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第2章・第6話 相容れない相手

サン・ジェルミが口元に笑みを浮かべながらも、視線を遠く海原へと向けた時。


「何を勝手なことをベラベラと」


ディータたちの背後から、絶対零度のような声が落とされた。

振り向かずともわかる、アイナだ。


「やあ、アイナ。会いたかったよ」

とサン・ジェルミが言い終わらぬうちに、アイナが蹴りを繰り出してくる。

「やあ、アイナ、ずいぶんと暴力的な挨拶だね」

蹴りをかわして、嬉しそうに笑うサン・ジェルミを、アイナ心底嫌そうな目で見ていた。


「会ったら、今後は使い物にならないようにする、と決めていたのです、大人しく蹴られて下さい」

「え?何を?…本気で? いや、やめて、アイナ、さすがにすごく痛いから、ほんとやめて」


アイナに似合わない物騒なセリフが繰り出される。

それを、へらへらと笑いながら受け流し、サン・ジェルミはディータの背後へと隠れた。

アイナは、頭上の垂兎(たれうさ)を甲板の床へと下ろし、右手を軽く握り、錬成の構えを取った。


「ア、アイナ!ちょっと待て、俺は関係ないだろ!俺に向けないでくれ、それ!」


以前、感情錬成に巻き込まれた記憶が蘇ったのだろう。

ディータは焦った声をあげた。


「じゃあ、それ、押さえつけておいてください」

と、そっけない声で言いながら、アイナの感情錬成を無効にする紙人形を投げ渡してくる。

それ、とは、むろんサン・ジェルミのことだ。


「わあ、僕の分は無しかい?」

サン・ジェルミは楽しそうな声をあげて、自分にも紙人形を寄こせという顔をしている。

ディータは、さっきのシリアスな話の空気は何だったのか…と、ため息をついた。


「あー……アイナ、ここではやめてやってくれ……」

そう言い、サン・ジェルミの両肩に手を置き、アイナの眼前へと押し出した。


「えー。連れないなあ」

明るい声を出しているが、サン・ジェルミはディータをにらみ上げていた。

――アイナが一人だけに紙人形を渡してきたことが気に入らないんだろうなあ…

兄弟は、絶望的に心の狭いこの青年に、ため息しか出なかった。


「私としては、あなたに思考を割く事すら、煩わしいのですが。この感情すら嬉しがられるとは、甚だ業腹ごうはらです」

憤慨するアイナを、サン・ジェルミは嬉しそうに見ているだけだった。


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