29話 貴兼門家の終焉
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「貴兼門家だ!銀行の融資を頼みたい!」
『…は?貴兼門…様ですか?…ええと…先ずは来られてから…』
「おい!つい最近まで貴兼門と言ったらすぐに対応しただろう?!」
『申し訳ございません…失礼ですが…そのような名のお客様に心当たりは…』
「…なっ…?!なんだって?!」
興人が必死に融資を得ようと、各所へ連絡を取るが、皆どこも似たような対応だった。
「おかしい…何故どこも我々貴兼門家の名を知らぬと言い張るんだ?!」
つい先日、ダンジョン購入した際には、あれだけぺこぺこと諂っていた奴らが…
「一夜明けて、まるで、どいつも記憶を失ったみたいじゃないか?!」
興人が頭を抱える…そんな横で貴兼門当主は、
膝から崩れ落ちる。
「い、隠蔽していた記憶が…戻ったんだ…」
「はあ?!…父さん、いったい…」
父である当主は既に、虚空を見るだけで我を忘れたかのように呆け、応答しなくなった。
「な、何が…どうなってるんだ?!
全ては華乃のせいか?…い、いや…世夜子のせいなのか?!」
「いやぁねえ?…私のせい?
ただの自業自得じゃないのさ?あはは!」
「はっ?!世夜子!!お前…よくも…」
貴兼門家の書斎に、世夜子が入って来た。
茶会で披露目された時とは、まるで別人のような華美で毒々しい夜嬢のような格好だ。
「私はただ、“アドバイス”しただけ…ダンジョン購入なんて馬鹿な事したのも、アンタの意思だろ?」
世夜子は、馬鹿にしたような視線を興人へ送る。
「あとねぇ?…貴兼門家なんて…本来は存在しない“名家”なんだよ?十数年前までは名家である黒鳥家で働く、ただの使用人の家系だったのさ」
「は?…ただの使用人の家って……」
そんな事は無いと興人は否定したかった。
しかし、自分の幼い頃の記憶が徐々に思い出されてきた。
「う、嘘だろ?な、なんで??
記憶が…書き換えられてるんだ?!」
「私が記憶を書き換えてやったのさ!
黒鳥家の記憶を世間から消して…代わりに貴兼門家が黒鳥家に成り代わって名家を名乗るってね!」
「……な…」
世夜子は、
カラクリを知り、衝撃を受ける興人を楽しそうに見る。
「ああ、楽しかった!黒鳥家の資金を使い…貴兼門家も財を成していったけど…
金持ちを不幸へ堕とすのは最高よねぇ?」
「お、お…お前は…何者なん…だ?」
興人が世夜子を見て、ガタガタと震え始める。
「私の事より…アンタ、自分の事を心配したら?
呪縛が破られれば…相手へ掛けた呪いは自分へ返ってくるのよぉ?」
「え……?…返るって…ぐ、ぐうっ???」
世夜子が興人に説明した途端…興人の体に異変が起こる。
深い水の中にいるような、泥の中にいるような
苦しく、体が異常な重さに見舞われた。
「た、助け……く、苦し……」
「あはははは!!これも自業自得ねえ!」
起き上がれない興人と、呆けたままの当主を捨て置き、世夜子は貴兼門家をでて行く。
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