3月
3月1日 火曜日
麗「おはよ」
茜「おはよ!あれ?赤羽は?」
麗「まだ来てないのかな?」
茜「ま、赤羽来るタイミングバラバラだもんね」
山「2人とも、何喋ってるんだ?」
茜「おは!赤羽が中々来ないねーって話」
山「んー俺も見てないな」
麗「・・・メッセージ、送ってみるよ」
麗『おはよ。調子はいかがかな?』
茜「・・・麗ちゃんと赤羽って難しい言葉ばっか使うよね」
山「赤羽は元々こんな感じの喋り方だけど、阿比留は合わせてるの?」
麗「・・・あんまり意識したことないな」
茜「ま、そろそろST始まるし、もう来るでしょ」
3月2日 水曜日
麗『才律、大丈夫?』
麗『とりあえず、体は大事にしてください』
麗『明日、家に行くね』
3月3日 木曜日
麗「おじゃまします」
赤「・・・」
麗「・・・隣、座るよ」
赤「・・・」
麗「・・・」
赤「・・・何も言わないのか?」
麗「聞きたいことは色々あるよ。サボった理由とか。机の上の義眼とか。でも、話したくないなら別にいいよ」
赤「・・・・・・俺さ、アンリのこと、忘れようと必死だったんだよ。金曜日、バッグに体操服入れてる時、水筒にお茶を入れてる時、ゴボウとゴマと油を混ぜてる時、靴紐を結んだ時。手を止めたら、思い出すんだよ。手を動かしてても割り込んでくるんだよ」
麗「・・・」
赤「・・・玉入れのお手玉を俺に投げつけてきた時の顔とか、俺の水筒のお茶を勝手に飲んでるのがばれたときの顔とか、給食のピーマンを押し付けてきた時の顔とか、靴飛ばしで車の上に乗っちゃって、裸足で帰る羽目になった時の困った顔とか」
麗「・・・・・・」
赤「・・・思い出さないように、忘れたふりをして、8年も生きてきたんだ」
麗「・・・そう」
赤「・・・墓参りして、アンリのお母さんに会ったとき、すげぇ怖かったんだよ。なに言われるかって」
麗「・・・」
赤「・・・なんでお前が生きてるんだって。なんでアンリの代わりに死んでないんだって。なんでお前は幸せになってるんだって」
麗「・・・」
赤「・・・・・・よくできた人だよな」
麗「・・・才律」
赤「・・・」
麗「・・・」
赤「・・・呼んどいて沈黙かよ」
麗「才律」
赤「なに?」
麗「才律」
赤「本当になに?」
麗「・・・私も、何を言えばいいのかわかんないの」
赤「・・・ふふっ」
麗「明日、学校に来る?」
赤「・・・」
麗「・・・明日、家迎えに行くよ」
赤「・・・しなくていい」
麗「ヤダ。絶対にする。私が迎えに行くまで登校しちゃだめだよ」
赤「・・・ははっ」
麗「じゃ、今日は帰るよ。お義姉さんもいるし」
赤「期待してたの?」
麗「・・・してない」
赤「何を期待してたかなんて言ってないぜ?」
麗「・・・いじわる」
3月4日 金曜日
麗「おはよ」
赤「ああ、おはよ」
麗「今日は学校行くよ」
赤「・・・もしサボってデートしよって言ったら?」
麗「学校が終わってからねって言うよ」
赤「残念」
麗「・・・ほら、行くよ。手出して」
赤「・・・ん」
3月5日 土曜日
麗「えーっと、グルコースはなにか覚えてる?」
茜「えっと・・・C6H12O6だっけ」
麗「うんうん、じゃ、Cはなに?」
茜「炭素!」
麗「Hは?」
茜「水素!」
麗「Oは?」
茜「酸素!」
赤「鉛は?」
茜「え?・・・わかんない」
麗「Pb。邪魔しないであげてよ」
赤「さすが」
麗「ふふん」
赤「・・・じゃあ、ヨウ素は?」
麗「I」
赤「水銀」
麗「Hg」
赤「惚れ惚れするね」
麗「ふふん。まぁね」
茜「ちょっと!私が教わってたのに!」
3月6日 日曜日
山「なんかへーってなる知識ない?」
麗「・・・・・・才律は細マッチョ」
赤「おい!」
茜「え!そうなの!?」
山「知ってるよ。茜、なんかない?」
茜「えーっと、エジソンは偉い人」
山「そんなの常識。全く、赤羽、お手本をどうぞ」
赤「・・・バイオハザードって、海外だとResident Evilだろ?あれは海外にすでにBiohazardってバンドが存在してるから、商標で使えなかったんだよ」
山「へぇー」
茜「・・・」
麗「・・・」
3月7日 月曜日
山「そいやさ」
