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26.レディ☆

年明け久々の更新です

覚えていてくれると嬉しいです

「本人に聞いた!!? なんでっ!?」


 心のままに叫べばネコスキーは耳を塞ぎ、満は眉を潜め、肝心のギルマス(アイビー)はどこ吹く風で微笑んでる。


「ミッチーに言われたのですよ、大事な話は本人に直接聞きなさい、と」


 隣に座る満を睨み付ければ、少し驚いたように目を丸くしてる。おめぇから言ったんじゃねぇのかよ。


「いや。まさか、ほんとに聞くなんて」


「コイツ、言葉そのまま受け取るようにしとるって前言ったやんけ!?」


「ギルマスを指差してコイツ呼ばわりはやめなよ、しかも、歳上だし」


「関っ係ないねっ! うちの可愛い可愛い妹に酷いことするヤツはみんな、敵やし!」


 怒ってるんだと分かるように腕を組んで顔をしかめていれば、アイビーは柔らかく微笑んだまま、現実(リアル)で修羅場を潜り抜けてきてるらしいし、僕のことなんて仔猫の威嚇くらいにしか見てないみたいでムカつく。

 フンッと顔を反らしていれば、僕と入れ替わるようにして前のめりになった満がアイビーに質問する。


「それで、どうやったん? その、様子は」


「いろいろと教えてもらいましたが、話に聞くよりもずっと足が悪いようですね。教えていただいたように杖を使っては歩けるようですけれど、普段は車椅子で外出しているそうです

 カブでは補正でスムーズに歩けてるみたいですが、やはり筋力以前に骨格の歪みなどがあるのかもしれないようです」


 どこか深刻そうな顔をする二人が気になり聞けば、可能なら今の愛華の状態も知りたいと話してたらしい。

 直接聞いたのはムカつくけど、今の状態を知りたいのは同じなので大人しく椅子に座りなおし、アイビーからその日の話を皆で聞いた。ところどころネコスキーの視点からの情報をまとめる感じ、本人は気にしてないよう振る舞ってたけど、声も体も強張って無理してるのが分かる感じやったそう。


「……ゲームん(なか)では自由に遊べてるのが幸いやな」


 シンと静まり返った倉庫内に小さくノックの音が響く、そう言えば入室制限をしてだいぶ時間が経っとったなと皆に了承を得て許可を出せば、見慣れたボサボサ頭が顔を出す。


「あっあっ、と、装備をお借りしたく……」


「何の装備ですか?」


 重い空気に不釣り合いなNPCのような口振りのアイビーにあああ(アスリー)は少し皆の顔を見回しながらいくつかの装備の名前を口にした。


あああ(アスリー)が双剣以外の装備を? 珍しいな」


「えっと、ロゼくんと虫採り行こうかなって話になったからそのために」


「「ロゼと?」」


 妹のキャラ名に上げた声が二重に響き、チラリと見れば満も同じタイミングで驚いてた。


「虫と言いますと“レディパニック”をするのですか?」


「あ、そうです。あのイベントは楽しいので、やってみたいと言ってたので、やろうかな?って」


「あれは網をレンタルできるけど、買ったやつのが成績良いんよなぁ」


 アイビーとの会話に合いの手を入れる満を横目に、()()()()妹が二人で遊びに行くほどの仲になったのに少しモヤモヤする。


「あっ、これ二つ借りていくっす」


 あああ(アスリー)は元々は満が連れてきた勧誘枠やったんやけど、実はリアルでネコスキーとも繋がりがある人物と分かって、コネ入隊に変わってしまった特殊な立場の一人。

 チラッと聞いた情報はネコスキーより歳上の社会人らしいことぐらい。らしいっつうのは、普通の会社員じゃなくてなんか特殊な仕事してるみたいで、inが平日の昼間や深夜、土日とかバラバラ、だけどネコスキー並み……それ以上に課金しまくってるので金持ちっぽいんよな。


 同じような重課金勢がごろごろいるギルドやから気にはしてないけど、けど、妹が仲良し……モヤモヤ。


「――なあ、それってさ」




――*――*――*――*――*――




「あれ、のんちゃん?」


 季節外れの虫取りに誘われ、男の子は虫好きだなよなーと思いながら待ち合わせ場所に行けば、アスリーさんと一緒に派手な金髪をしたアバターがこちらに手を振っていた。よーく見てみれば、いつも来ている着物ではなく、洋服姿のノンノン(のんちゃん)だった。


