ep041.『少年と少女』
憑姫が去った後、恩恵を解いた宗は一人呟く。
「嫌な貸しを作ったな……」
憑姫の行動を鑑みるに彼女は敵ではない。少なくとも今は。
しかし、憑神遊戯に身を置きながら"願い"ではない他の何かを優先している時点で、その先が厄介事であることは分かり切っている。
――探偵に探らせるか……いや、リスクの方が大きい。やるとしても後か。
予想の埒外から生えてきた目の上のたんこぶに宗は頭を抱える。
如何せん、考慮しなければならないことが多い。
自身の"願い"はもちろんのこと、妹、ラビットフットの"願い"、代行者、異形、神童、呪い、探偵社との協力関係、強者の憑神、管理者……。
そこに憑姫が乗るとなると、お面を着けていなければ眉間を摘まんでいるところだ。
「狐……?」
「体に異常はないか?」
存外に早く目を覚ました兎の未だふらふらと覚束ない体を支えてやる。
「うん……大丈夫、ありがと」
美雪は知らぬ間に着せられていたパーカーに困惑しながらも、宗の手を借りてゆるゆると力なく上体を起こした。
「相変わらずの回復力だな」
宗の目で見る限り内にも外にも活動に支障の出るレベルの傷は見当たらない。しかしその代わりに、肉体以外の状態は芳しいとはいえなかった。
――休息が必要だな。
美雪は恩恵による超回復の影響で相応の精神力――もとい霊力を著しく消耗していた。
恐らく今の彼女は、凄まじい疲労感と体調不良を感じているだろう。
「憑、姫は……? はぁ、はぁ、倒したの……?」
だというのに、疲労を押して憑代の頭巾を被ろうとするのだから困りものだ。
「必要ない」
狐面の裏に隠れた顔色を伺うようにしながら、それでいて不調を隠す野生動物のように振舞う少女の手を抑える。
気合気力だけでここまで動けるのは素直に称賛に値するが、もう少しクールに立ち回ってほしいと思わなくもない。
「――? わかった」
確かに、まだ敵がいるかもしれないと警戒するのは悪くない。でもだとしたらこんな開けた場所で宗が恩恵を解除するはずがない。
とはいえだ、今の疲れ切った少女に求めることではない。立ち回りもそうだが、足りないものを磨いている時間がない以上、そこを補うのが宗の役目の一つなのだから。
「一先ず状況確認だ」
そういって一人は淡々と、一人は重苦しく戦いの結果について話し始めた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
「気がかりなのはマフィア連中くらいだ。そっちはどうだった」
宗の報告の後、美雪は事の顛末を訥々と語った。
狂信者の待ち伏せにあったこと
落憑たちを逃がし、一人時間稼ぎを買って出たこと
宗と連絡が取れなかったこと
今回を逃せば後がないというプレッシャーから無理をした結果、狂信者に遅れを取ってしまったこと。
そして、結界に阻まれた宗の到着が遅れたことも合わさり、あわや願いが潰える縁まで追い詰められた美雪だったが、突然現れた憑姫が窮地を打破してくれたのだと。
「だから、魂はとれなかった……」
報告はそこで終わり、少女は合わせるかをがないと言わんばかりに座り込んでしまった。
「そうか」
そんな彼女を前に、宗は言葉少なに答える。
迷っている時を除いて基本的には言い淀むことのない美雪が、妙に歯切れが悪いのは何か思うところがあるからだと思ったからだ。
「ごめん……」
「何故謝る? お前の役割は時間稼ぎで、イレギュラーがあったことも考慮すればお前は十二分に役目を果たしている」
確かに、撤退が優先ではあったが、こと今回の件で美雪に落ち度はない。
狂信者の恩恵がなんであるか、宗と美雪はもちろん探偵ですら知らなかったのだから、こうなることも仕方がないというものだ。むしろ、多少無理を通してでも結果が必要だった宗たちにとって、彼女の頑張りはとても大きなものになった。そこに感謝こそあれど、責める謂れなど毛頭ない。
「でも、狐にはたくさんの魂が必要だって――」
「収集の目途は立ってる。そしてそれは今じゃない。難しい状況だったにも関わらず代行者を始末できたのはお前のお陰だ」
「倒したのは憑姫だけどね……」
「だとしてもだ。憑姫がくるまでお前が代行者を足止めしていなければ、この結果はあり得なかった」
