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 材料調達。その1。砂糖。 ②

 何をもってトカゲと呼ぶのか分からないが、異世界ではドラゴンをトカゲと呼ぶらしい……。

 なんで、砂糖を手に入れるだけでドラゴンと戦わなきゃなんねーんだよ! こんなの戦えるわけがない! 頭おかしいんじゃねーのか、異世界は!?


 普通にこれを描写するとか俺はには無理なんで、あれでやるから。

 こうすると、現実から多少は切り離されて、俺の心の安定が保たれるから。



 ──チャララララー、パパー、ドドドドッ──


 ドラゴンたちが現れた! 眠りを邪魔されたドラゴンたちは、ものすごく怒っている!


 ドラゴンのこうげき。

 ドラゴンはひをふいた。


「ギャーーーーッ!?」


 足元に炎が広がっていく。あっという間に逃げ場はなくなった! その炎で、れいとは少し焦げた!

 さらにドラゴンは息を吸い込む。で、吐き出す。


「もえる。もえるーー! オレをまもってーー!」


 しかし、だれもはなしをきいていない。

 さけびはむなしくこだまする。


「ふつうのニンゲンには、ムリだからな! ドラゴンとかムリだから!」


 みんなドラゴンにかかりきりで、たすけはこない!

 さけびはむなしくこだまする。


「しかも、オレへのヘイトがたかい! よわいヤツからねらうとか、クソゲーだーーーーっ!」


 ドラゴンにねらわれているが、たすけはこない!

 さけびはむなしくこだまする。


「こんなの……たおせんのか? おおきさに、さがありすぎる……」


 ドラゴンはなかまをよんだ。

 あらたなドラゴンがあらわれた!

 あらたなドラゴンがあらわれた!!

 あらたなドラゴンがあらわれた!!!


「なんかふえた! ──やっぱりこっちみてる!」


 たたかう

 まほう

 どうぐ

 →にげる


 れいとはナニカにつまずいた。

 あっ、これはしんだね。


 ──トゥルトゥルトゥル、トゥルットゥ──



 俺はまだ、この王の使いの服に慣れていない。

 この服さ、ズボンの裾がなんでだか長いんだ。

 だからだろう。普段は絶対ないんだが、何もないところで転ぶ。自分のズボンの裾を自分で踏んづけた。


 そんな俺にドラゴンが迫る。何故だか、ドラゴンたちは俺を集中的に狙ってくるんだ。

 俺は前世でドラゴンに何かしてしまったんだろうか? ドラゴンバスターだったとかだろうか?


「──そうだ! 城の機能。ラピ○タの雷を使って! あれならドラゴンだって倒せる! 撃て、撃ってーー!」


 もちろん城にそんな機能はないだろう。単なるヤケクソだ。だって死にそうなんだもの。ヤケクソにもなるよ。

 ただ、浮いている城の一番下の穴から、本当に何かが射出された。『本当にラピ○タの雷かよ……』そう思ったけど違った。


 城から飛び出した急速に迫る何かが、ドラゴンに激突した。その何かは、片足をドラゴンの頭に叩きつけたのだ。というか、蹴った……。


「──たかがトカゲの10匹くらい楽に倒しなさいよ! 平和ボケはいいことだけど、少し怠けすぎなんじゃなくて!」


 ドラゴンの溢れる戦場にお姫様が降臨した!

 お姫様は落下の一撃でドラゴンの脳天を揺らし、モロに入ったドラゴンの一体は目を回している。


「──さっさと仕留める!」


 兵士たちはおろか、おっさんたちですらビビる覇気。あの王様の娘なだけはある。ボクもこわいです……。


「次々、倒しなさい! 訓練はしているでしょう!」


 こうして1体だけドラゴンをやっつけた。

 しかし、お姫様の鼓舞により。実際は鬼のような上官の出現によりか。兵士たち一同は奮起し、バタバタとドラゴンを倒していく。


「お姫様。怖かったよーーっ! みんなドラゴンに夢中で、俺なんて放置だったんだよ? 死ぬかと思ったよーー!」


「──どこにくっついてんのよ! 鼻水つくから顔つけないで!」


 動きの良くなってきた兵士たちと、おっさんたちにドラゴンを任せ、お姫様は戦闘の範囲外まで、自分にしがみつく俺をそのまま引きずっていく。


「ねぇ、俺を守って! か弱い俺を守って!」


「普通は逆よね?」


「あんなのと戦えるか! 2秒で死ぬわ!」


「だったら、なんで来たのよ。見直したのは間違いだった……」


 しがみつく体勢から雑に払いのけられて転がる俺。

 ドラゴンを倒すパワーを秘めている姫の一撃からは程遠い、クソ弱い一撃でもこの威力! 気をつけよう。


「キミたちがトカゲだって言ったからだよ? 全然、トカゲじゃなかったけどね」


「はいはい。邪魔になるからもっと下がってましょうねー」


 そのあとはドラゴンが倒されるまで、隅っこに隠れていました。次からはトカゲの有無。生き物の有無も確実に確認します。

 異世界に付き合っていたら、命はいくつあっても足りないのだと知りました。


 あとプロデューサーの鼓舞より、お姫様の鼓舞の方が効果が高い!みんな、いいところをお姫様に見せようと奮闘していました。

 お前ら、どんだけお姫様大好きなんだよ。そう思いました。



 ※



 実に厳しい戦いだった。

 しかし、ドラゴンは全滅して、あとはサトウキビっぽい、砂糖の材料を確保するだけだ。

 現在、戦闘の後処理が行われている。先に進むのには、もう少し時間がかかるだろう。


「……──!」


 それで何もすることがない俺は、倒れているドラゴンを見ていて、とてもスゴいことを思いついてしまった。

 これはスゴいぞ! 実行する価値がある!


「ちょっとだけそれ貸して? うん、ありがとう。で、お願いもあるんだ。俺が『いいよ』って言ったら、このボタンを押して。画面の中にトカゲと俺が入るように……このくらいの位置で頼む。おっも……これ重い……」


 ドラゴンの近くにいた、おっさんの1人からある物を借りる。で、代わりに渡した物の使い方を説明して、ベストポジションを計算して、倒れているドラゴンによじ登る。

 借りたやつがとても重いが、ドラゴンがゴツゴツしているので、持って登れないことはない。30キロの米くらいの重さがあるがなんとかなった!


 よ、よし。ここがいい。ここで剣を掲げて……──重っ! こんなの片手で振り回すとか、やっぱり脳筋すぎる。


「い、いいよ。早くして……」


 合図をするとパシャリと音がする。

 1枚では不安だったので、ポーズを変え、ポジションを変え、複数撮影していく。

 ある程度の数を撮ったところで、剣を持っているのも辛くなったので、撮影を終了する。


「どう、上手く撮れた? これは映える! あとでアップしよう。ありがとう!」


 ドラゴン討伐写真の撮影に成功した! スゲェ!

 ……ねつ造? ちょっと何を言ってるのか分からない。画像が全てだよ。


「ずいぶん余裕ね。役立たずのプロデューサーさん」


「本当のこと言わないで」


「遊んでんじゃないわよ。あんた、何をしにきたの? 早くしないと日が暮れるわよ?」


「──そうだった! みんな急いで! 急いでサトウキビっぽいやつ収穫して!」


 ドラゴンの衝撃で忘れてた! 別にドラゴン装備を作りに来たわけではなかったんだった!

 いや、本当に作ろうか? ドラゴン装備。それに、食べられるんじゃないだろうか……。ドラゴン。


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