「一緒に遊んでるのが羨ましくて~、ダメ?」


 いつもは長くおろしている髪をまとめて、服装もおしゃれな感じで実の兄ながらドキッとしてしまった。私もここまで顔が良ければと思いつつアスリーさんへ視線を向ける。


「んーん、アスリーさんが大丈夫なら大丈夫」


「おれは大丈夫っす! みんなでいっぱい捕まえましょう!」


 網の枠が星型になった捕まえにくそうな虫取り網を掲げながら少しテンション高めに言うアスリーさんに続いて私も声を上げる。


「「「おーっ!」」……ん?」


 なんか、声が複数あったような。キョロキョロ周りを見れば、同じ虫取り網を持ったキャリ子さんとタビーさんがニコニコと笑ってすぐ後ろに立っていた。


「あれ? なんで、二人が?」


「アスリーがインしてるのに、連絡なかったから」


 不思議がってるいるのは私だけではないようでアスリーさんも首をかしげて聞いていれば、二人はインしてるのに自分達と遊ばないことに不満があったようで、こちらに飛んできたそう。

 普段は三人で遊んでいるのを、私が邪魔ちゃったのね。


「虫取りしたい! 今度こそ景品ゲットする!」


「あ、ぇっと、それは……いいっすか?」


 チラチラと私とのんちゃんとを見るアスリーさんに私は良いよと伝えたらのんちゃんも右に同じ~とのんびり返事を返していた。


「じゃ、じゃあこのメンバーでパーティー組んで『レディバグ』に挑むっす!」


「「いぇーい」」


 なんか大所帯に……男の子って本っ当に虫好きだよね……。


「レディバグって確かてんとう虫のことだよ……な? それを捕まえる感じ?」


「そうそう、背中の点の数が1から7まであって、その合計得点によって貰える景品が変わるイベントっす」


「参加賞はレディバッグとか言うてんとう虫モチーフのカバンやで~、20点満点で満点だと使いきりのこの網が貰えんで~」


 そう言って星形の虫取り網を軽く振るのんちゃん。珍しいのは形だけじゃなくてレアアイテムだからだったみたい、でも、虫取りの満点出せる人がこの虫取り網が欲しくなる理由って何かあるのかな?と首をかしげていればアスリーが説明してくれる。


「一部の虫系アイテムが生け捕りできるんっすよ、ホタルっぽいやつでそれを部屋や洞窟に放せば灯りになるんす」


「虫はモンスターじゃないの?」


「虫系モンスターはもちろんいるんすけど、虫系は大体がアイテム扱いっすね、だからほとんどが捕まえると死ぬっす。ホタルのやつだと光る絵具のもと?みたいなのがとれるんすよ」


「あれ、顔に塗ると面白いよね」


「顔に塗ったん!? キャリ子ってお転婆?」


「ネカマなので元気な男の子で~す」

「おぎゃー」


 キャリ子さんがさらっと言った言葉に重ねるようにして無表情のままタビーさんが産声(?)を上げる。まるでコントのようなやり取りに思わず吹き出しそうになっていれば、目があったタビーさんがニヤリといたずらっぽく笑った。

 い、いけめんさんだ。お茶目なイケメンさんだ。


「どしたん、ロゼ?」


「んーん、なんでもない」


 ネコスキーさんもそうだけどこの人もイケメンさんで、ちょっと照れてしまう。しかも、タビーさんは自分の顔が良いことが分かってるタイプの悪いイケメンさんだ!

 のんちゃんの顔を見て、アスリーさんの顔を見る。どうしよう、身内よりアスリーさんの顔のが落ち着いてしまう。バクバクしている心臓がバレないように言葉を気を付けながら、もう、どうやってそこまで行ったか分からないけど、森の中、赤い虫が飛び回るちょっと気持ち悪い場所に出た。


「虫……意外とリアルですね」


「そうっすかね? 赤い丸に足が生えてるだけじゃないっすか?」


 ほら、と言いながら早速捕まえた虫を見せられる。うーん、確かによく見ればデフォルメされてる……けど、遠目から見ると虫がウジャウジャしているのは背中がゾワッてする。


「この近くに受付してくれるNPCがおるんよ、っと。あそこやな、あの熊の人」


 のんちゃんが指差す先では何人かのプレイヤーに話しかけられている白髪交じりのおじいちゃんっぽいNPCが切り株に座っていた。

 

 先に話しかけているプレイヤーの後ろで待っていれば、NPC(おじいちゃん)がてんとう虫の特典を数え上げ、プレイヤーから何かアイテムらしき物を受け取り代わりに別のアイテムを渡していた。