赤「はぁどっこい。なに?」
山「俺就職するだろ?」
赤「親父さんの手伝いでだろ?それがどうかしたのか?」
山「親父、今抱えてる仕事が、再来年には終わるんだって」
赤「・・・つまりなんだ?」
山「お前と阿比留は九音衛府で茜は名島大学だよね?」
赤「なにが言いたいんだ?」
山「・・・みんなでシェアハウスしない?」
赤「は?」
山「まだ具体的な話はないけど、シェアハウスしたい?」
赤「・・・まぁ、悪くない話だな」
山「だよな」
赤「まだ女子には言うなよ」
山「わかってるよ。そんなに馬鹿じゃない」
赤「・・・ツッコミ待ちか?」
山「違うわ」
3月8日 火曜日
麗『才律ってピザ好き?』
赤『結構好きだぜ』
麗『何味が好きなの?』
赤『海鮮系だな』
麗『そうなんだ』
赤『どうして急に?』
麗『知りたくなっただけだよ』
赤『麗は?』
麗『私も海鮮系は好きだけどオーソドックスにマルゲリータかな』
赤『んな話してたら腹減ってきたな』
麗『もう夜中だけど、夜食しちゃう?』
赤『俺はしないよ』
麗『そんな』
赤『・・・賞味期限が今日までのパンがなぜか部屋にあるな』
麗『あはは、共犯だね』
赤『たかだか夜食だろ』
麗『まぁね』
赤『次麗が俺に送るDM当てようか?』
麗『なに?』
赤『歯を磨いてから寝なよ。だろ?』
麗『お見事』
赤『ははっ』
3月9日 水曜日
茜「・・・ただいま」
母「大体!あなたが子供が欲しいって言うから産んだのに!何様のつもりなの!」
茜「っ」
父「・・・」
母「・・・あ、茜・・・こ、これは・・・」
茜「・・・死ね。人でなし」
母「ま、待ちなさい!どこに行くの!」
茜「・・・っ・・・ぐすっ」
赤「・・・」
茜「あっ、赤羽。きっ、き、奇遇だねこんな夜中に」
赤「・・・何があったんだ?傘もささないで」
茜「・・・な、何でもないよっ」
赤「待て!」
茜「っ」
赤「・・・使え」
茜「でも、赤羽濡れちゃう」
赤「いいから使え。2度も言わせんな」
茜「・・・ありがと」
赤「・・・家族のことか?」
茜「・・・・・・」
赤「ついてこい」
赤「・・・とりあえず、タオルだ。カビ臭いとか言うなよ」
茜「ありがと・・・久しぶりに来たな。スケープゴートって店名だっけ」
赤「ああ。8月からずっと閉めてたからな。なに飲む?コーヒー?」
茜「・・・お腹すいちゃった」
赤「・・・生憎、何もないな。コンビニ行ってこようか?」
茜「じゃあいいや」
赤「・・・んで、なにがあったんだ?俺に話したくないなら麗でも山口でも呼ぶ?」
茜「・・・なんだか、赤羽ってお兄ちゃんみたいだね」
赤「兄がいるのか?」
茜「いや、ひとりっこ」
赤「・・・」
茜「・・・赤羽ってさ、両親と仲悪いんだよね」
赤「まぁ、良くはないな」
茜「どんな感じなの?」
赤「・・・俺の親父も母親も日本にはいないんだ。俺が小3の時からもうずっと会ってない」
茜「お仕事で?」
赤「ああ・・・俺は中学校時代、荒れてた。もう、言葉にできないほど」
茜「・・・」
赤「俺が何日も家に帰らなかった時、警察を呼ばれた時、急性アルコール中毒で緊急搬送された時、どんな時でも俺のスマホは鳴ることはなかった。俺の尻拭いをしてくれたのはいつだって兄上だった」
茜「・・・」
赤「だから俺は、2人を親と思わないことにした。家と食費を提供してくれるだけの人。俺の家族は兄上だけだ」
茜「・・・そうなんだ」
赤「・・・そっちはどうなんだ?」
茜「私の両親、というかママは、パパとっ、それから、私も嫌いみたいで・・・っ、ぐすっ、私、産むんじゃなかったってっ」
赤「・・・」
茜「・・・」
赤「・・・少し、ここで落ち着け。俺は食べ物を買ってくる」
赤「もしもし」
山「ん、どうかしたのか?しかもこんな時間に俺じゃなかったら寝てたぜ」
赤「スケープゴートまで来い。今すぐ」
山「なんでだ?」
赤「お前の彼女、相当マズいかもしれん」
山「っ、すぐ行く」
赤「お待たせ・・・上地さん?」
「・・・」
赤「・・・トイレか?まぁ、いいや」
「・・・」
赤「・・・なんだ、この紙」
茜『今日は迷惑かけてごめんね!』
赤「上地!」
山「っ、茜!」
