魔鋼ゴーレムだ、こんな浅い場所で出るゴーレムじゃねぇ
ロックワームとロックスネークを撃退した後、通路の罠を掻い潜り再び少し広い空間へと出る。そこにはアイアンゴーレムと似た、だが一回りは大きいゴーレムが存在していた。その存在にダンザとレイナードがギクリと足を止める。
「どうした?」
「魔鋼ゴーレムだ、こんな浅い場所で出るゴーレムじゃねぇ」
「魔鋼ゴーレムか、やばいのか?」
「やばいが、もう逃げられん。来るぞ!」
ダンザが言うが早いか、魔鋼ゴーレムはドシンドシンと足音を鳴らしながら俺達に突っ込んでくる。大きくなった分歩幅も大きい。アイアンゴーレムより確実に足が早い。
「ダンザとレイナードは下がれ!リフレとネスは関節を狙え!」
「ソウは!?」
「俺は胴体の芯を狙う!」
ゴーレムの振り上げた拳を避けつつ懐に潜り込む。背後からゴーレムが地面を割った衝撃で地面の破片が飛んでくるが構っている暇は無い。がら空きになった懐に、一撃を叩き込む!
「おおぉっ!」
ドン、という音と共に拳が当たる。アイアンゴーレムのように胴体を割る事は出来なかったが、今の一撃の目的は芯に届かせる事。その衝撃を、ゴーレムの核へと叩き込む。
それは確かに効果があった。だがその手応えは、一撃では足りないのを俺に伝えてきた。懐に入った俺を掴もうと伸ばしてきた腕をバックステップで避けながら2人に言う。
「あと一、二発!」
「分かった!」
「はあぁっ!!」
ネスの返答と同時、リフレがゴーレムの足関節目掛け槍を薙ぎ払う。それは確かにゴーレムの膝裏を打ち、片膝を地面につかせた。それと同時にネスがゴーレムの背中に呪符を貼り付けて飛び退く。
「爆!」
ドカンという音と共にゴーレムが前のめりに倒れ込む。叩き込むなら今!上空に飛び、落下すると同時に拳を腰に引き、真下へと構える。そして着地と同時に、背中からゴーレムの胴体へと拳を叩き込む!
「せえぇっ!!」
ドン、という衝撃の後、ゴーレムの胴体を抜けた衝撃が地面を陥没させる。その手応えは確かに、ゴーレムの芯を貫通した。芯にあったゴーレムの核を粉砕したのを確信したが、まだ動いても対応できるように残心し、しばらく待っても動かない事を確認してから構えを解く。
「……終わったか」
「大丈夫、ですかね」
「あ、パーツがバラバラになったわ」
ネスの指摘に確認すると、ゴーレムの各パーツがバラバラになった事を確認した。不思議パワーでくっついていたパーツがバラけたという事は本当に終わったのだろう。肩の力を抜いてゴーレムの背中から降りる。
「2人共、お疲れ」
「えぇ、お疲れ様」
「最後の一撃、見事でした」
3人でハイタッチをしてお互いを労っていると、ダンザとレイナードがやってくる。レイナードはすぐにゴーレムに駆け寄ると、ゴーレムの背中を見て、その胴体の下の地面を見て聞いてくる。
「どうなっている?」
「ん?なにが?」
「ゴーレムの胴体に傷はない。だがゴーレムの下の地面は大きく凹んでいる。どうなっている」
「あぁそれはゴーレムの胴体に直接衝撃を徹す技だ。だから表面に傷はつかなくとも、内部に衝撃が徹りゴーレムの核を砕いた。その衝撃がゴーレムの胴体を貫通し、地面を凹ませたんだ」
「……信じられん」
レイナードはありえないものを見たという風に首を横に振る。信じられんと言われてもな、出来るものは出来るのだ。それはしょうがない。
そう思いながら俺達は手分けして魔鋼ゴーレムのパーツをインベントリに放り込む。ゴーレムの胴体があった地面はレイナードの言った通りに凹んでいた。
「おいおいおいおい、あんたらすげぇなぁ!まさか3人だけで魔鋼ゴーレムを倒しちまうなんて!」
「ダンザ達だったらどう対応したんだ?」
「そりゃ、アダマンタイト製の槍でゴーレムの核狙ってひたすら突くしかできねぇな。魔鋼ゴーレムはそんだけ硬いからな」
