XXX どこかの戦場にて
本編に直接は関係ありません。が、こんな未来も起こり得るというお話です。
これは未来の話。起こり得る可能性のひとつ。
巨大な騎士が距離をあけて対峙していた。
一方は白銀に輝く女性型。スカートのように広がる腰部装甲と、腰まで届く水色がかった銀髪が特徴的だ。その美しい髪がヘルムの後部から流れ出し、キラキラと光を反射しながら風に揺れている。
その白銀の女性騎士と対峙しているのもまた女性型だった。
全身を青い甲冑に包み、フルフェイスのヘルムのため顔は分からない。だが華奢な腰と、双丘の膨らみを形作る胸部装甲が女性型であることを示していた。その青の騎士はカイトシールドと片手持ちのナイトソードを構え、その切っ先を白銀の騎士へ向けている。
対する白銀の騎士は盾を持たず、反りの入った片刃のブレードを片手で持ち、無造作に下げていた。その刀身が黒いのがアンマッチで異質だった。
先に動いたのは白銀の騎士だった。フワリと、その巨体が宙へ浮き上がる。それが開戦の合図となった。
仕掛けたのは青の騎士。背後から突如いくつもの白い光の筋が伸び、複雑な軌道を描きながら白銀の騎士へと殺到する。白銀の騎士は宙で静止したまま動かない。構えどころか、防御の姿勢すら見せなかった。光の筋が一斉に白銀の騎士へ迫る。
その瞬間だった。
白銀の騎士が全身から強烈な光を放つ。
世界が白に染まった。
視界を焼き尽くす閃光の中、白銀の騎士が青の騎士へ向かって翔る。光が収まった時、青い騎士の頭があった位置には黒い切っ先が突きつけられていた。
『あっぶな魔力放出だけで私の攻撃を全部かき消すなんて反則!目が焼けるとこだったじゃん。でも対応できる私って流石天才!』
『そうね、それに予備動作なしに宙を滑ってくるのも厄介ね。しかも疾い』
青の女性騎士の内部で、それを操る二人が会話をしていた。
神の鎧”ヴァル・デイン”を操る聖騎士と聖女。
『お姉ちゃん。補助る?』
『大丈夫よ。でも流石は”白銀のルアメットゥーナ”ね。強いわ』
『そだね。 ま、飛べるのはそちらの専売じゃないって教えてあげようかな』
『シャーリ、制御は任せるわ。空中戦よ』
『了解。初めてだけどなんとかなるかな。とりま上をとるよ』
青の騎士はルアメットゥーナが光った瞬間、後方へ跳んで突きを躱した。続く追撃を剣技と盾で受け流す。そこで今度はルアメットゥーナが後方へ滑るようにスライドし距離をとった。
先程の青の騎士を操る聖騎士と聖女の会話は、再び距離があいたから出来たことである。
『ふむ剣筋が読めんな。メアル大丈夫か?』
『ええ、もう大丈夫。カールさま。思わず威力だしすぎちゃったの』
『次は自分の目がやられない程度にしてくれ』
『わかったわ。がんばるね』
白銀のルアメットゥーナの中でも、顕現させたメアルとそれを動かすカーライルのペアが会話をしていた。どうやら先の攻撃は、自爆しかけたメアルのフォローのための攻撃だった模様。
『まぁ、青い騎士さまは飛べるのね。スゴいわ』
『そうだな。さて此方が不利な訳だが』
飛んで上空を押さえられたというのに、メアルはのんきに感嘆した。自分も飛べるのにとはカーライルは言わない。メアルのことは全肯定だ。
『そうだわ。だったら更にその上をとればいいと思うの』
『ふむ、頼めるか』
『わかったわ。いくわね』
メアルの合図の直後、一瞬カーライルの視界が暗闇に包まれる。メアルが力を使った瞬間、視界リンクが切れたからだ。
だがそれよりもカーライルは聞き逃さなかった。視界が暗くなった瞬間、メアルが『あ!』と言ったのを。
視界が戻った瞬間、見えるのは敵ではなく遠くの大地と雲だった。
『まぁ、高さの座標を間違えてしまったみたいだわ。ごめんなさいカールさま』
『なるほど、分かった。みたところ王都の真上に跳んだようだな』
『跳ぶ瞬間、王女さまたちが敵に襲われるのが見えて思わずそちらに跳んじゃったの。でも高さを間違えてしまって。青い騎士さまは私たちを見失ってキョロキョロしてるみたい』
『さすがだなメアル。 ならこのまま救援にむかうか』
『はーい。ではこのまま真下に高速で落ちるわ』
メアルのうっかりで遥か上空へ瞬間移動したため、カーライルも敵をロストしていた。だがメアルはしっかり捕捉していたのだ。先程のうっかりを無視し、捕捉している事実だけを誉めるカーライル。だがメアルのパートナーになるなら、この程度のアクシデントで動じる様では勤まらない。
一方の青の騎士側。
『あれれ? 消えたよ』
『そうね。姿を消している?』
『うんにゃ。魔力反応がない…ん、居た。王都の遥か上空にいるよ』
『まさか瞬間移動』
『そのまさかだね。もう反則じゃん。お姉ちゃん追う?』
『そこまでの義理はないわね。 私たちはさして意味のないこの地の防衛を頼まれただけ』
『だねぇ。魔導王国の力を借りずともアマリアは落とせるって帝国は息巻いていたっけ』
『まぁ、まさかここで伝説の騎士に会えるとは思ってなかったけどね』
『ほんと何しに来たんだろうねえ。挨拶かな』
『本当にね。さてこのまま待機よ。あとは見物させて貰いましょう』
青の騎士はフワリと着地すると、剣を地面に突き刺しその柄に手の平を添えた。その構えは完全に待機へ移行したことを意味していた。
『帝国もここまでの兵力を割いて大敗じゃ可哀想だけど。アレが相手じゃなあ。なんか読めないし、無茶苦茶っぽいし、私とお姉ちゃんでも骨が折れるよ』
『帝国が負けると思ってるの。シャーリ』
『まあねえ。剣聖よりアレを操る騎士のほうがヤバイっしょ』
『剣聖だってけっこうバケモノだと思うけど』
『少なくとも剣聖ではお姉ちゃんに勝てないよ。でもアレの騎士のほうは全くわからなかったよ』
『そうね。できればもう避けたいわ。あとはこの戦の顛末を国に持ち帰るだけ』
『これ終わったらプリン食べたいな』
『作ってあげるからもう少し付き合って頂戴、シャーリ』
『おっけーりょーかい。流石お姉ちゃん』
『はいはい全く調子いいのだから』
青の騎士はこうして今回の帝国のアマリア王都侵攻戦を、観戦に徹するのだった。