赤「山口!茜は見なかったか?」
山「いや、お前に呼ばれたから来たんだが」
赤「話は後だ!上地さんの家に走れ!」
3月10日 木曜日
赤『麗、起きてる?』
赤『ごめん、電話する』
赤「もしもしっ!」
麗「・・・もしもしぃ?」
赤「すまない、寝てた?」
麗「・・・・・・んん」
赤「上地さんから連絡って来てる?」
麗「・・・んにゃ」
赤「・・・っ、麗ぁ!」
麗「なっ、なに?」
赤「すまない。上地さんから連絡って来てる?」
麗「いや、来てないけど・・・どうかしたの?」
赤「・・・後で話す。ひとまず」
麗「な、なにが?」
赤「ごめん、一旦切る」
麗「な、なにが?」
山「着いたけど、ピンポン鳴らしても茜は帰ってきてないって」
赤「親は警察に連絡とかはしてるのか?」
山「・・・してなさそうだ」
赤「・・・クソっ」
山「俺は学校に向かってみる!」
赤「ああ、俺は・・・くっそ見当がつかねぇ」
山「こんな真夜中どこも営業してねーからなぁ」
赤「山口!釣り場に行け!俺が学校に向かう!」
山「っ、茜!」
茜「・・・賢蒼」
山「っ、はぁっはぁっ、なにがあったんだ?」
茜「・・・っ、賢蒼っ、ひぐっ」
山「茜!俺はここにいる。安心して」
茜「っ、うっ、ひぐっ、うわぁぁぁん」
山「・・・」
赤「・・・おかえり」
山「ああ。タオル」
赤「ほれ。上地さんも」
茜「・・・ありがと」
山「ふぅ、疲れたぜ」
赤「・・・夜遅いし、もうここで寝てけ。起きたら話がある」
茜「・・・おはよ」
山「おはよう。ネボスケ。もう2時だよ」
赤「・・・次逃げたら足をへし折る」
麗「・・・茜ちゃん」
茜「・・・ごめんなさい。迷惑かけたくなかったの」
赤「・・・」
麗「茜ちゃん、なにがあったの?」
山「・・・」
茜「・・・私さ、パパとママが仲が悪いの。家に帰った時に、片方しかいなかったら別にいいんだけど、パパもママもいる時は、沈黙がリビングを埋めつくしてるの。喧嘩してるのも何回見たか忘れちゃった」
山「・・・」
茜「昨日さ、帰ってきたらまた喧嘩してて、ママがっ、多分、弾みだと思うけどっ、っ、その、私のこと産むんじゃなかったって」
山「・・・っ」
赤「待て、早まんな」
山「・・・悪ぃ」
赤「・・・どうするんだ?」
茜「どうするって、なに?」
赤「・・・家に帰れるのか?」
茜「・・・でも、帰る場所そこしかないし」
麗「よかったらさ、私の家でしばらく過ごす?部屋ならあるし」
茜「いいの?」
麗「もちろん。親友でしょ?」
茜「・・・ありがと」
茜「・・・ただいま」
母「茜!どこ行ってたの!?心配したのよ!」
茜「・・・今更母親ごっこしないで」
母「っ、なっ、なんてことを言うの!」
茜「うるさい!」
母「っ」
茜「・・・友達の家で暮らす。しばらく帰らない。今日は荷物を取りに来ただけ」
母「そんなこと」
茜「黙って!目の前からいなくなって!」
3月11日 金曜日
麗「はい、ホットミルク」
茜「ありがと」
麗「寝心地はどうだった?」
茜「・・・実感がわかないな」
麗「そう?」
茜「そもそも、ここってなんの部屋なの?」
麗「うーん、物置、かな?ただ単純に使ってない部屋だよ」
茜「・・・」
麗「・・・今日は学校行く?」
茜「・・・・・・うん」
麗「・・・サボっちゃおっか」
茜「・・・うん」
山「・・・くそっ」
赤「・・・物に当たるなよ・・・ロッカー凹んでるぞ。もう殴るなよ」
山「・・・お前はなにも思わないのかよ」
赤「思うに決まってんだろ」
山「・・・茜は俺の家族の問題を聞いても別れなかったのは、自分の家族にも問題があったからなのか?」
赤「・・・お前の母親は捕まって、俺の両親は俺を見限って、上地さんの両親には愛がない。どいつもこいつも、クソ野郎だな」
山「・・・俺は、あんな母親にはならない」
赤「・・・はっ、ちんこがついてるからか?」
山「・・・ふふっ、ちげーよバーカ」
3月12日 土曜日
茜「おはよ!賢蒼!」
山「おはよ!」
茜「月曜からまた登校するよ!」
山「つってももう春休み入っちゃうけどね」
茜「受験に囚われない学校生活が終わっちゃうよぉ」
山「・・・そうだな」
