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まず動いたのが蒼龍。船長室に連行される間、飛空艇を構築する木材――木遁を使い、船内隅々まで気を張り巡らせていた。
「敕!」
素早く印を組み、術を開放する!至るところで、床、天井、そして柱が弾け飛ぶ!敵味方問わず、船内はたちまち大混乱に陥った!
「ちょっと、船壊すつもりっスか!?」
「大事な機関には手を出していない。……多分」
「いや多分って何!!?」
泣きそうな声で叫ぶビリー。
「機関室行って主導権握るぞ!」
アンバーの言葉に、四人は船長室を飛び出した。その後をビリーが急いで追いかける。呆気に取られていた船長は慌てて傍の警鐘を鳴らし、伝声管に向かって怒鳴り散らす!
『野郎共、クーデターだ!!元お頭とその一味をひっ捕えろ!!』
「クーデター起こした奴が何言ってるんスかあぁ!!?」
ビリーはパニックになりながらも、必死に四人の後を追った。
機関室へ向かう足場に、続々とクーデター派の空賊が湧いて出て来た!飛行船の一件で懲りたのであろう、今度は全員隙なく武装して、本気で襲い掛かって来る!
紅は空賊の三日月刀を刀で受け流すと、その刃を返し、峰打ちで空賊の横っ腹を打ち据え、振り向きざまに柄でもう一人の顎を突き上げる!そのまま身を翻す反動で後ろ回し蹴りを放ち、おまけの一人を吹っ飛ばした!凶器に等しい連続技を次々と繰り出していく。
アオイは音もなく踏み込む。空賊達の目の前で、白衣がふわりと舞った。かと思った瞬間、しゃがみ込んだアオイの、空賊達の足元を狙ったナイフが強襲する!足を斬られ、思わず倒れ伏していく空賊達。倒れたところに、追い討ちをかけるように急所を的確に狙った拳が入っていく!空賊達はひとたまりもなく、気を失っていった。
蒼龍は木遁で周囲を爆破しつつ、金遁で造り出した棍を勢いよく振るう!そのスピードは見えない壁を作り出し、攻撃は払い落とされ、近付けば武器もろとも吹き飛ばされる!正に八面六臂、攻守盤石。空賊達はなす術もなく倒されていった。
「無愛想を顔に貼り付けた兄ちゃん!ちょっとは手加減してくれっス!!」
木遁の爆発で、危うく一緒に吹っ飛ばされそうになったビリーが嘆く。
しかし、三人以上に大暴れしている人物が一人。
アンバーは両方の腰から銃を抜くと、両手に持ち、次々と発砲した!弾頭が空賊目掛けて飛んでいき――着弾と共に激しい電撃が空賊を襲う!
「!!?」
声を上げる間もなく崩れ落ちる空賊!その間も絶え間なく狙いを定めるアンバー。足元目掛けて発砲する!今度は着弾と共に氷が生まれ、空賊の足に絡みつく!
「冷てっ…動けねえ!?」
そこへアオイの鳩尾を狙った一撃が決まる!
「ちょっと待ってその弾丸!一体何なの!?」
アオイが信じられないという風にアンバーに問う。アンバーはニヤリと笑った。
「これか?コイツはなあ……」
アンバーは空賊達の足場に狙いを定めて、二丁同時に発砲した!着弾と共に爆発が起こり足場が崩れ、空賊達は纏めて吹っ飛ばされた!
「二百年前に失われた『禁術』ってヤツだ」
アンバーはシリンダーから薬莢を抜くと、素早く新たな弾丸を装填する。銃を振ってシリンダーを戻すと、再び発砲を開始した!
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ビリーは泣きそうになっていた。
紅とアオイはともかく、アンバーと蒼龍の攻撃は飛空艇を破壊しかねない勢いだ。
「ハリーどういう事だ!何でお頭が船壊しまくってんだ!?」
「知らねえっスよ!それに俺の名前はビリーっス!!」
操舵室から飛び出して来たアンバー派の操舵官に、ビリーは叫んだ。それを皮切りに、操舵室や機関室、厨房からアンバー派の連中が次々と出て来る。状況を把握し、とにかくアンバー達を止めにかかろうと、棍棒やスパナ、フライパンを片手に乱闘の中へ飛び込んでいく!
「お頭ぁ!!落ち着いてくれ!」
「船が墜落しちまったら全員死んじまう!!」
しかしもはや収拾不可能、四人の猛攻にアンバー派の連中も関係なく吹っ飛ばされていく!
