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071 アマリア最後の巨兵

 今回アマリア王国が派遣したのはジェイコフ、カーライルを含む騎士3名と巫女1人。あとは巨兵を整備する技師20名と王国兵士20名だった。兵士は技師たちの護衛役なので、戦力は正騎士の駆るアーマ・ドル1騎と持ってきた巨兵2機である。


 援軍が到着した翌日

 都市アーテルッサにある巨兵の整備工場にてーー


 フランはジェイコフの命で彼とカーライルを連れてきた。


 「団…いえ隊長、こちらが巨兵の整備工場です。現在、航行の影響が出ていないか機体チェック中です」


 「よし、二人ともついてこい」 

 「隊長、巨兵は、そちらではなくこちらです」 


 「…そ、そうか。やっぱ案内してくれ」


 そんなお約束のやり取りをしつつ、3人は巨兵の元にたどり着いた。


 「どうだ、巨兵もなかなかだろ」


 どこか自慢げなジェイコフ。感想を求められ、そうだなと返すカーライル。フランは巨兵が到着したときに思った疑問をぶつけることにした。


 「初めて見る巨兵です。これはどこの部隊の所属ですか? それに、まるで新品みたいに綺麗です」


 「気にもしていなかったが確かに綺麗すぎるな」とカーライルも同意した。


 巨兵といえば100年前にアーマ・ドルに主役の座を明け渡した骨董兵器である。アマリア王国でも、いまだ防衛戦力として現役で稼働しているものもあるが、徐々に退役と解体が進められているのが巨兵の現状だ。

 それがこの2機はどうだ。装甲の色剥げどころか傷ひとつない。アマリアが新たに作ったとしか言いようがないほど新しい。


 「二人の疑問はもっともだ。綺麗なのは当たり前。この機体は特注機の上、未使用品だからな」


 「そんな機体が…」 「にわかには信じがたいが…」


 二人の感想はもっともなことだが、この巨兵は今まで見たことのある巨兵とは何か違う。異様な迫力を持っており、その巨体が纏う雰囲気に、歴戦の戦士である二人ですらそう言わされてしまったのだ。


 二人の反応に満足そうな笑みを浮かべ、ジェイコフの説明が始まった。


 アーマ・ドルの登場と共に廃れていった巨兵開発であるが、並走していた時代もあった。最先端技術であるアーマ・ドル開発へ流れなかった巨兵開発者たちもいた。そんな転換期、巨兵開発の最終期に当時の女王の命を受け、巨兵の威信の全てを懸けて3機の巨兵が開発された。


 古語で「兵士人形」の意味を持つアーマ・ドル。


 打倒アーマ・ドル。そのためだけに開発されたこの3機は「ドールクラッシャー」と名付けられた。


 主装甲は全てミスリル製。骨格や副装甲にも、ふんだんにアマリアが開発した人工ミスリルが使用されている。これ1機を作る費用で巨兵10機を作れるほどの予算がつぎ込まれている。そしてこの3機が、アマリアで製造された最後の巨兵になった。


 「御前試合でアーマ・ドルには勝ったんだが1号機はその一戦で使い物にならなくなってな。結局予算や、利便性を凌駕する強さとは言えなくて以後巨兵開発は行われなくなった。で、王家の倉庫に保管されていた残り2機がこいつらだ」


 「どうしてそんな機体を持ち出してきたんだ?」


 「おお、それな。政治判断もあるんだが、アーマ・ドルに乗れないお前達に使わせる為でもあるな」


 「使わせてくれるなら有り難くそうさせてもらうが」


 メアルの為に手柄を挙げたいカーライルにとって、アーマ・ドルを倒せる手段と機会が与えられるのであれば文句はなかった。


 一方、フランは少し考え込んだ。


 「隊長、正騎士と巫女ではなく巨兵にした政治的判断って何です?」


 「陛下に聞いてくれと言いたいところだが、この2機は王家所有品だ。新古品だろうが、この2機を派遣するだけで同盟盟主の顔が立つ。それに国の大事に関わらず聖騎士を出さないここの王様へのメッセージでもあるんだろ。それでも一応正騎士と巫女を連れてきたのは情けだな」


 「そういうことですか。隊長はこれに乗ったことはあるのですか。隊長が扱わず私に乗せるのは?」


 「ああ、乗ったことはあるが俺には合わなかった。癖も強く扱いにくい奴らだがお前らなら扱えるだろうと思ってな」


 「とりあえずは了解しました」


 「うむ。ま、そういった事情だから二人とも頼んだぞ。さてメンテナンスが終わり次第、同調と調整を始めるぞ」


☆☆☆☆☆


 ナガツ国軍側――


 ヘイロウは主要な部隊長を全て集め軍議を開いていたが、そこに報告が入った。


 「大将、やつらまんまと掛かったようです」


 ヘイロウは思いどおりに進む状況に思わずニヤリと笑う。

 会議に参加している皆も侮蔑を込めた笑いを浮かべた。


 「うむ、わざわざ屠られに出てきおったな。これを打ち破りアーテルッサを陥とす。これにて詰みよ。やつらはこちらの要求を飲むしかなくなる」


 「懸念がないわけではありません。アマリアの援軍が先日到着しておりますが、その内容が少々不可解です」


 配下の一人が笑みを引っ込め、真顔でヘイロウに注意を促す。


 「アマリアが空から運んできたカラクリ巨人か。信じがたいが本当だとすれば、骨董品をわざわざ見せつけるように運んできたアマリアに本気で手を貸す気はないということよ」


 ヘイロウは豪快に笑う。


 「油断は禁物です。ホダツ将軍」


 「ヘイロウでよいと言っておるのにゲッカルト殿も強情者よな」


 「これも性分です」


 笑うヘイロウに対し、無表情に答えるゲッカルト。だがこの場でゲッカルトに対してマイナス感情を持つ者はいない。それはゲッカルトがヘイロウと互角に渡り合える強者であることを見て知っているからだ。


 ゲッカルトは帝国からの客将として一目置かれる存在になっていた。


 普段は影仕事が多いゲッカルトだが、本質は剣士である。ここはゲッカルトにとっても居心地が良かった。


 「なに、油断はせぬよ。戦場にて証明してみせよう。ゲッカルト殿も出るか?」


 「ここは圧倒的な力で屠る場面。手を貸しましょう」


 兵数では劣っている。だがそんな要素は関係ないとばかりに勝利を信じている二人の会話を、周囲は当然のこととして聞いていた。


 「さて、行くとするか。皆のもの出陣じゃ」


 「「「「「「「応!!!」」」」」」」


 ヘイロウの号令のもと、ナガツ軍が動き出す。決戦の刻はすぐそこまで迫っていた。

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