茜「あっ・・・合格したら、離れ離れになっちゃうの?」
山「・・・まだわかんない。でも1個だけ確実なことを言うなら、大好きでいつづけるよ」
茜「っ・・・ありがと。私も大好き」
3月13日 日曜日
山「喋るシャベルと黙るダンベル・・・もうちょっと韻踏めそうなんだよなぁ・・・なんかない?」
赤「・・・お前、明日なんの日か理解してる?」
山「え?・・・あ、円周率?」
赤「・・・」
山「な、なんだよ」
赤「呆れすぎて言葉が出てこなかった」
山「ほんとになんだよ」
赤「ホワイトデーだ馬鹿」
山「あっ」
赤「今回は上地さんをほっとくとマズそうだから言ってやったが、次は自分で考えろよ」
山「・・・どうすべきだ?買いに行こうかな」
赤「なにをだ?」
山「・・・えっと、授業後に一緒にスタバ行って、店内でホワイトデーのプレゼントを渡す、でどうだ?」
赤「・・・多分、明日スタバの店内無茶苦茶混むぞ。考えることは皆同じだ」
山「・・・どーすっかねぇ。赤羽は?」
赤「・・・お前の場合、チョコは買えばいいんだろうけど、俺の彼女はお嬢様なんだぜ。買って贈るじゃあ見劣りしちまう」
山「じゃあどうするんだ?」
3月14日 月曜日
山「・・・茜、これ、ホワイトデー」
茜「えっ・・・開けてもいい?」
山「・・・や、恥ずかしいから帰ってから開けて」
茜「えぇー、気になる。ヒント頂戴!」
山「やーだね」
茜「なんでよ!」
麗「お疲れ様。今日は珍しく授業起きてたね」
赤「ははっ、考え事してたしな。したら帰るか」
麗「・・・・・・うん」
赤「・・・ちょっと寄り道しようぜ」
麗「っ、勿論」
赤「・・・入って」
麗「お、お邪魔します」
赤「今日は姉上も兄上も誰もいないから気楽にして」
麗「う、うん」
赤「ちょっと寛いでて。コーヒーとか取ってくる」
麗「・・・・・・言い訳はしません」
赤「・・・じゃあ、今なにしてたか説明願えますか?」
麗「うっ・・・才律のベッドに寝転がって布団を抱きしめてました!文句ありますか!」
赤「なんでんなことしたの?」
麗「っ・・・あなたを感じたかったからです!これでいいですか!」
赤「ふふっ、気にしてない。はい、コーヒー」
麗「ありがと・・・もう牛乳入ってるのね」
赤「前苦いって言ってたしな」
麗「ありがと」
赤「んで、これ。ホワイトデー」
麗「開けても?」
赤「勿論」
麗「マグカップに入浴剤、筆記用具・・・もしかして、これってさ」
赤「ああ。麗が誕生日にみんなから貰ってた物」
麗「ふふっ、懐かしいなぁ。入浴剤はすぐ使っちゃったけど、山口のタンブラーは映画とか見るときに使ってるよ」
赤「山口のタンブラーは筆立てにしなさい」
麗「嫉妬?」
赤「うっせ」
麗「・・・君から貰ったボールペンとシャーペンは学校で使ってるよ。万年筆は大事に取ってある。まだ使ってすらないよ」
赤「使い潰してって言ったんだけどな」
麗「そんなもったいないことできないよ」
赤「・・・壊れたら幾らでもあげるさ」
麗「嬉しいね」
赤「・・・あと、これも」
麗「・・・見てもいい?」
赤「ああ」
麗「っ・・・ほ、ほんとにいいの?わっ、私でいいの?」
赤「・・・サイズ、あってる?」
麗「つ、つけてほしいな」
赤「ああ」
麗「ち、違う、薬指につけて」
赤「・・・はい」
麗「・・・・・・・・・」
赤「・・・っ、ふぅ、まだ少し先の話になるけど・・・その、あれだ・・・そういうことだ」
麗「・・・ちゃんと、言葉にしてよ」
赤「・・・・・・来年の俺の誕生日に、大事な話があります」
麗「・・・うん、いいよ。待ってる」
赤「・・・」
麗「・・・」
赤「・・・」
麗「きょ、今日はか、帰るね。ま、また明日学校で」
赤「・・・送ってこうか?」
麗「大丈夫っ!」
麗「た、ただいま」
執「おかえりなさいませ、お嬢様」
茜「おかえり!遅かったね!」
麗「う、うん」
茜「どうしたの?顔が真っ赤じゃん」
麗「き、気にしないで」
茜「それより、見て!これ!ドーナツだよドーナツ!手作りだし5個も入ってる!麗ちゃんも1個だけあげちゃう!」
麗「・・・」
茜「麗ちゃん?顔真っ赤だけど、もしかして風邪?」
麗「あ、茜ちゃん」
