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魔法の杖で旅する新しい世界  作者: 蜘蛛助


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28/28

27.『■■■』★

久しぶりの更新です、私の書きたい雰囲気を書くのに苦労してしまい遅れました……

人々の無意識の悪意が滲むように意識して書きましたので、苦手な人は注意です

「それ、持っていかなきゃダメ?」


 りっちゃんが車の後部座席を倒してスペースを作ってるのを見ながら、私は置かれている車椅子に目を向ける。


「長時間歩いて、足を痛めたら大変でしょう?」


 そう言われたら反論はできない。家の中なら杖さえあればどこでもいけるけど、確かにショッピングモールみたいな広いところだと疲れて動けなくなるかもしれない。りっちゃんが力持ちだとして、私を抱えて移動するのは申し訳ないもんね。

 少し落ち込みつつ、準備ができたりっちゃんの声に助手席に乗り込んだ。




「わあ、ひとがいっぱい」


 りっちゃんに説得されて車椅子に乗っているからか、ショッピングモールは前の時よりも広く、少し賑やかに感じる。


「今日はずいぶんと人が多いのね……あら、ジャム猫のポスターだわ」


「知ってる、ドラマのやつだ! これ映画化するの?」


 見たことはないけど、たしか、『猫まで■(ころ)せる?』ってタイトルのやつ。

 過激なタイトル通り内容も尖っていて、特にポスターの端に居ても目立つジャム猫って赤髪の人が演じているキャラがヤバい、SNSでそのシーンが話題に上がっているのをよく見かける。

 それにしても……学生服を着ていて舞台も高校らしいけど、幼い顔と小柄な体型で中学生くらいに見える。でも、この人ってたしかみっちーやのんちゃんよりも歳上なんだよね。


「なんかイベントしてるのかな?」


「えーと、あら、ジャム猫がここの映画館に今日来てるみたいね」


 ほら、と指差されたポスターには何日にどこどこと宣伝に来るみたいな告知があって、今日がちょうどその日だったみたい。

 まさか、KaleidoBridgeのイベントと重なるなんて、これじゃあどっち目当てで来た人なのか分からないよ。


「せっかくだから見に行ってみる?」


「え!? いや、そこまで知らないし、興味はない、かな?」


 私が黙り込んだことで、見に行きたいと思われてしまった。たしかに有名人はちょっと見てみたくはあるけど、漫画もドラマもどっちも見たこともないし、そもそもファンでもないのに行くのは流石に恥ずかしい。

 断っても遠慮してるのかと何度も聞いてくるりっちゃんへ話題をそらすため、お手洗いに行きたいと思わず言ってしまった。


「お手洗い、たしか、ここは偶数階に多目的トイレがあったはずよね……エレベーターは」


「普通のトイレでも大丈夫だよ、ほらっ、杖持ってきたから!」


「でも、混んでたら」


「その時は、多目的トイレに行こ、ね?」


 お医者さんには急激な運動とかは駄目って言われてるけど、筋肉が衰えないように可能な限りは歩いたり立ったりした方が良いとも言われてるもんね。

 トイレを待つくらいなら立ってるだけだし、そんなに負担にならないだろうから大丈夫でしょ。


「めちゃめちゃならんでる」


 普段は外出なんてしないからショッピングモールの混雑をなめていた、男子トイレは並んでないのに女子トイレへ続く通路から外まで並んでいる。あれってどれくらいかか……あ、また人が来た。


「どうする? 二階に行く?」


 心配そうなりっちゃんの声にハッとする。たしかにこれなら二階に行けば空いてるかもしれない。でも、ここで諦めて行くのは――ああ、また人が、流石に長すぎるから私にはまだ無理そう。


「うん……そうする」


「じゃあ、すぐそこにエレベーターあるからそっちから上がりましょ」


 りっちゃんに押してもらいながら、折り畳んだ杖をギュッと握る。

 新しく改装されたとあって、エレベーターは三つあって、一つが優先席みたいなマークが描いてある。最近こう言うのが増えてきていて、ちょっと便利だなと思う反面、頑張れば歩けるのに申し訳ないなと思ってしまう。


「遠慮しているの? でも、混んでいて押されたりしたら危ないでしょ」


「……はーい」


 顔に出ていたみたいでりっちゃんに怒られたので、おとなしくりっちゃんに押されて優先エレベータに行く。前に居た人達がこちらを振り向いた。あ、なんか、話してる……やだな。こう言うの。

 私達の後にもベビーカーを押した夫婦や買い物袋を抱えたお年寄りも並んでいる。エレベータが着くと前に並んでいた男の人達はさっさと入っていく、私達も入って次にベビーカーの夫婦、おばあさんが入ったところでブザーが鳴った。