「船が落ちても、死ななきゃ大丈夫だ!!」
「馬鹿野郎!!死ぬに決まってんだろ!!!」
完全にハイな状態で至極楽しそうに銃を打ちまくるアンバーの言葉に、空賊の敵味方全員のツッコミが入った!ビリーは涙を流しながら、天に向かって叫ぶ。
「誰か…お頭を止めてくれえぇえ!!!」
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一方、大立ち回りを披露する四人に、船長は怒りでワナワナと震えた。
「こうなったら…!!」
慌てて船長室へ戻り、自慢の武器コレクションの内の一つを担ぎ上げる。そのまま部屋から出ると、大乱闘の現場に向かってその武器を振るう!
ズドオォォン!!!という大音響と共に、ドゴォン!!!とどこかに着弾する衝撃が走る!全員がピタリ、と動きを止めた。
「テメェら……大人しくしろ…」
肩で荒く息をして、船長は狂気を湛えた血走った目でニタァっと笑った。その肩から、巨大な肩掛け大砲が滑り落ちる。
「……あいつ、馬鹿なのか?」
我に返り、自分の事をすっかり棚に上げたアンバーがぽつりと呟いた、その時。
「誰だあ!!魔石炉を爆破した大馬鹿野郎は!!?」
機関室からタンクトップ姿の、機関長のおっさんが勢いよく飛び出して来る。至るところ煤で真っ黒だ。
「おかげで魔石は粉々だし、燃焼機器も吹っ飛ばされちまった!!このままだと飛空艇が墜落しちまうぞ!!!」
しばし沈黙の後。
「えええぇえ!!?」
全員揃って絶叫した!
同時に、あんなに騒がしかったタービン音が止まり、代わりに急降下の異常を知らせる警報音が鳴り響く!空賊は全員、右往左往の大パニック状態だ!
「魔石以外の熱源は!?」
「厨房にある魔道具と暖房器具だけだ!」
アオイはアンバーに確認すると、続けて蒼龍へと向く。蒼龍は頷く。
「火遁を使う。紅は……っ!?」
蒼龍は言いかけて、心臓が刺すように脈打つのを感じ、思わずその場に蹲る。紅は慌てて駆け寄り、まさか、と窓の外を見る。いつの間にかすっかり夜は更け、そこから見える――大きな満月。
「あ」
紅が小さく声を上げる。
瞬間、蒼龍の身体を群青色の鱗が包み込む!
その身体は徐々に大きくなり、甲板を突き破り――巨大な龍へと変貌を遂げた!
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「ぎゃあああぁぁぁあ!!?」
ビリーをはじめとした空賊共の絶叫が満月の夜空に響き渡る!中には衝撃のあまり、泡を吹いて倒れる者まで出る始末。
「……え?」
「……は?」
流石のアオイとアンバーも、信じられない光景に目を大きく見開いて絶句する。
無理もない、さっきまで目の前に居た無愛想を顔面に貼り付けた青年が、突如龍に変貌したのだから。満月の光を受けて輝く姿はあまりにも異質であり、神話の世界そのものだった。
「待て待て、待ってくれ!!嬢ちゃんどういう事だ!?龍って!?」
「半龍人ってこういう事だったの!?聞いてないんだけど!!」
アンバーとアオイは、慌てて紅に詰め寄る。
「蒼龍だよ!綺麗でしょ?」
「いやそうじゃなくて!!」
「何でそんなに冷静なの!?」
平然と答える紅に、二人のツッコミが入った。
蒼龍だった龍は、突き破った甲板の上で大きく翼を広げると一声咆え、巨大な前脚でがっしりと飛空艇を掴む!そしてそのまま、空中へと飛び上がった!
「飛空艇を支えてくれてんのか!」
アンバーが吹き晒しの気流で乱れた髪を抑えながら言う。飛空艇は一瞬浮き上がった……かと思ったが、減速したといえど、やはり機体の降下は止まらない。龍に対して飛空艇が重過ぎるのだ。
アンバーは必死に船を支える龍の姿を見て、ぐっと奥歯を噛み締める。驚き腰を抜かす空賊共に向かって指示を飛ばした。
「お前ら、死にたくなかったらさっさと熱源になりそうな魔道具でも何でもかき集めて来い!浮力嚢を少しでも復活させるぞ!」
「僕も手伝う!」
アンバーとアオイは真っ先に機関室へ向かう!それに倣って、ビリー達アンバー派の連中は急いで熱源探しに奔走した!
「くそっ…野郎共、喧嘩は後だ!俺達も協力するぞ!!」
船長も、手下共を連れて後を追った!
「蒼龍!!」
一人残された紅が心配そうに叫ぶ。龍は苦しそうに唸る。
「もうちょっと頑張って!私も何とかするから!!」
そう言い残し、紅は機関室へと向かった!




