沈没船 その3
霧の海。
幽霊船。
大量のスケルトン船員。
そして――
赤い目の骸骨船長。
海風が冷たく吹き抜けました。
ショウタは剣を構えながら叫びます。
「どうすんだこれぇ!!」
スケルトン船員たちは次々によじ登ってきます。
カタカタカタ!!
ガンツがロープを振り回しました。
「近づけるな!」
ベルフェルは炎。
エリシアは光の羽。
ゴブリンたちがいたら泣いて逃げるレベルの大乱戦です。
しかし。
ピースケだけは、
じっと骸骨船長を見ていました。
『……。』
赤い目。
怒り。
悲しみ。
そして、
どこか助けを求めるような気配。
ピースケは静かに声をかけます。
「あなたは、何を守っているんですか?」
その瞬間。
海が静まりました。
ショウタが振り向きます。
「ピースケ!?」
骸骨船長は動きを止めています。
やがて。
ギギギ……と首を動かし、
低い声で言いました。
『……約束ダ。』
サヨが小さく聞き返します。
「約束?」
船長の赤い目が揺れます。
『我ハ……王冠ヲ……届ケネバナラナカッタ。』
魔王が目を細めました。
「深海の王冠か。」
船長はゆっくりうなずきます。
『嵐ニ遭イ……船ハ沈ンダ。』
霧が濃くなります。
『ダガ……我ハまだ……終ワレナイ。』
ショウタがぽつり。
「ずっと届けようとしてたのか……。」
そのとき。
海面が揺れました。
ザバァァァン!!
巨大な影。
サヨが悲鳴を上げます。
「また何か来た!」
海の中から現れたのは――
巨大タコ。
しかもめちゃくちゃ大きい。
船よりデカい。
ショウタ絶叫。
「今度はクラーケン系ぇぇぇ!!」
巨大タコは幽霊船へ巻きつきます。
ゴゴゴゴ……!!
ガンツが顔面蒼白。
「“海喰らい”だ!!」
ベルフェルが真顔。
「名前が強い。」
魔王は腕を組みます。
「昔見たな。」
「なんで知り合いみたいに言うんだよ!!」
巨大タコは赤い目を光らせ、
触手を振り上げました。
ドォン!!
船が激しく揺れます。
サヨが転びそうになりました。
ピースケが羽で支えます。
「大丈夫ですかぁ。」
ショウタが叫びます。
「ピースケ余裕あるな!?」
そのとき。
骸骨船長が海喰らいをにらみました。
『……邪魔スルナ。』
なんと。
幽霊船側のスケルトンたちが、
一斉に巨大タコへ向かっていきます。
ショウタが目を丸くしました。
「えっ、共闘!?」
海喰らいの触手。
スケルトン軍団。
海の上で大混戦。
ガンツが叫びます。
「今のうちに逃げるぞ!」
しかし。
ピースケは静かに首を振りました。
「まだです。」
全員が振り向きます。
ピースケは骸骨船長を見ていました。
「このままだと、あの人はずっと終われません。」
海風が吹きます。
骸骨船長は、
巨大タコと戦いながらも、
ずっと胸元を押さえていました。
そこには――
古びたペンダント。
サヨが気づきます。
「あれ……写真?」
一瞬、
ペンダントが開きました。
中には、
小さな女の子の絵。
ショウタが息をのみます。
「家族……?」
クロノワールが低くつぶやきました。
「帰れなかったんだな。」
ピースケは静かに目を閉じます。
そして。
「……王冠を届けましょう。」
ショウタが振り向きました。
「え?」
魔王が少し笑います。
「なるほど。」
ベルフェルもうなずきます。
「悪くない。」
サヨも力強く言いました。
「みんなで終わらせてあげよう!」
その瞬間――
巨大タコの触手がこちらへ振り下ろされます。
ドォォン!!
船、大揺れ。
ショウタ絶叫。
「まず生き残るところからだぁぁぁ!!」




