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みんなの夢

秋も深まってきたある日――


村には冷たい風が吹いていました。


その日はめずらしく荷物運びも早く終わり、


ピースケたちは広場で焼きイモを食べながら休んでいました。


ぱちぱち燃える焚き火。


甘い香り。


サヨは焼きイモを半分に割って笑います。


「ほくほくだー!」


ショウタは熱そうにしながら食べていました。


「あっつ!!」


ベルフェルは真剣な顔でイモを見ています。


「焼きイモパンにできるかもしれん。」


エリシアが静かにつぶやきました。


「また新商品ですか。」


魔王はもう三本目を食べています。


「秋はよい。」


そのとき。


サヨがふと思いついたように聞きました。


「ねえ、みんな将来の夢ってある?」


ショウタが答えます。


「オレは冒険家かなー。」


「ショウタっぽい!」


ベルフェルは腕を組みました。


「世界一のパン屋。」


「本気なんだな……。」


エリシアは少し考えます。


「……休暇を増やしたいです。」


ショウタが吹き出しました。


「切実!!」


魔王は真顔でした。


「キャベツ畑を持つ。」


「平和になったなぁお前。」


みんな笑っています。


そして。


サヨがピースケを見ました。


「ピースケは?」


風が静かに吹きます。


ピースケは少し驚いた顔をしました。


「私ですか。」


「うん!」


ピースケは焼きイモを見つめながら、しばらく黙っていました。


荷物を運び、


人を助け、


迷子を送り届け、


いろんな出会いを重ねてきた毎日。


でも――


“自分の夢”を考えることは、あまりなかったのかもしれません。


ショウタが言います。


「なんかありそうじゃん。」


サヨもうなずきました。


「聞きたい!」


ピースケは少し困ったように笑います。


「難しいですねぇ。」


すると。


クロノワールが静かに言いました。


「お前は、ずっと“運んで”いる。」


全員が黒猫を見ます。


「荷物だけじゃない。」


風が、やさしく焚き火の煙を揺らしました。


「居場所を失ったやつ。」


「迷ったやつ。」


「孤独だったやつ。」


クロノワールは静かに続けます。


「お前は、そういうものを運んできた。」


ピースケは黙って聞いていました。


サヨが小さく言います。


「……たしかに。」


ベルフェルもぽつり。


「悪魔だった我までパン屋になった。」


「影響でかすぎる。」


ショウタが笑います。


するとピースケは、空を見上げました。


夕焼け空。


赤く染まる雲。


遠くへ伸びる道。


そして静かに言います。


「……昔。」


みんなが耳を傾けます。


「前世の記憶の中で、“帰れなかった人たち”を見たことがあるんです。」


風が少し冷たくなりました。


「帰る場所をなくした人。」


「ひとりぼっちだった人。」


「忘れられてしまった人。」


サヨは静かに聞いています。


ピースケは穏やかに笑いました。


「だからかもしれませんねぇ。」


「?」


「私は、“帰れる場所”を作りたいのかもしれません。」


焚き火がぱちりと鳴ります。


ショウタが聞き返しました。


「帰れる場所?」


「ええ。」


ピースケの目は、とてもやさしかった。


「疲れた人が休めて、」


「迷った人が戻れて、」


「ひとりじゃないと思える場所。」


サヨの顔がぱっと明るくなります。


「すてき!」


ベルフェルもうなずきました。


「悪くない。」


魔王は真顔です。


「キャベツ畑も必要だな。」


「そこ重要なんだ。」


エリシアは静かに微笑みました。


「きっと、賑やかな場所になりますね。」


するとショウタが笑います。


「もう半分できてる気がするけどな。」


みんなが周囲を見回しました。


パン屋。


馬車。


焚き火。


笑い声。


悪魔。


天使。


猫の亜人。


ゴブリンたちまでいる。


たしかに、普通ではない。


でも――


どこか安心できる場所でした。


ピースケは少し驚いたように瞬きをします。


そして。


ふっと笑いました。


「……そうかもしれませんねぇ。」


そのとき。


ぐぅぅぅぅ。


お腹の音。


全員が振り向きます。


魔王でした。


「焼きイモを追加したい。」


ショウタが笑い転げます。


「雰囲気ぃ!!」


サヨも大笑い。


焚き火の火は、やさしく揺れていました。


将来の夢。


それは遠い未来の話かもしれない。


でもきっと、


ピースケはもう少しずつ――


誰かが“帰りたい”と思える場所を、


作り始めているのでした。

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