茜「なに?」
麗「・・・さ、才律からコレ・・・貰った」
茜「・・・ええええぇぇぇぇぇえっ!」
3月15日 火曜日
麗「おはよ」
茜「おはよ」
麗「どう?この家には馴染めた?」
茜「・・・居心地はいいし、麗ちゃんとパパとママにはよくしてもらってるけどさ・・・ここ、私の家じゃないんだよね。いつか、帰んないと」
麗「・・・家族から連絡は来た?」
茜「ママからは毎日鬼のように来るよ。ミュートしてるけど。パパは毎晩せめて体を大事にしてって送金してくれてる」
麗「・・・」
茜「・・・はぁ」
麗「・・・」
茜「・・・忘れて!それより、昨日何があったか教えてよ!」
麗「え」
3月16日 水曜日
麗「才律って、自分の名字をどう思ってる?」
赤「っ・・・気が早くないか?」
麗「・・・私は赤羽麗になりたかったけど、ごめん」
赤「・・・阿比留才律かぁ」
麗「・・・プレッシャー?」
赤「まぁな」
麗「・・・てかさ、いつ私の指のサイズ測ったの?」
赤「普通に寝てる間にだよ」
麗「・・・どのタイミング?」
赤「・・・・・・さぁな」
麗「クリスマスとお正月は君の寝顔を眺めてたら朝になってたし・・・え?11月に私が才律の家に行った時点で測ってたの?」
赤「・・・うっせ」
麗「ふふっ。本当に、本っ当に、君が可愛くて愛しくて・・・ハグしていい?」
赤「・・・ん」
3月17日 木曜日
赤「・・・おはよ。指輪外し忘れてるぞ」
麗「おはよ。別に生徒手帳に書いてある校則読んだけど、ピアスの禁止はあったけど指輪は大丈夫そうだからね。つけてきちゃった」
赤「・・・」
茜「おはよ!なんの話してるの?」
赤「・・・」
麗「指輪の話だよ」
茜「赤羽って、もしかしなくてもそういう意図で指輪贈ったの?」
赤「・・・さぁな」
茜「麗ちゃんね、家でいっつも椅子に座って指輪をうっとり眺めたり口づけしたりして、ほんとに可愛いんだよ!」
麗「ちょっと!」
赤「・・・」
3月18日 金曜日
姉「そーいや、週末に母さんが帰ってくるって言ってるけど、どうする?」
赤「・・・会いたくないな。山口の家にでも泊まろうかな」
姉「・・・そろそろ仲直りしないの?」
赤「仲直り・・・ねぇ」
姉「・・・家出した才律も悪いし、それに構わなかった母さんも悪いけどさ・・・」
赤「・・・うぜぇ」
姉「・・・私は許してくれたのに何でお母さんは許せないの?」
赤「・・・怒ってないだけで、許してはないからな」
姉「・・・」
赤「・・・とにかく、母親とは会わない。帰ってきたら俺は息災とだけ言って」
姉「・・・」
3月19日 土曜日
麗「才律、週末空いてる?」
赤「ああ。なんでだ?」
麗「お父さんが「才律君と飯に行きたい」ってさ」
赤「・・・」
麗「じゃ、お父さんには行けるって伝えとくね」
赤「新手の美人局かよ」
麗「誉め言葉として受け取るよ」
赤「都合のいい耳だな」
3月20日 日曜日
麗「いただきます」
茜「いただきます・・・えっとカラトリーは外側からだっけ」
麗「カトラリーだよ、麗ちゃん」
茜「あれ?そうだったっけ。うっかりうっかり」
麗「・・・おいしい」
茜「・・・麗ちゃんってさ、もうしかして毎晩こんなご飯なの?」
麗「毎晩ではないけど、だいたいこんな感じかな」
茜「・・・」
麗「舌に合わなかった?」
茜「めちゃくちゃおいしいんだけどさ・・・えっと、白米と白菜の漬物と味噌汁と、サバとタラコと納豆の和食がちょっと恋しいなーって思って」
麗「ジョヴァンニに言っておくよ。明日は和食にしよっか」
3月21日 月曜日
茜「賢蒼!見て!ジョヴァンニさんお手製の卍超弁当卍だよ!ハンバーグにエビフライ、サイコロステーキにミートボール!カニクリームコロッケにフルーツポンチ!」
山「こりゃ凄いな」
茜「ジョヴァンニさんに食べたいものを聞かれて全部言ったら全部入れてくれた!やったね!」
山「じゃ、俺はミートボールだけで我慢するぜ」
茜「あげないし」
山「ずるいぞ!俺だって食べたい!」
茜「ジョヴァンニさんに言うんだな!」
山「阿比留!今日家行っていいか?」
茜「ちょっと!」
麗「だーめ。今日は才律が家にくるんだから」
茜「え!」
