紅葉狩り その14
ゴォォォォォォ!!
黒い闇が、
山全体へ広がりました。
空が消え、
紅葉の色も飲み込まれていきます。
ショウタが叫びました。
「やばいやばいやばい!!」
サヨも顔を上げます。
「山が消えちゃう!」
闇はまるで津波。
木々。
岩。
落ち葉。
全部を飲み込もうとしていました。
その瞬間――
山神が前へ出ます。
ズゥゥゥン!!
巨大な紅葉の角が光りました。
『山よ。』
低い声。
『まだ眠るな。』
ゴォォォ!!
山中の木々が一斉に輝きます。
赤い葉。
黄色い葉。
金色の葉。
紅葉の光が、
闇を押し返しました。
ショウタが目を見開きます。
「山全体で耐えてる……!」
しかし。
黒い闇は強すぎます。
少しずつ、
少しずつ押され始めていました。
クロノワールが険しい顔。
「長くは持たん。」
亡山鬼も必死に鎖を引きちぎっています。
『うおぉぉぉ!!』
でも。
黒い霧が何度も絡みつく。
まるで、
「苦しめ」と言っているみたいでした。
そのとき――
ピースケが静かに空を見上げます。
巨大な黒い顔。
その中心には、
小さな古いお札。
ピースケは小さくつぶやきました。
「あなたも……ずっと怖かったんですねぇ。」
ショウタが振り向きます。
「え?」
ピースケは続けます。
「また誰かが傷つくのが。」
風が吹きました。
紅葉が舞います。
「だから閉じ込め続けた。」
黒い顔の動きが、
ほんの少し止まりました。
サヨが気づきます。
「あ……。」
ピースケは静かに羽を広げます。
「でも。」
「苦しみを閉じ込め続けたら、もっと苦しくなるんですよぉ。」
その瞬間――
お札の赤い文字が揺れました。
パチッ。
小さなヒビ。
黒い顔が怒鳴ります。
『黙レ!!』
闇がさらに膨れ上がりました。
ショウタ絶叫。
「逆ギレぇぇぇ!!」
しかし。
亡山鬼が前へ出ます。
巨大な鬼の青白い炎が燃え上がりました。
『……もういい。』
全員が振り向きます。
亡山鬼は空を見上げていました。
苦しそうな顔。
でも。
どこか穏やかでした。
『怖かったんだ。』
風が止まります。
『腹が減って。』
『ひとりで。』
『誰かを傷つけそうで。』
青白い涙が、
巨大な頬を流れました。
『だから……閉じ込めてくれてたんだな。』
黒い顔が揺れます。
お札が震えていました。
サヨは涙をぬぐいます。
「もう大丈夫だよ……。」
亡山鬼はゆっくり笑いました。
『……ああ。』
その瞬間――
ピシッ。
お札に大きなヒビが入ります。
黒い顔が苦しそうに歪みました。
『ヤメロ……。』
でも。
亡山鬼は静かに手を伸ばします。
巨大な手。
震えながら。
そして――
そっと、
お札へ触れました。
『もう……終わろう。』
パキン。
静かな音。
古いお札が、
光になって崩れ落ちます。
その瞬間――
ゴォォォォォ!!
黒い顔が崩壊を始めました。
闇が空へ溶けていきます。
紅葉の色が戻っていく。
赤。
金。
橙。
秋の山が、
再び呼吸を始めました。
ショウタが呆然。
「終わった……?」
すると。
亡山鬼の体から、
黒い鎖が全部消えました。
青白い炎も穏やかです。
鬼は空を見上げながら、
小さくつぶやきます。
『……腹、減った。』
静寂。
ショウタ、即ツッコミ。
「そこはブレないのかよぉぉ!!」




