表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネズミの姫と七星の騎士  作者: もり
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/51

旅程


 人工湖のほとりを進んで丘を越えて、森の中に入る。

 一晩中、気を張って夜行性の怖い動物さん達に注意しながら走ったから、おひさまが昇り始めた時には、すっかり疲れてた。

 うん、そろそろ休もう。

 スピードを落としてキョロキョロしながら歩いてると、木の根っこにちょうど良さそうなくぼみを見つけた。


「もしもーし! 誰もいませんか?」


 返事もないし、そっと覗いても何かの動物さんが巣にしてる気配もない。

 よし、ここでちょっと寝よう。

 そう決めると、荷物を下ろして木の周りから落ち葉をかき集めた。

 小鳥さん達がその様子を不思議そう見てる。

 そうだ、ちゃんと挨拶しとかないとね。


「みなさん、おはようごさいます。少しだけここで休みたいので、お邪魔させて下さい。よろしくお願いします」


 通りすがりの侵入者だから、お行儀よくペコリと頭を下げる。

 だけど、みんな私のことは知ってるみたいだった。

 お城で会ったかな?


「うん、わかった。しっかり休んでね!」

「じゃあ、ボクは悪者が来ないか見張ってるよ!」

「姫様、お腹すいてない? おいしい虫でも捕ってこようか?」


 みんなが優しく声かけてくれるから嬉しくなっちゃうよ。

 さすがに最後の言葉には遠慮するけどね。


「みんな、ありがとう! でもお弁当があるから大丈夫!」


 他のネズミさん達はイモムシとか大好物だけど、私はどうしても虫はムリなんだ。

 木のくぼみに落ち着いたらホッとして、お腹がグーって鳴った。

 お弁当を持って来て正解。

 ブランケットを広げてパンを取り出す。


 幸せ気分でパンにかじりついて、少し小鳥さん達にもおすそわけ。

 本当はもうひとつ食べたいけど、それはお昼用に取っておこう。

 ふむむむ。

 最近はお腹いっぱい食べてたから、物足りないよ。


 ダメダメ。がまん、がまん。

 これはダイエットにもなるし、頑張らないと。

 ふるふる頭を振って、ブランケットをたたんで枕にする。

 それから落ち葉に体を埋めて、目を閉じた。


 そういえば、今日はまだ人間になってないなあ。

 もし寝てる間に変身しちゃったらどうしよう?

 うーん。まあ、その時はその時に考えよう。


 結論が出ると安心して、夢も見ないぐらいにグッスリ眠った。

 いくら疲れてたからって警戒心なさすぎだなって、あとで反省したけどね。


 


   * * *




 お昼過ぎまでたっぷり寝た私は、気持ちよく目が覚めた。

 視界に入ったフニフニ揺れるおひげに、ネズミのままだって気付いて嬉しくなる。

 でも右側のおひげが二本折れちゃってるのを見て、悲しくなった。


 大切なおひげなのに酷いよ。

 まだ痛いし、感覚が鈍って困るんだから。

 今度は腹が立ってきてプンプンしてたら、お腹がグーって鳴った。

 だから怒るのは中止。

 残りのパンを食べてると、幸せ気分が戻ってきた。


 しかも小鳥さん達が私のために、木の実を取って来てくれたんだ。

 それにリスさんやこの森で暮らすネズミさん達まで色々持ち寄って来てくれて、ちょっとしたパーティーになって、とっても楽しかった。


 夕方近くになって、お土産に持たしてくれた木の実をブランケットに包んで、お礼とお別れを言って、張り切って出発。

 みんなが教えてくれたことによると、聖なる森まで私の足なら五日くらいかかるって。

 聖域の方向は動物の本能でわかるし、思ったより遠くなくてよかったよね。


 所々に森や林があって、人里はあんまりないらしいけど、それでも気を付けなきゃ。

 人里にはネズミを目の敵にしてるネコさんが多いって、前に聞いたことあるし。

 でもデブっちょだから、体格は変わらないんだよね。

 ただネコさんには鋭い爪があるから。


 みんなは姫様なら大丈夫って言ってたけど、なんでかな?

 人間に変身できるから?

 とにかくオオカミさんのことだってあるし、油断大敵。


 走ってる途中で見つけた木の実を頬袋に蓄えたり、湧水を飲んで休憩したり、綺麗なチョウチョを追いかけて遊んだりしながら森を抜けた時には、もうお空にはたくさんのお星様が光ってた。

 目の前に広がるのは風に揺れる麦畑。

 きっともうすぐ美味しそうな黄金色に輝くんだろうなあ。


 お鼻をクンクンさせて、思わずウットリ。

 って、あれ? 何か変?

 もう一度お鼻をクンクンさせたけどよくわからなかった。

 気のせいかな?


 木陰に座って、頬袋の木の実を食べて腹ごしらえ。

 この畑の先にある村にはネズミ捕りの罠がいっぱい仕掛けられてるって、さっき教えてもらったから、ちょっと迂回しないとダメなんだよね。


 あと、今の時期はヘビさんが活動を始めたって。

 だけど万が一間違って襲われても、私を丸飲みできるほど大きいヘビさんはいないよって言って笑った、あの若いネズミさんは許せないよ。

 乙女に向かって失礼しちゃうよね。

 確かに私はデブっちょだけど、それを笑うなんてデリカシーがないんじゃないかな。

 絶対、彼女もいないと思う。


 さてと、お腹もふくらんだし、休憩おわり。

 勢い付けて、よいしょって立ち上がったら、後ろの方の茂みでガサゴソって何かが動いた音がした。

 ん? なんだろう?

 お耳をピンと立てて、おひげをピクピクさせてみたけど何だったのかはよくわからない。

 もちろん動物さんの気配はあちこちにあるから、特に気にする必要もないかな。

 危険な感じは全然しないしね。


 できれば今晩中には次の森に着きたいから、頑張らなきゃ。

 ここまで順調に来たし、この先もきっと大丈夫。

 気合いを入れて。さあ、走ろう!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