山「え!」
赤「え」
麗「・・・冗談だよ」
赤「言っておいて照れて赤くなんな」
麗「・・・なんで平然としてるの?」
赤「照れて欲しかったかい?」
山「ちげーよ。こいつを照れさせてるならシンプルに愛してるでいいんだよ」
麗「愛してるよ、才律。この世で1番」
赤「っ」
茜「やーい、照れた照れた」
赤「うっさい」
3月22日 火曜日
姉「・・・才律」
赤「うるせぇ」
姉「・・・いつまで反抗期でいるの?」
赤「・・・」
姉「父さんも母さんも、才律のことは大事に思ってるよ。だから、顔くらい見せてあげなよ。もう5年も顔合わせてないでしょ」
赤「大事に思ってる?はっ、本気でそう思ってるなら病院に行くべきだ。頭のな」
姉「・・・」
赤「・・・俺が悪いってことは十全に理解してる。酒飲んだのも煙草吸ったのも、家に帰らなかったのも。でもよ、本気で俺のことを大事に思ってるなら、連絡くらいするだろ」
姉「・・・」
赤「お前も、母上も、親父も、見ないようにしてたじゃねーか。今更俺が更生したからって会いたいだのなんだの、吐き気がする」
姉「・・・」
赤「・・・明日は帰らない」
姉「・・・・・・わかった。母さんに伝えて欲しいことはある?」
赤「・・・・・・ない」
3月23日 水曜日
赤「・・・おじゃまします」
執「いらっしゃいませ、赤羽様」
麗「いらっしゃ・・・なんでまたスーツなの?」
赤「麗の親父さんと飯って言われてるからドレスコードあってもおかしくないと思ってな」
麗「・・・ジョヴァンニ」
執「かしこまりました」
赤「・・・一応お伺いしますが、ジョヴァンニさん、どちらに向かわれますか?」
執「ユニクロでございます」
赤「・・・お金は」
執「不要です」
麗「さ、いこっか」
赤「相変わらず広い部屋だな」
麗「皮肉?」
赤「勿論」
麗「もう。とりあえずコーヒー飲む?」
赤「勿論」
麗「任せて。今度こそ本当に練習したんだ」
赤「・・・」
麗「えっと、2杯分だからこんなけだよね」
赤「いつの間にミル買ったんだ?」
麗「淹れてるうちに楽しくなっちゃって。よいしょっと」
赤「・・・本当に手際がいいな」
麗「ありがと・・・夜更かしが増えちゃってね」
赤「上地さんと恋バナが盛り上がったのかい」
麗「・・・」
赤「・・・否定してくれよ」
麗「うるさい」
執「失礼します。こちら買ってきた服です」
赤「・・・本当にすみません」
執「いえいえ。お着替えが済みましたらお手数ですが大広間までお越しください」
赤「・・・わかりました」
麗「そ、そんなに気負わなくていいよ。先行ってるね」
赤「わかった・・・待った、大広間って・・・もういないのかよ」
執「・・・赤羽様、大広間は右に曲がって突き当りの部屋です」
赤「マジで助かりました」
執「いえいえ」
赤「・・・ふぅ、失礼します」
父「ああ。いらっしゃい。とりあえず、ここに掛けてくれ」
赤「失礼します」
母「もっと気楽にして頂戴」
執「失礼します。こちらがオリジナルチキンですね。もうすぐドミノピザが届きますのでお待ちください」
赤「・・・」
麗「はい、レッドブル」
赤「・・・」
父「はっはっは。驚いてるな」
赤「まぁ、はい」
母「実はあの人、高級な料理全然好きじゃないのよ」
父「おい、尊厳が無くなるだろ。これは才律君を歓迎するために買ったんだ。決して私の趣味ではない」
麗「お父さん、お母さんの帰りが遅いといっつもマック買ってくるんだよね」
父「麗!」
母「・・・最近運動を始めたのはジャンクフードの取り過ぎで太ったからですか?」
父「まさか。健康志向だよ」
母「なら健康に気を使って晩酌は今後一切禁止です」
父「う、嘘だ。少し太っただけだ」
母「はぁ。ごめんなさいね。義父がこんなに見苦しいだなんて嫌ですよね、才律君」
赤「そ、そんなことないんじゃあないんですかね」
父「ほらな、才律君もこう言ってるし、ジョヴァンニ!寿司の出前も取ってくれ!」
執「かしこまりました」
母「もう、今日だけだよ」
赤「ごちそうさまでした」
麗「ごちそうさまでした」
父「ふぅ、満腹だ」
母「才律君も麗もごちそうさまが言えて素晴らしいですね。誰かとは違って」
