賢者の埋蔵金 その18
静寂。
迷宮の中に、
ショウタのツッコミだけが響きました。
「人生論の着地が毎回ごはん!!」
でも。
黒い影は、
初めて少しだけ笑ったように見えました。
『……変な鳥』
その輪郭が、
さらさらと崩れていきます。
黒い霧になって、
ティーカップへ吸い込まれていく。
やがて。
カップはただの白い陶器へ戻りました。
迷宮の揺れも止まります。
コンパスたち大歓声。
『概念崩壊回避ぃぃ!!』
『方向が戻ったぁぁ!!』
『北は北ー!!』
ショウタがへたり込みました。
「もう“北が北”だけで安心する……」
巨大亀は静かにうなずきます。
『試練は終わった』
トンネル博士は、
少し恥ずかしそうに頭をかきました。
「……危なかったです」
「力に飲まれるところだった」
サヨが笑います。
「博士、顔すごかったよ。」
「世界変えそうだった。」
博士、青ざめ。
「そんな顔してました!?」
巨大猫ぼそっ。
『してた』
「即答!」
そのとき。
エルドランの幻影が、
満足そうに杖をつきました。
『これで安心して眠れるわい』
ショウタが聞き返します。
「え?」
賢者は笑います。
『この迷宮も、役目を終えた』
静寂。
次の瞬間――
ゴゴゴゴゴ……!!
迷宮全体が震え始めました。
ショウタ絶叫。
「終わる時いつも崩れるぅぅ!!」
ダイチモグラが叫びます。
『長老! 迷宮が閉じます!』
巨大亀は落ち着いていました。
『うむ』
『長く開きすぎた』
床が崩れ、
道が消えていく。
逆さ家もゆっくり霧へ変わっていきます。
助けられた青年が涙目。
『せっかく慣れてきたのに!』
ショウタ即ツッコミ。
「慣れるな!!」
クロックが時計を構えました。
『出口を固定します!』
リバースも並びます。
『今度は前向きにね』
二人の時計が同時に光りました。
カチ。
カチ。
すると。
迷宮の奥に、
一本の光る道が現れます。
地上へ続く道。
ピースケが風を広げました。
「みんな、急ぎましょうかぁ。」
一行は走り出します。
崩れる迷宮。
落ちる岩。
暴走するコンパスたち。
『右ぃぃ!!』
『左ぃぃ!!』
『もう分からん!!』
「お前らが!?」
でも。
ピースケの風が、
ちゃんと“出口の方向”を示していました。
ショウタが走りながら叫びます。
「結局いちばん頼りになるの風なんだよなぁ!!」
そして――
最後のジャンプ。
全員が光の出口へ飛び込んだ瞬間。
ドォォォォン!!
地下迷宮は、
静かに閉じました。
地上。
時霧の谷。
朝の風。
ショウタは地面へ倒れ込みます。
「生還したぁぁ……」
白もふは草むらへダイブ。
『地面だぁ……』
巨大猫はその場で丸くなりました。
『……寝る』
夜の龍も空を見上げます。
『静カダ』
すると。
背後で、
ゴゴゴ……と音。
全員振り向きます。
なんと。
巨大亀が、
地上まで顔を出していました。
ショウタ、びくっ。
「まだいた!」
巨大亀はゆっくり口を開きます。
『最後に一つ、教えてやろう』
静寂。
その目が、
ピースケを見ました。
『賢者エルドランが本当に隠したかった宝は――』
その瞬間。
エルドランがめちゃくちゃ慌て始めます。
『待て待て待て!!』
ショウタ。
「なんで止めるんだよ!?」




