雲竜 その3
雲の橋は、
ふわふわしていました。
でも落ちません。
踏むたびに、
しゅわっ、と柔らかい音がします。
ショウタは顔面蒼白。
「これ本当に安全!?」
タヌキは四つ足でへばりついています。
「下見ない下見ない下見ない……!」
しかし下を見ると――
雲の切れ間の遥か下に、
村が豆粒みたいに小さい。
ショウタ即終了。
「うわぁぁぁ高いぃぃ!!」
サヨはちょっと楽しそうです。
「空の散歩みたい!」
ピースケは風を感じながら歩いていました。
「気持ちいいですねぇ。」
ミニピースケたちも大はしゃぎ。
『ふわふわですぅ!』
『雲食べれますぅ?』
『ちょっと薄味ですぅ。』
ショウタがツッコミ。
「食うな!!」
そのとき――
前方の雲が大きく裂けました。
ゴォォォォ……。
一同が顔を上げます。
そこに浮かんでいたのは、
“空の上の山”。
巨大な岩山が、
空に逆さまの滝を流しています。
島と島が鎖でつながれ、
空中森林まで生えていました。
サヨが息をのみます。
「きれい……」
でも。
その美しい景色の一部が、
真っ黒に侵食されていました。
空が欠けている。
まるで“穴”。
ショウタが震え声。
「あれが……空喰い?」
雲竜が低くうなります。
『近づくな。』
『存在を削られる。』
ショウタ即答。
「帰ろう!!」
しかし。
その瞬間。
空島の一つから、
悲鳴のような音が響きました。
ギギギギギ……!!
鎖が切れます。
巨大な島が傾き始めました。
サヨが叫びます。
「落ちる!!」
空島には、
小さな雲の生き物たちが取り残されています。
『ぴゅいぃぃ!!』
『たすけてぇぇ!!』
ピースケの目が変わりました。
「行きますぅ。」
ショウタが止めます。
「待て待て待て!!」
しかしもう遅い。
バサァッ!!
ピースケが空へ飛び出しました。
今までとは違う。
風が自然に体を支えている。
空そのものと溶け合うような飛び方。
サヨが目を輝かせます。
「すごい……!」
山神も低くうなりました。
『風に認められたか。』
ピースケは落ちる空島へ一直線。
でも――
黒い“空喰い”が、
ゆっくりこちらへ伸びてきます。
空が削れ、
雲が消えていく。
ショウタ絶叫。
「近づいてる近づいてるぅぅ!!」
その瞬間。
ピースケは空中で目を閉じました。
「空気と……仲良くですねぇ。」
ふわっ。
風向きが変わります。
巨大な気流が発生。
落ちる空島を、
“風”が支え始めました。
ゴォォォ!!
島が空中で止まります。
サヨが叫びました。
「止まった!!」
雲の子どもたち大歓声。
『ぴゅいーー!!』
しかし。
空喰いは止まりません。
黒い穴の奥で、
“巨大な目”が開きました。
ギロリ。
ショウタ、硬直。
「……今、目なかった?」
雲竜が震え声で言います。
『見られるな。』
遅かった。
その巨大な目が、
まっすぐピースケを見つめました。
そして――
空全体へ響く声。
『……見ツケタ』
静寂。
ショウタ絶望。
「完全にターゲット認定されたぁぁぁ!!」