父「う・・・ごちそうさまでした」
母「よろしい」
父「・・・それで、才律君は、その、あの、えーっと・・・そうだな・・・」
母「・・・」
父「なんというか・・・その・・・えーっと・・・」
赤「・・・」
麗「・・・」
母「・・・はぁ。才律君は阿比留家に入るつもりがありますか?」
赤「・・・・・・はい」
麗「っ」
父「・・・うむ」
母「・・・麗を幸せにできますか?」
赤「・・・はい。左目に誓います」
母「・・・わかりました。あなたはなにか言うことはありますか?」
父「そうだなぁ・・・結婚式は和風か洋風、どっちにしたい?」
母「・・・あなたはもう黙っててください」
赤「麗が望む方で」
麗「今日、泊まるの?」
赤「・・・今更だけど、上地さんは?」
麗「山口の家に泊ってるよ」
赤「・・・じゃあ、お言葉に甘えよっかな」
麗「わかったよ」
赤「・・・相変わらずすさまじい広さの風呂だな」
父「泳ぎたいかい?」
赤「っ」
父「どっこいせ・・・ふぅ」
赤「・・・えっと」
父「私のことはお義父さんと呼びなさい。もう、家族なんだから」
赤「・・・じゃ、じゃあ、お義父さん」
父「なんだね」
赤「・・・そのおしゃれな腕時計、防水ですか?」
父「・・・・・・・・・・・・無論、防水だとも」
赤「・・・」
父「・・・・・はぁ。新しいのを買うか。才律君、来月の週末は空けておきなさい」
赤「どうしてですか?」
父「君にも腕時計を贈ろう。似合う紳士になりなさい」
赤「・・・はい」
父「とりあえず、背中流してくれ。夢だったんだよ。麗の恋人に背中を流してもらうの」
赤「よろこんで」
麗「・・・はい、コーヒー」
赤「・・・もう夜中だぜ」
麗「今日は寝かせないつもりだからね」
赤「ははっ」
麗「・・・・・・・・・才律、プレゼント。この前のゲーム機より高いけど受け取らないはナシだからね」
赤「・・・」
麗「・・・手、出して。左手だよ」
赤「・・・ああ。頼むよ」
麗「・・・はい」
赤「・・・」
麗「・・・・・・愛してます。ずっとこれからも、一緒に過ごしてください。貴方からのプロポーズを待ってます」
赤「・・・麗」
麗「な、なに?」
赤「・・・俺は、幸せになるよ。麗と一緒に」
麗「っ・・・うん!」
3月24日 木曜日
赤「それじゃあ、おじゃましました」
執「またのお越しを心待ちにしています、若旦那様」
赤「・・・ははっ」
麗「ばいばい」
赤「・・・ただいま」
母「・・・・・・おかえり」
赤「・・・」
母「・・・」
赤「・・・」
母「・・・」
赤「・・・どけよ。部屋に戻れない」
母「・・・話があります」
赤「俺からはない」
母「・・・才律」
赤「・・・今更謝罪でもするつもりか?」
母「・・・」
赤「・・・」
母「・・・ごめんなさい」
赤「許さない」
母「・・・才律」
赤「・・・産んでくれてありがとう。見捨ててくれてありがとう。関わらないでいてくれてありがとう。俺の人生に関与しないでください。俺はあなたを母親と思いたくない」
母「っ」
赤「・・・」
3月25日 金曜日
山「・・・親父」
父「どうしたんだ?」
山「・・・頼みたいことがあります」
父「なんだ、急に改まって」
山「・・・親父の仕事は絶対に欠かさず手伝うし、必要ならすぐに戻るから、高校卒業したら実家を出てもいいですか?」
父「・・・なんだ、そんなことか。息子の巣立ちを止める親なんていないぞ」
山「・・・ありがとう。俺、親父の息子でよかったよ」
父「・・・俺こそ、あんな母親と結婚して、ごめんな」
山「・・・」
父「どうか、幸せになってくれ」
山「・・・っ、勿論!」
3月26日 土曜日
山『阿比留さん』
麗『どうかしたの?』
山『卒業後、みんなでルームシェアしませんか?』
麗『4人でってこと?』
山『うん』
麗『うん、いい考えだと思う』
山『やっぱり?』
麗『みんなには話したの?』
山『赤羽には言ったけど茜には言ってない』
麗『才律はどう言ってるの?』
山『悪くないって』
麗『家はどうする?』
山『ひとまず、来年の受験が終わってから考えようと思ってるけど』
麗『わかったよ』
3月27日 日曜日