「あらあら、まあ」


 困ったようなおばあさんの声に、りっちゃんに目配せして私が降りようとしたら、ベビーカーを押していた夫婦の旦那さんが自分は階段で運動しますからと颯爽と降りる。


「かっこいいね」


 私がそうコソコソとりっちゃんに言うと後ろから舌打ちが聞こえた。なんか、嫌な人達。




 二階に着くと後ろの男の人達がスルリと間を抜けて降りていった。


「なにあれ、危ないわね!」


 りっちゃんが怒っているどうしたのかなと思っていればおばあさんとなにか話している、よく聞こえないけどどうやらわざとぶつかられたらしい。


「りっちゃん、大丈夫?」


「大丈夫よ、さあ、私達も降りましょう?」


 ベビーカーの奥さんがボタンを押してくれる間に私達も二階へ降りる。二人はまだ降りないみたい、小さくお辞儀をすればニコリと笑顔を返される。

 二階は衣料品コーナーらしくて人通りが多い、一階と比べると若い人が多くて少し居心地が悪い。同い年くらいの子に会ったらどうしよう、あんまり会いたくないな。


「ねえ、愛華ちゃん、見て見て。ジャム猫のいるグループのコラボ服が売ってるみたいよ?」


「そう、なんだ」


 あんまり興味ないかなと思いながら見せられたスマホを見る。どうやらジャム猫の他に黒い兎モチーフの男の子(?)と白い山羊モチーフの男性の三人グループみたい、みんな可愛らしいロリータ服を着ていて、今時の多様性を売りにした感じがしてなんかちょっとモヤモヤするけど、着ている服はとても可愛い。


「ちょっと気になるかも」


「じゃあ、お手洗いに行ったら見に行ってみましょうか?」


 りっちゃんの提案に素直に頷いた。本当はKaleidoBridgeのリアイベを見たかったけど、この感じじゃ一人でこっそりなんて無理だし、諦めてウィンドウショッピングすることにした。りっちゃんと一緒だと女二人って感じで楽しいもん。

 りっちゃんに押されて多目的トイレに向かう、普通のトイレには列があったけど、多目的トイレにはなかった。使用中だったので空くのを待って二人で少しお喋りする。


「ね、ね。そのジャム猫って人のグループってどんなのなの?」


「えっと——ジャム猫が入るまではこの二人でやっていたみたいね。このブランドのモデル兼歌手みたい?」


「つまり……歌って踊れるモデル?」


「そんな感じみたいね……衣装で着てる服も限定販売とかで買えるみたいね」


 歌って踊れるモデルさん……そんな人と同じ服を着る勇気はない、でも、ファンだったら同じ服とか着てコンサートに行きたいのかも、私にはわからない世界。

 でも、ジャム猫って人がモデルをしている服はカジュアルよりで私でも着れそう。


「あら、使用中みたいね。大丈夫? 待てる?」


「さすがに待てるよ、子供じゃないんだから」


 お喋りしながらついたトイレは下よりは込んでないけど中に列ができている、多目的トイレには列はないけれどりっちゃんが見てきてくれたら使用中になっていた。

 出てくるまで二人でさっきの話の続きをする。どの服が好きとか買うならどれにするとか、りっちゃんは白いヤギモチーフの男性の着ている服のが好きらしい。クラシカルロリータって言って落ち着いた昔のドレスみたいなロリータ服らしい、詳しくは知らないけど、りっちゃんの私服も落ち着いた色合いだし似合いそう。


「愛華ちゃんはフードの服とか好きだものね、確かにジャム猫が着てるの似合いそう。赤いパーカーのがあったしあれ着てみない? きっとよく似合うわ」


「赤い……猫耳のついてたやつ? さすがにこの歳ではちょっと」


「あら、ロリータは大人が楽しむ子供服よ?」


 そう言われても恥ずかしい。ジャム猫モデルで猫耳にピアスのデザインもついていて確かに良かったけど……着るとなるとは話が変わってくる。

 私がうんうん悩んでいるとりっちゃんの顔が曇っている、あ、私が断ったから困らせちゃったかな?


「あの、りっちゃん」


「……ねえ、出てくるのずいぶん遅いと思わない?」


「え?」


 りっちゃんが見てるのは多目的トイレの方だ。そんなに遅いかな? スマホを見てみる、話し込んでいて十分以上経っていた。


「言われてみれば? でも、私みたいな人以外にもいろんな人が使うんでしょ? 遅くなることだってあるんじゃないの?」


「ここって三十分経ったらマークが出るのよ、私がさっき見た時からそのマークがずっとついてるままなの」


「つまり、中の人は三十分以上いるってこと? 中で倒れてるとか?」


 心配して扉を見つめる。警備員とかお店の人に声をかけた方が良いかもしれない。

 りっちゃんに提案すれば、呼んでくるから待っていてと言われた。私はりっちゃんを見送って、多目的トイレの前で待ったいたら、りっちゃんがいなくなって数分で扉から私と同じくらいの女の子達が出てきた。


「え……」


「ヤバ、ユカが何度も着替えるから遅くなったじゃん」


「早く行こイベント間に合わなくなる!」


 パタパタと走り去っていく二人を呆然と見送る。えっと、つまり、更衣室代わりに使ってたってこと?

 それってダメなことなんじゃ……モヤモヤしていればりっちゃんがお店の人を連れて戻ってきた。さっきの二人のことを言うのは、なんか、告げ口したみたいで嫌で、入れ替りで開いたと伝えればお店の人は軽く会釈して足早に帰っていく。


「じゃあ、私は外で待ってるから……」


「あ、りっちゃんが行ってすぐに開いてその間に行ってきたから大丈夫」


「そう? じゃあ、服を見に行きましょ?」


「えっ、と……今日はちょっと」


 さっきの子達の服、ネットで調べたジャム猫と同じグループの人と似た服を着ていた。今から行くとあの二人に会いそうでなんかすごく嫌だ。


「え、良いの?」


「……うん、なんか、久々に人が多いところで疲れちゃった」


 そう言って笑えば、りっちゃんは少し口を閉じた後、にっこりと笑った。


「じゃあ、一階でケーキ買って帰りましょ?

 蛍雪(けいせつ)には内緒で、ね?」

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