第一話
今までが順調すぎたのかもしれない。
わたしは泣き止まない熱くて小さな体を腕に抱き、ぼんやりと揺れるカーテンを見ていた。
春の風は心地よさげに白いレースのカーテンを揺らしている。
ほんのり眠たくなる春の午後。
わたしは強烈な睡魔と戦いながら、泣き止まない赤子をあやしている。
新しい家具や家電が並ぶこの家に、いまはわたしとこの子しかいない。
わたしの頭は睡眠不足で、まったく役割を果たしてくれていないけれど、この赤子を死なせないようにしなければ、という呪いで動かされている。
……呪い?
いや。いつから呪いになったのか?
わたしはこの子を愛している。
この子が出来て嬉しかったし、つわりや出産時の痛みは苦しいなんてものではなかったけれど、欲しくて欲しくて授かった子だ。
なのに……わたしは、いま何故に呪いといったのか?
睡眠不足と産後の悪露、強烈な痛みが体の奥にあるのを感じるけれど、この子への愛おしさが痛みを曖昧に散らしていく。
なのに何故いま呪いと思ったのだろうか、わたしは。
頭がズキズキする。
我が子は泣き止まない。
そしてわたしはひとり、赤子を抱いて家にいる。
この物語はわたし、望月祥子が幼馴染の川島優太と夫婦になって子どもを作り、家族になっていく物語だ。




