、綺麗なハクチョウさんになりたくて尖塔から飛んだ時、やっぱりネズミにしかなれなくて落ちた私を、変化したシリウスが助けてくれたの」


 でも、すぐに国へ帰らないといけないからって、あまりお話できなくて。

 あとで王様に結婚のお願いに来たって知って、嬉しかったな。

 シリウスはちゃんと約束を守ってくれたんだもん。でも、王様が断ったって聞いて悲しかった。

 だからあの時は、自分からシリウスの所に行くつもりだったんだ。もう神殿には戻らないつもりだって。それで――。


「シリウスは家族に裏切られちゃって、すごく悲しんだの。だから私は裏切らないの」


「……そうか、わかった」


 私の話を最後まで聞いてくれて、カイドはそこで頷いてくれた。

 カイドのことは大好きだけど、これ以上好きになっちゃダメ。

 大好きなシリウスのことを裏切れないもん。


 うつむいたまま膝の上でぎゅっと両手を握りしめたら、カイドの大きな手がそっと重ねられた。

 いつの間にそばに来てたのかな。全然気付かなかったよ。


「ジャスミン、これだけは言っておく。私はジャスミンの騎士だ。この先、何があっても離れない。ずっとそばにいて守り続ける」


「カイド……」


 椅子に座る私の足元にひざまずいて、まっすぐに見つめてくる蒼い瞳はとても真剣で。

 ううん、カイドはいつも真剣だ。


「……ごめんなさい、カイド」


「謝るな、ジャスミン。これでこの話は終わりだ。いいな?」


「……うん」


「では、我々は一歩一歩前へ進もう。ジャスミンと騎士である私達が、女神達と同じ道を自分達の足で歩むことで、世界は生まれ変わるんだろう?」


「うん」


「これから何年かかるかわからない旅なんだから、力をつけないとな」


「うん」


「では、食事にしようか」


「うん!」


 そうだ、これから世界中を女神様達のように歩いて回るんだ。

 だから考えてる暇はない。早く、この神殿を旅立とう!



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