狂信者を倒したのは確かに憑姫だ。だが彼女はもともとそのつもりで来たのではなく、目的に異物が割り込んできたから排除したに過ぎない。
美雪がその身を危険に晒してまで足掻いていなければ、ここで代行者の一角を落とすことはできなかった。それは、紛れもなく美雪自身の功績によるものである。
「でも、魂を得られるに越したことはないでしょ……?」
「無論そうだが、時と場合が大前提だ。代行者については始末さえ出来ればいい」
教義上、代行者は魂を保有していないことの方が多い。
仮に狂信者が魂を消費するタイプの恩恵で、事前にそれなりの魂を持ってきていたとしても、ラビットフットと憑姫、その両方と相対したとなれば宗が来る頃にはどのみち空になっていただろう。
故に解魂衆の残党を合わせても得られる魂などたかが知れていた。そんな取るに足らない魂より美雪を失わずに代行者を倒せたことの方が大いに価値がある。
「狐は、恩恵を温存して魂を集めるために私と協力したんだよね……? 代行者狩りだって異形を倒すためのものでしょ? 私なんかと手を組まなければ、無駄に恩恵を使うことも、割に合わない代行者と戦う必要もなかった。なのに私は、狐の期待するような事ができてない……」
美雪の考えは半分当たりで半分外れていた。
宗の目標にはフェーズがある。その過程で、代行者や異形にかかわらず多くの憑神と接触することになる。要は早いか遅いかの差で、下振れたとしても少々立ち回り難くなる程度の変化しかない。
そして期待について言及するのなら――そもそも期待していないというのが答えになる。
出来ることはできるし出来ないことはできない。他人には出来ることしか求めない。というか求めた事ができなければ、それは求めた側の想定に落ち度があっただけの話だ。しかし、それらのことを言葉少なに伝えることは難しい。
――少しは腹を割らなければ、か……。
致し方なしと、宗は美雪の隣に座り話を始める。
「確かにお前の言う通り、俺側のメリットは恩恵を使わずに魂を集めることだ。だが魂の量だけなら協力関係を築く前から目算は立ってる。いや、お前からの魂の譲渡も充てにはしているんだが、メインはお前以上の魂を保有している異形のような奴らから奪うことだ。恩恵の温存についても、そいつらと戦えるだけの余力があれば問題ない。当然、その余力は常に残すようにしている」
宗には倒さなければならない敵がいる。
そいつらは総じて多くの魂を持っていて、恐らくそのほとんどは美雪の保有量を大幅に上回っている。何せ、やつらには魂の使い道がないのだから。
「そしてだ。『手を組まなければ』と言うが、お前の情報は傍観者に高い代価を払ってまで手に入れたものだ。もちろんそれだけの価値があると判断してな。そして実際、傍観者の噂に間違いはなかったと、俺は思っている」
「――……」
「要するにお前の替えはない。お前ほど俺と相性が良い奴がいないというのもそうだが、時間的に鞍替えしている余裕がないというのもある。俺もまた今さら引き返せない所まで来ているということだ」
協力関係になってからというもの、他人とベラベラ喋ることにも慣れたきた。
恥的生命体といい探偵社といい、コミュニケーションエラーばかりだが、この少女とはそれなりに話せているような気がする。まぁそれも落憑の一件だけのような気もするが、それこそ気にしても仕方ない。
「狐は強い。あの牛の化け物を倒してもけろりとしてるんだから。私のことなんていつでも殺せる。だから私は、私の価値を証明しなきゃダメなのに……」
彼女がなぜそんなにも思いつめているのか少しだけ見えてきた。
別に彼女は価値の証明しかないと思い込んでいるわけでもなければ、メンヘラを拗らせているわけでもない。
「正直、いっそこの命を――魂をあげるから異形を倒してって、あんたにお願いするほうがいいんじゃないかなって思ってる私もいるの」
そもそも、すべてを賭けると決めた"願い"――その生殺与奪権を他人が握っているという時点で、大小なりとも不安があったはずなのだ。そこに赫腕、狂信者、憑姫と、相次いで高い壁が立ち塞がった。
「私が死ぬのは良いの、弟さえ助かればそれで……でも、このまま期待に沿えなかったら、もし見限られたら、私の願いも一緒に切り捨てられちゃう……」
