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第2話 内通者

 9月某日。

 都立晴嵐高校の生徒は『無差別能力覚醒犯』により能力を強制覚醒させられた。

 能力覚醒の怪光線を受け、史郎を含め全校生徒は意識不明に陥った。

 

 日時はまだその時である。


「……って、なんだったんだよ」


 固い床の上で大量の生徒が転がる中、ようやく一人の生徒が目覚める。

 金色に髪を染めた少年だった。

 少年は身を起こすと体をひねった。

 そしてようやく周囲に視線を走らせ、目を剥いた。


「なんだこりゃぁ!?」

 

 全ての生徒が気絶していたからだ。

 同時に自身の体内に異常が起きていることに気が付く。


(どうやら自分は炎を操れるらしい)


そのような無自覚な自信が立ち上ってきたのだ。


「うお!?」


 試しに想像通りに右手を掲げ力を入れると案の定、ガスコンロのように炎がボッと放たれた。


 少年はパニックに陥る。目を白黒させ、周囲を見回し、とりあえず真横で寝ている友人を揺り起こそうとする。


「おっと、そこまでだ少年」


「!?」


 しかしその手は遮られた。

 少年の目の前に長身の男が突っ立っていたからだ。


「誰だあんたは……??」


 カラカラの喉で尋ねると男は白い歯をのぞかせた。


「『隠蔽』を職務とするものさ。これから何かと指導すると思うからよろしく頼む」


「隠蔽?」


「そうさ、『隠蔽』。能力を一般人に明かさないようにする者。時期に皆起きる。そしたら詳しく伝えよう」


 一般人の中に隠れて能力者は今までも存在していた。

 しかしなぜ一般人がその存在を知らなかったかと言えば、それは彼らのように一般人への発覚を防ぐ組織が存在したからだ。


 またも全校生徒が能力覚醒させられた。

 その報を受けて能力社会はすでに動き出していた。





「あ、アタシは……」

「大丈夫よ、アイコ」


 少年の意識覚醒から数時間、最後の一人が意識を回復した。

 夜七時を回ろうとする頃だった。


「さて、すでに皆自覚していると思うことだが……」


 最後の一人が目覚めたのを確認し、『隠蔽』を司る大柄な男は壇上の上で話し始めた。



「君たちは今日、『能力者』になった」


 誰も騒がなかった。反論しなかった。野次らなかった。


 誰もが『自覚』しているからだ。


「混乱しているだろう。今から私が説明する……」


 

 

 こうして晴嵐高校の生徒は能力社会に取り込まれることになった。


 のだが。


『結局、アンタは陰キャラ続けているってわけ……』

「うるさいな……」


 電話越しにからかわれ史郎はため息をついた。


 能力覚醒が9月。

 現在、3月。

 すでにアレから半年近い月日が経過していた。


 電話の先は『赤き光』のメンバー、七姫(ななひめ)ナナ

 覚醒事件の際も連絡を取り合っていた史郎の気の置けない友人だ。


『能力社会の先輩なんだから先輩風吹かせまくればいいのに~』

「感じ悪いだろ、ソレ」

『内心小馬鹿にしつつ素人能力者の振りしてる方がよっぽど感じ悪いと思うけど☆』

「否定はしない」


 お昼休み・屋上での会話だった。

 友人のいない史郎はフェンスに背中を預け、通話先のナナに問う。


「で、何の用なんだよ」

『仕事よ。それも例の『無差別能力覚醒者』の一件の』


 自然と動悸が激しくなった。


『史郎。晴嵐高校の一件で覚醒犯を高校の敷地内に招き入れたと思われる能力者、つまりは『内通者』を探し出しなさい』


 そう、それは事件後から言われていた当然の帰結。


 晴嵐高校の周辺には数多くの手練れの能力者が待機していた。

 それらをすり抜けて突然、高校の敷地内に現れた覚醒犯。


 間違いなく手引きした『能力者』がいる。


 覚醒犯により能力者だらけになった晴嵐高校。

 しかし史郎と同様に既に能力者だった者がいる。

 そいつが『覚醒犯』を招き入れたのだ。

 

 新人能力者だらけの高校の中に潜む、この状況を作り出すに至った『内通者』を探し出す。

 新人能力者に擬態するその者を見つけ出す。


 それは晴嵐高校の一件以来、忽然と姿を消した『覚醒犯』を探し出す唯一の手掛かりだった。



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