制作
カイドのことは大好き。
でも昨日のことを考えると、ドキドキとモヤモヤが一緒になって、グルグルしちゃう。
お外はとってもいいお天気なのに、なんだか憂うつ。
うーん。お外で遊べば元気になれるかな。
あの花壇のすぐ側の土って、乾いた時には砂浴びにもってこいだと思うんだよねえ。
今はちょっとぬかるんでるけど、乾いてる場所もあって……。
一人でお部屋にいても、モンモンするだけ。
ムズムズの兆候だってないし。うん、決めた。
こんなにお天気なんだから、お外でひなたぼっこしよう。
ちゃんと靴もパンツもはいてるし、準備OK。さあ、出発。
「あれ? 何してるの?」
ガラリと窓を開けて、よいしょって窓枠に足をかけたところで気が付いた。
少し離れた所にある大きな木に、ファドがワシさんの姿でとまってる。
「姫こそ、何する気なんだ? そこは三階だぞ?」
「ちょっとお外で遊ぼうと思って」
ファドの返事を待たずに、えいって大きな木の枝に飛び移って、スルスルとすべり下りて無事に着地。
うん。自分でも驚きだけど、慣れてるみたい。
「姫……パンツ見えたぞ」
笑って言うファドの言葉はムシムシ。
目的の花壇の側に屈んでチェック。うん、思った通りの土質。
さっそく座り込んで作業開始。
気持ちのいいポカポカ陽気に、いつの間にかご機嫌で鼻歌を歌っていたら、一緒に小鳥さん達も歌ってくれた。
ワシさん姿のファドが側にいたから、近寄っては来なかったけどね。
ファドが私の手元をのぞき込んで「なんだ、それは?」って訊いてきたけど内緒。
答えはちょっとだけ待ってもらわないと。
「できた!」
「何が?」
「カイド!?」
突然聞こえた声にビックリ仰天。
磨くことに夢中になってて、カイドに全然気付かなかったよ。
「なんだよ、俺と姫の愛の時間を邪魔すんなよ」
「ああ、悪かったな。で、ジャスミンは何をしてたんだ?」
カイドは不満そうなファドを軽くスルーして、もう一度訊いてきた。
私は出来栄えに満足してニッコリ。カイドとファドの前に手を差し出して答えた。
「泥だんご!」
「……泥……ダンゴ?」
「うん! 土がいいからすごく上手にできたよ」
泥だんごは土が重要。
水で湿らせながら乾いた土でいっぱい磨くと、鉄球のようにピカピカになるんだよね。
体育の時間に先生のお手伝いがない時は、鉄棒の下で泥だんごを作りながら見学してたから、泥だんご博士って呼ばれるほどの腕前になったもん。
中学に上がってからは入院してばっかりで作るのも久しぶりだったけど、腕は落ちてないね。ふふふん。
って、あれ?
カイドもファドも不思議そうな顔してる。
ひょっとして泥だんごを知らないのかな?
「カイド、手を出して」
カイドは一瞬眉を寄せたけど、すぐに応えてくれた。
その大きな手にぽんと泥だんごをのせる。
「意外と重いな」
「うん」
ちょっと驚いたカイドに頷いて、私は適当な的を探した。
よし、あの壁にしよう。
「これをね、あの壁に向かって思いっきり投げて」
「……だが、それでは壊れてしまうだろう?」
「いいの。泥だんごの醍醐味は壊すことにあるんだから」
「へ~」
カイドは訳がわからないって顔してるけど、ファドは興味津々。
ペイントとかして綺麗に完成したものを壊す。
これぞ芸術なんだって。……ホントは私もよくわからないけど、誰かが言ってた。
「さあ、どうぞ」
私の声を合図に、カイドが大きく振りかぶって投げた。
泥だんごは見事に壁に命中。
パンって音と一緒に砕け散った。
「……少し、気持ちいいな」
「でしょ!?」
ストレス発散にもってこいなんだよね。
うん、私もスッキリ。モヤモヤもどっかに消えちゃった。
そうだよ。結婚についてはよくわからないけど、カイドが喜んでくれると嬉しい。
その気持ちが大切なんだ。
ファドも楽しそうに見てるし、よかった。
人間の姿だったら、ファドにも作ってあげたのにな。
幸せ気分を満喫してたら、甲高い声が花壇の向こう側から聞こえた。
「姫様! また泥だらけになられて!!」
しまった。アマリに見つかっちゃったよ。
駆け寄って来るアマリの顔は真っ赤になってる。
慌てて泥だらけの手をスカートで拭いたら、ドレスが汚れちゃった。
ふむむむ。大失敗だ。
「“また”って、どうやら、姫はこの遊びも常習らしいな」
「そうみたいだねえ」
笑いながら言うファドに頷いてから覚悟を決めて、よいしょと立ち上がった。
カイドが笑ってくれるから、怒られてもいいんだ。
綺麗なドレスを泥だらけにしちゃったのは申し訳ないけど。
さあ、正々堂々、叱られよう。
……と思ったけど甘かった。
アマリのお説教は長すぎて、思わず居眠りしちゃったら、またお説教が続いて。
自業自得だけど、疲れちゃったよ。
だから、今度は見つからないようにしようって、すごく反省したんだ。




