賢者の埋蔵金 その10
カチッ。
その音は、
今までと少し違いました。
軽い。
小さい。
まるで――
“誰かがこっそりボタンを押した”みたいな音。
ショウタがぴくっと反応します。
「……また来た。」
サヨも苦笑い。
「もう条件反射だね。」
時霧の谷には、
朝の光が差しています。
時計塔の修理も始まり、
時計妖精たちは元気に飛び回っていました。
『針持ってきてくださーい!』
『油さしまーす!』
『おやつ休憩でーす!』
白もふ即参加。
『おやつ!』
ショウタがツッコミ。
「働いてない!!」
そのとき――
谷の入口のほうから、
ドタドタドタッ!!と誰かが走ってきました。
全員が振り向きます。
現れたのは、
ボロボロの帽子をかぶった小柄な男。
巨大なリュック。
丸メガネ。
そしてなぜか、
スコップを十本くらい背負っています。
男は息を切らしながら叫びました。
「た、大変だぁぁぁ!!」
ショウタ、即答。
「また!?」
男はピースケたちを見るなり、
目を輝かせます。
「あなたたちが“空と夜と時間を救った旅団”ですね!?」
ショウタが頭を抱えます。
「そんな呼ばれ方してんの!?」
男はぺこぺこ頭を下げました。
「私は遺跡学者のトンネル博士!」
『博士』と名乗った瞬間、
白もふが小声。
『変な人っぽい』
「初対面!!」
トンネル博士は地図を広げます。
そこには、
巨大な“地下迷宮”の絵。
しかも。
真ん中に大きく書かれていました。
《賢者の“本当の埋蔵金”》
静寂。
ショウタ、停止。
「……は?」
クロックが眉をひそめます。
『まだ続きが?』
エルドランの幻影は、
急に目をそらしました。
ショウタ即反応。
「おい賢者ぁぁ!!」
エルドラン、咳払い。
『こ、こっちは別件じゃ』
「絶対なんかあるだろ!!」
トンネル博士は興奮気味。
「伝説によると、賢者エルドランは“世界をひっくり返す宝”を地下へ隠したんです!」
サヨが聞き返します。
「世界をひっくり返す?」
博士は真顔でうなずきました。
「はい!」
「しかも入口は三日ごとに場所が変わる超移動迷宮!」
ショウタ、虚無顔。
「嫌な予感しかしない。」
その瞬間――
時霧の谷の地面が、
ゴゴゴゴゴ……と揺れ始めました。
時計妖精たち大混乱。
『地盤異常ですー!!』
『地下で何か動いてますー!!』
すると。
谷の中央に、
巨大な穴が開きました。
ドォォォォン!!
土煙。
崩れる岩。
そして穴の奥から、
ぬぅっと現れたのは――
“巨大なモグラ”。
でも普通じゃない。
頭に古代遺跡みたいな神殿を乗せています。
ショウタ絶叫。
「なんで遺跡を背負ってるんだぁぁぁ!?」
巨大モグラは、
ゆっくりこちらを見ました。
そして低い声で言います。
『……静かに掘れ』




