紅葉狩り その11
グゥゥゥゥゥゥ……!!
巨大鬼――亡山鬼のお腹が鳴るたび、
山がビリビリ震えます。
落ち葉が跳ね、
木々がざわめきました。
ショウタは転がりながら叫びます。
「食欲が災害レベルぅぅ!!」
亡山鬼は苦しそうに腹を押さえていました。
青白い炎が口から漏れています。
『腹……減った……。』
その声には怒りだけじゃなく、
どこか悲しさも混じっていました。
ピースケは静かに近づきます。
サヨが慌てました。
「危ないよ!」
でも。
ピースケは穏やかな顔。
「大丈夫ですぅ。」
亡山鬼は巨大な目でピースケを見下ろします。
『……デカい鳥。』
ショウタが小声。
「鬼にまでそう認識なんだ。」
ピースケは優しく聞きました。
「最後にご飯を食べたの、いつですかぁ?」
静寂。
亡山鬼は少し考えるように空を見ます。
『……覚えてない。』
風が吹きました。
紅葉が舞います。
『封印されて……ずっと暗かった。』
サヨの表情が曇りました。
骸骨騎士も静かに目を閉じます。
『昔、この鬼は山を喰らった。』
『だから封印された。』
亡山鬼は苦しそうに頭を抱えました。
『でも……腹が減る……。』
その瞬間――
グォォォォ!!
鬼の体から青白い霧が噴き出します。
周囲の木々が凍り始めました。
ショウタが青ざめます。
「空腹で暴走してる!?」
山神が低くうなります。
『飢えの呪いだ。』
すると。
ベルフェルが前へ出ました。
全員振り向きます。
ベルフェルは真顔。
そして、
パン箱を開きました。
湯気。
ふわぁぁ……。
秋の香り。
焼き芋。
栗。
はちみつ。
サヨが目を輝かせます。
「いい匂い……!」
ベルフェルは巨大鬼を見上げ、
静かに言いました。
「食うか。」
ショウタ絶叫。
「交渉そこぉ!?」
亡山鬼の鼻がヒクヒク動きます。
青白い目が揺れました。
『……パン。』
ベルフェルは巨大サイズのパンを取り出します。
いつの間に作ったのか不明。
もはや才能。
『超特大・秋のほくほくパン』
「名前かわいいな!?」
ベルフェルは鬼へ放り投げました。
亡山鬼は反射的にキャッチ。
そして――
ぱくり。
静寂。
モグモグ……。
山全体が静まり返ります。
ショウタ、小声。
「……どう?」
亡山鬼は止まりました。
青白い炎も少し弱くなっています。
やがて――
ポロリ。
巨大鬼の目から、
涙が落ちました。
『……うまい。』
全員停止。
サヨが目を丸くします。
「泣いた……。」
亡山鬼は震える声で言いました。
『あったかい……。』
紅葉が風に舞います。
『ずっと……寒かった。』
骸骨騎士が静かに剣を下ろしました。
山神も目を細めています。
しかしその瞬間――
亡山鬼の体に貼られていた破れたお札が、
突然赤く光りました。
ビキビキビキ!!
鬼が苦しみ始めます。
『ガァァァァ!!』
ショウタが叫びました。
「今度は何ぃぃ!?」
お札から黒い文字が浮かび上がります。
山神の表情が変わりました。
『……封印の呪いが暴走している。』
亡山鬼の青白い炎が、
どんどん黒く染まっていきます。
『止マレナイ……!!』
巨大な鬼が苦しみながら、
山へ向かって暴れ始めました。
そして――
額に刺さった古い鳥居が、
ゆっくり砕け始めたのでした。