「なるほど、そういう対応もできるのか」
「だがそれをするのも時間がかかる。被弾率も上がるしあんたらみたいに綺麗にはいかねぇよ」
なるほど確かに、それは被弾率も上がりそうだし危険がある。何より的確にゴーレムの核を狙うのは難しそうだ。そんな事を考えていると、リフレが突然声をあげた。
「あっ!ソウさん背中見せて下さい!」
「ん、わかった」
そう言ってリフレに背中を見せると、リフレと一緒にネスが俺の背中を覗き込んだ。
「やっぱり、鎧の背中部分傷が多くついてます」
「きっとゴーレムが地面を殴った時の破片ね。背中から血とかは出てないし他は大丈夫そうだけど、後でシャマールに見せた方が良いわね」
「ですよね。傷の修復はしてもらわないと」
「そういうお前達は大丈夫なのか?」
「私達は側面に回り込んでましたから。正面から飛び込んだソウさんだけですよ被弾したのは」
まぁあの時は正面から飛び込まないといけなかったからな、必要経費だ。しょうがない。シャマールには作ってもらってすぐで申し訳ないが修復してもらおう。それにしても。
「ちょっと腹減ってきたな。ここで一旦休憩しよう」
「そうだな、少し休憩しようぜ」
俺の言葉にダンザが同意して、一旦ここで休憩する事にした。腹も減ってきた事だし早速ロックスネークとロックワームの肉を食べる事にする。
携帯コンロをセットして上に鉄板を敷き、鉄板に火が通った所で油を引いて丁度いい大きさに切ったロックワームとロックスネークの肉を焼く。香ばしい匂いがしてきた所で塩を振り、各々フォークで食べる。
「ロックワームは、プリプリした豚肉?」
「そうね、弾力の強い豚肉かしら。ミンチにするといいかも」
「ロックスネークは美味しいササミ肉ですね。茹でてサラダとかにも合いそうです」
「うめぇうめぇ」
「食い過ぎだぞダンザ」
こうして俺達は腹ごしらえをして一旦休憩し、水袋から水を飲んで一服する。腹が落ち着いてから再び先に進むことにした。
「次で最後にしよう。引き返す時間もあるし」
「そうだな、それがいい」
ダンザが俺の言葉に同意して次で最後と決まった。そうして歩く事数分、俺達は最後の敵と相対した。
正面からドスン、ドスンと盛大な音を立てて歩いてくる巨大な影。その影は先程の魔鋼ゴーレムよりも一回り大きいか。
そのゴーレムは、赤褐色に輝いていた。
「……ウソ、だろ」
「ありえん……」
ダンザとレイナードが、震えながら呟く。それほど怯えるようなものなのか。その巨体は確かに先程のゴーレムよりも威容を放っている。
「ダンザ、レイナード。あれは何のゴーレムだ」
「――アダマンタイトだ」
「何だと?」
「アダマンタイト製のゴーレムだ!ちくしょう、こんな所で出てくるような化け物じゃねぇ!!」
アダマンタイト。ネスのクナイにも使われている、俺が知る限り一番強靭な金属だ。その上にオリハルコンがあるらしいが、俺は現物を見た事は無い。
しかしそうか、アダマンタイトか。さて、どうしてくれようか。
「ダンザ、レイナード。俺達がやばいと思ったら迷わず逃げろ。俺達は来訪者だ、本当の意味では死なない」
「……分かった」
「だがそれまでは、光源の維持を頼む」
「あぁそうだな、分かってるよ。光源がなきゃ戦えやしない。どうせなら最後まで付き合うさ」
「頼んだぞ」
俺の頼みにダンザとレイナードが黙って頷く。2人は大丈夫だな。さて、それでは。
「やることはさっきと変わらない。俺は芯を狙う。2人はなるべくあいつの動きを鈍らせてくれ」
「分かってるわ。手札であいつに傷をつけるのは難しそうだもの」
「可能な限りサポートします。決め手はソウさんです。今度も決めちゃってください」
2人の戦意は十分。これなら戦える。こうして俺達は今日最大の難敵、アダマンタイトゴーレムへと挑むのだった。