 私達の番になってアスリーさんが話しかけるとピコンとミッション開始の文字が出て時計のマークが表示される。


「受付してきたっす! この、タイマーが終わるまでに捕まえた合計で景品が変わる感じっす」


「一人一人で?」


「パーティーモードで受付したからみんなの合計っす」


「それじゃあ、はりきって虫取り~」


 一人ずつ手渡された時計には残り三十分と表示されている。早速始めようかと思っていればキャリ子さんが楽しげに声を上げて先陣をきって虫の中に飛び込んでいき、それに続くようにのんちゃんやアスリーさんも飛び込んでいった。

 こ、この中に行くのね……私もおずおずと赤い虫の飛び交う場所に入れば、私達以外にもプレイヤーがたくさんいて、みんなバサバサと手当たり次第に網を振っている。


「むむ、えいっ!」


 近くに通った赤い丸めがけて網を振ればピコンとカウントがされる。ドキドキしながら網の中を見たけど中には居なかった、あれ?と思っていればひょこっと横からのんちゃんが捕れた虫はそのままアイテムボックスに入っているらしい。

 確認すると確かに入っていて説明に“背中に星が3つある”と書かれていた。


「これで三点ってことかな? よし、もっといっぱい捕るぞ!」


 一度捕れると少しはなれるもので、私も周りのプレイヤーのように網を振り回して片っ端から網を振る。

 こんだけいると取り合いになりそうな気もするけど、どうやら、個別で見えている虫が違うのか私が狙ってるのを横から盗られるみたいなことにはならなかった。


――ピピピー!ピピピー!!


 タイマーの音でハッとして手を止める。どうやらあっという間に三十分過ぎていたみたい、私は何匹捕れたのかワクワクしながらアイテム欄を確認すると一匹だけ背中に7つ星があるのが捕れていた。


「やった、7つ星ゲットしてる!」


「すごいっすね! 7つ星って珍いんすよ」


「アスリーさんは何匹捕れた?」


「えっ、と。二十……五っすね!」


「やっばぁ、僕十一だよ?」


「僕も十六くらいやし、アスリーはやっぱ運動神経ええなぁ」


「私は……九匹だ」


 ワイワイと話しながら受付に戻る中、一人落ち込んでいれば、スッと後ろから誰かが近づいてくる感じがして振り向くと、タビーさんが小さい声で俺は三匹だったよとこっそり教えてくれた。

 慰めてくれたのかと嬉しくなってお礼を言う前に、キャリ子さんが虫嫌いなだけだろとつっこんでいた。


「やあやあ、レディバグは捕まえられたかな?」


 おじいさんの言葉にどのレディバグを渡すか選択する画面が出たので、私は九匹全部を選択する。アスリーさんは余るからと星1つのを五匹だけ残して、他のみんなは私と同じように全部渡していた。


「ふむふむ、この数ならこれと交換できるがどうする?」


 その言葉と共に目の前にアイテム一覧が表示された。聞いたことのない薬とかアイテムが並ぶなか、可愛らしい巾着袋のアイコンに【オヤツ】と言うものがあった。


「この、オヤツって?」


「あ、それはテイムしていないモンスターとかにもあげられるタイプのアイテムっす。例えば召喚獣とかにあげると必ず言うことをきいてくれる、従魔にあげるとちょっと懐くっす」


「そうなんだ……パーティーでしたからアイテムってみんなで分ける感じです?」


「一人一つ、好きなの選べるよ~」


「そうなんだ、ありがとうのんちゃん」


 私はその言葉に安心して、迷わず【()()()】を選択する。だって、せっかくもふもふするのが夢だったんだから、可愛い子達にオヤツをあげたくなるじゃん。

 おじいさんからアイテムを受け取るとパッと使い方の画面が表示された。アスリーさんの説明をもう少し丁寧にした感じの内容で残りの数と賞味期限が書かれていた。


「賞味期限がある……」


「きれてても食べるけど、その場合、ランダムで何も起こらんくなるから気をつけてね。間に合わないって時はプレイヤーが食べることもできるから」


「なかなか万能なアイテムなんだ」


 巾着袋から一つ取り出してみたら、何か黒い……チョコ?か何かが練り込まれた少し大きめのクッキーが出てきて、一昨日、りっちゃんとクッキーを焼いた時にした外出する約束を思い出した。


――あのね、のんちゃん。私、今度KaleidoBridgeのリアイベ会場の近くまで行くつもりなんだよ。


 喉元まででかかった言葉は周りにアスリーさん達がいるからそっと飲み込んだ。


――いつか、ここじゃなくて、現実で会うために頑張るよ。


 クッキーを袋に戻して、ギュッと袋の口をしめた。

前の話からそろそろ現実世界の方も進展させようと考えています

現実パートがいくつか入った後はしばらくゲーム内パートや主人公以外の視点パートを書いていく予定です

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