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01「プロローグ」


 自分の顔が嫌いだった。

 でも、だからといって人生を悲観したり、自分から終わらせようなんていう気は更々無かった。

 友人にも恵まれていた方だと思うし、家族仲も悪くなかった。


 それがまさか、こんなことになるなんて……。


「安達山権蔵(あだちやまごんぞう)さん……この度は私の不手際で大変申し訳ない事をしてしまいました……」


「はあ……それで一体、どういう事なんすかね?」


 目の前には、金色の長い髪の女性が深々と土下座をしていた。長い髪は床に広がり、その背中には美しい白い翼が見える。

 そして、見覚えのない部屋。執務室のようなものだろうか。机の他には本棚が沢山。それと、向かい合ったソファーの間には小さなテーブル。

 いかにもな普通の部屋なのだが、その女の子のせいで異質な空間に思える。


 そもそも俺はなんでこんな所にいるのだろうか。

 少し前まで俺は、帰り道にある公園にいたと思うんだけど……。


 そうだ、公園にいた。

 部活帰りでちょっと疲れていたから、ジュースでも飲もうと公園に立ち寄ったんだ。

 それでベンチに座っていたら、いつものように遠くからヒソヒソと子供たちが指をさしていたんだっけか。


 ああ、もう慣れてしまっているし最初に言っておく。


 俺は不細工だ。顔が悪いのだ。


 近所の子供にはゴリラーマンだとか某バスケット漫画のキャラの赤木キャプテンだのと呼ばれている。

 権蔵とかいう大層な名前がそれを更に拍車をかけていた。

 親もなんでこんな古臭い名前にしたのだと文句を言いたいが、この名前付けたの爺ちゃんなんだよな。爺ちゃんがどうしてもこの名前にと、当時はその事で一悶着あったらしい。

 それはともかくとして、俺は公園のベンチでジュース飲んでくつろいでいたはずだ。

 だけど、それから先の記憶がない。家に帰った記憶も無いし、なんで俺はこんなところにいるんだ?


「その……私の手違いで、貴方の魂を間違えてこの天界に持ってきてしまいまして……。分かりやすくいいますと、私のミスで貴方を殺してしまいまして……」


「はぁ!?」


 今なんつったこいつ。殺したとか言った?


「ひぃ!? も、申し訳ありません! 謝ります! 謝りますからそんな怖い顔はやめてください!」


 緑色の目をうるうるとさせながらその女は何度も頭を下げた。

 驚きはしたが別にそんな顔はしていないんだけど。どうせあれだろ? 俺のゴリラみてーな顔のせいだろ。


「いや怒っては無いんだけど。それよりさ、とんでもない事が聞こえた気がするんだけど……俺って死んだの?」


 そうだ、そこだけは聞き逃せない。

 あの女の子のミスで俺を殺したとか言ってたぞ。


「はい……。そしてここは、死んだ魂の集う場所、天界です。申し遅れましたが私はその天界の天使長の、ミルソルと言います」


「天界に天使ねぇ……。普通の部屋に見えるんだけど」


「ここは天界とは言っても、人々の魂等の資料と、それを管理する役割を持つ私の仕事部屋ですので……」


「んで、あんたが俺を殺したっていうのはどういう事なのよ?」


「あ、あの……」


 おずおずとその天使は俺に尋ねた。


「ん? 何?」


「こちらとしてはありがたい事なんですが……疑ったりとかしないんですか?」


「そりゃ不思議だなとは思ってるしドッキリか何かだと思いたいけどさ。俺、公園のベンチで座ってた記憶しかないんだよ。まさか自販機のジュースに睡眠薬仕込んで俺をわざわざこんな所まで運んだなんて考えられないしなぁ……。死んだってんならまあ納得だよ。ただ死んだのにこうして話してるってのはやっぱり不思議だけどな」


 一応俺は身長は百八十はある。体重も確か前に測った時には八十と少しはあった。さすがにそんな俺を運ぶのは大変だろう。


「はい、こちらのミスで起きた事ですので、貴方は特別なんです。本来なら魂だけの存在となり、輪廻転生したり、天界で過ごしたり、天国や地獄へ送られたりするんです」


「ふーん……」


「それで、こちらのミスについてなんですが……安達山権蔵さん、本来貴方は何もなければ老衰で死ぬはずでした。それが、違う世界の貴方にそっくりの方と間違えてしまいまして……」


「……は?」


 ミスって何だと思っていたら本当にただのうっかりなミスじゃねえか。

 ていうか命を扱うような仕事を本当にしているんならあり得ないミスじゃないのか、これ。


「なんだよそれ。意味分かんねえよ。こっちは普通に生きてたんだぞ」


「申し訳ありません! こんなミス、許される事ではないんです……。私の降格は確定です。それでも、貴方には何の罪もありませんから、特例でかなり有利な条件での生まれ変わりをできるようにしました」


「え、俺生まれ変われるの?」


「はい、本来なら、もっと長く平穏に生きられるはずだったんです。本当ならすぐにでも生き返らせて差し上げられれば良かったのですが、もう葬式も済んで死亡届も受理されていますので、いま生き返らせてしまうと問題がありますので……」


「え、生き返らせること自体ははできるの?」


 そんな事ができるなら神様みたいなもんじゃないか……と思ったが、まあ天使とか天界ってそういうものなのか?


「魂が無事ですので身体を造ってしまえば不可能ではないのですが……生き返らせるとなると世界に混乱を引き起こしてしまいますので、できるけどできないという事になります……」


「もっと早く気づいてくれたら生き返れたんじゃないの?」


「そ、それはそうなのですが、どうしても魂が天界に来るまでにタイムラグが生まれてしまいますので、うぅ…………」


 気になった事を俺は聞いているだけなのだが、この天使既に泣きそうだ。

 いつもそうだ、この顔のせいでいらぬ誤解を生んでしまう。

 事情を知っている友達ならいざ知らず、俺の事を知らない人達はいつだって誤解する。

 怒ってもいないのに怒っていると思われたり、喧嘩を吹っ掛けられたり……。

 ゴリラだのとからかわれる事も多い。顔のせいで俺は人生で損してきた。


 だけど、どうだろうか。

 生まれ変われると、この女の子は言っていた。

 しかもかなり有利な条件が付くと。

 もしかしたら物凄いイケメンに生まれ変わって女の子にキャーキャー言われるような人生が歩めるかもしれない。

 モテたい、と考えた事はあった。

 でも、俺みたいな顔じゃ無理だと諦めていた。

 一度くらいそういうのを味わってみたいとも思っていた。


 だから俺は、この天使とやらに色々と聞いてみることにした。


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初回3話、以降毎日1話更新予定です。

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― 新着の感想 ―
Xに書いてあった通り、確かに面白そうですね。とりあえずブックマークさせてもらって、続きを読ませて頂きますね!
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