麗「お父さん」
父「なんだい?」
麗「・・・久遠衛府大学の近くに、別荘ってある?」
父「ないけど、どうしたんだい?」
麗「茜ちゃんと山口、あと私と才律でルームシェアしたいなって思って」
父「・・・別荘を建ててくれってことか?』
麗「違うよ。あったらいいなってだけ」
父「・・・まかせなさい」
麗「え?」
父「娘の願いを叶えるとするか」
麗「・・・も、もしかして?」
父「阿比留家を舐めないでもらおうか。別荘くらい建ててやる」
母「・・・ありがとう、お父さん」
3月28日 月曜日
茜「麗ちゃん!ゲームしよ!」
麗「もう、受験勉強する約束でしょ?」
茜「いいからいいから。勉強は昼からやるよ!」
茜「・・・ねぇ、麗ちゃん」
麗「なに?コウラ投げちゃお」
茜「やめてよ!せっかく2位なんだから!」
麗「あはは。んで、なに?」
茜「・・・大学行ってもさ、友達でいてくれる?」
麗「そんな当たり前なことを、なんで改まって言うの?」
茜「・・・・・・ありがと。大好き、麗ちゃん」
麗「はいはい。山口にいいなよ」
3月29日 火曜日
麗『家はなんとかするよ』
山『どうやって?』
麗『シンプルに別荘建てるよ』
山『えぇ・・・』
麗『お父さんにちゃんと聞いたら、役員用の家が7年後くらいに必要だから、その家を早めに建ててそこに大学生の間は住んでいいって』
山『本当に、本当にありがとう』
麗『気にしないで、茜ちゃんも山口も才律も大事な友達なんだから』
3月30日 水曜日
山「やっほ」
茜「おはよ!今日は何する?」
山「・・・ちょっとスケープゴートまで行こ」
茜「ん、いいよ!」
山「・・・おじゃまします」
茜「やっほー!ってあれ?赤羽いないの?」
山「うん、とりあえず座ってよ。ほうじ茶ラテ作るから」
茜「ほうじ茶ラテ・・・?あ、5月に賢蒼が作ってくれたやつか!」
茜「ん・・・うまい!」
山「マジ?よかったー」
茜「・・・んで、その、もしかして別れ話とかじゃ、ないよね?」
山「そんなわけないよ。えっと、大学進学するじゃん」
茜「あ、私が?」
山「そうそう」
茜「それで?」
山「えっと、阿比留が家を用意してくれるから、大学生のあいだ、4人でルームシェアしない?」
茜「・・・え?賢蒼は?」
山「勿論、ついていくよ」
茜「・・・っ、い、いいの?私・・・」
山「・・・俺は茜が大好きだからさ、できることはやりたいんだ。まぁ、家を用意してくれるのは阿比留なんだけど」
茜「・・・私っ・・・ぐすっ・・・愛されてもっ、いいの?」
山「なんでダメなんだよ。茜が世界で1番幸せになんないといけないんだから」
茜「・・・うわぁぁあぁあぁあぁぁぁん」
3月31日 木曜日
赤「・・・いらっしゃい」
麗「ん、そのエプロン、ひっさしぶりに見た気がするな」
赤「まぁな」
麗「これ、クッキー焼いてきたんだ」
赤「ははっ、ありがと。何が飲みたい?ジンジャーエール?コーヒー?」
麗「今日はコーヒーかな」
赤「あいよ」
茜「やっほー!」
麗「ん、ネボスケだね」
茜「えぇー12時には起きたんだけど」
赤「十分遅いからな」
茜「あ!久しぶりの恰好してる!」
赤「麗同じこと言ってるぜ。カプチーノでよかった?」
茜「勿論!」
山「よぉ!」
赤「進化のスピードが遅い奴は起きるのも遅いのか?」
山「おいゴラ」
茜「うっ、流れ弾が」
山「マスター、いつもの」
赤「気取るな。ホレ」
山「焼きたてか?」
赤「勿論」
麗「山口のために何回も焼き直してたからね」
赤「言うなよ」
山「ははっ、相変わらずだな」
赤「もう暗くなってきたし、帰るか」
山「・・・お前、またこの店で働くのか?」
赤「いや、もう3年生だし、鍵を今日マスターに返しに行くよ」
茜「いろいろあったねー」
麗「・・・うん。ちょっと寂しいかも」
赤「・・・スケープゴート」
山「なんでこんな名前なんだろうな?」
赤「俺も知りたいけど、ま、どうせ適当だろ」
茜「明日から学校じゃん。やだなー」
麗「みんな一緒のクラスだといいね」
赤「ああ」
山「じゃ、また明日」
茜「またあーした!」
麗「また明日」
赤「・・・ああ。また明日。学校でな」