ただでさえ完璧主義のきらいがある彼女が、不安を抱えた状態で立て続けに無力を突きつけられれば打ちのめされもしよう。今回のこれは、真実すら知らない少女が思いつめるには十分過ぎる不条理が重なったというだけの話でしかない。
「その未来を想像すると……怖い」
そう言って少女は、恐ろしい未来から目を背けるようにして膝に顔を埋めた。
――重症だな。
「言っただろ、恩恵を使わずに魂を得ることの方が重要だと。故にお前一人程度の魂で俺が一々殺してやると思うな。そんなことよりもお前との協力関係の方が遥かに期待値が高い。魂の面だけで見れば代行者は確かに割に合わない。が、メリットならある。今までやらなかったのは単純に、俺一人では時間が足りなかったからだ」
「そう、なんだ……」
納得はできないが今は飲み込んだ。そんな雰囲気を漂わせている。
そこまで都合の良い話があるのかと言われてしまえば、なるほどのその通りだろう。強者の願いが重なることなど無いに等しいというのに、そこまでの道筋がこうも合致するのは、もはや計算や計画の範疇を超えている。
これもひとえに傍観者という存在が成した偉業なのだが、問題は彼の存在を知らない美雪をどう納得させるかだ。
――……ここまで話す気はなかったんだがな。
「察しているだろうが、俺の”願い”には莫大な魂が必要だ。それはそこらの憑神を狩ってどうこうなるレベルの話じゃない。故に避けては通れない存在がいる。そしてそいつらを倒すためにはそれ相応の余力が必要になる」
憑神遊戯に極少数存在する本物の憑神と称される者達。
恩恵を使い続けることで体が憑代に馴染み、強力な認識阻害を得ると同時に霊力の消費なしに恩恵を使えるようになった存在。
しかし、宗が相対すべきはそれよりも高みにいる。
「言わば余力のための憑神狩りだ。だが俺一人では相性の悪い憑神を狩るのに時間がかかり過ぎる。挙句に代行者に横取りされることもあった。だから傍観者を使ってまでお前を探したんだ。お陰で代行者を排除する時間ができただけじゃなく、狩りの効率も上がった」
「そうだったんだ……」
未だに納得がいかないといった様子の美雪。
それはそうだ。傍観者なんて都市伝説に会ったこともなければ、今この場で美雪を言い含めるために宗が適当に言葉を合わせているだけという可能性も否定できない。
「ああ、だからだ……お前の協力を得られるなら異形の一度くらい、無理を通しても構わん」
「本当に……私でいいの?」
しかしこればかりは当人の考え方なので、これ以上あれこれ言うこともできない。
「何度も言わせるな。俺たちは既に表裏一体にある。念話が気持ち悪かろうが、性格が気に入らなかろうがムカつこうが、進むしかない……互いにな」
「互いにね」
何が理由かはわからない。が、心なしか先ほどより落ち着いた様子の少女を見て、もう大丈夫だろうと判断する。
あとは事後処理というか、今回を期に妙な距離感にならいようにフォローを入れるくらいでいい。
「言っておくが中途半端でも"願い"に挑むことはできる。お前が裏切った場合はお前を殺して恩恵の続く限り手を伸ばすまでだ。そうなれば成功率は低い。だから間違っても敵対するなよ」
「脅さなくてもわかってるわよ。間違っても敵にならないではこっちのセリフだし」
調子もいつもの感じに戻ってきた。
望むらくは彼女が付けた折り合いの中に敵対と無謀がないことだが、敵対は心情的に、何より力関係と利害の面から取り立てて気にするほどでもない。
強いて言えば、頑張り過ぎる性格が災いしないことを祈るばかりだ。
――何に祈ればいいんだろうな。
「……ようやく調子を戻したかまったく。なら最後に一言だ――甘えるな」
「うっ、甘えようと思って甘えたわけじゃ……」
自嘲にも等しい宗の内心はさておき、この状況に甘えていた自覚があるようで何よりだ。
これは友人ごっこでもなければビジネスの関係でもない。最もシビアな関係性の中で相手を頼り過ぎるというのは、お互いとって受け入れがたい不利益を生む。
そしてそれは、憑神遊戯では死よりも恐ろしい結果を招くことになる。
――『……お姉ちゃん』。
宗の脳裏に浮かんだのは"願い"を目前に命を散らした一人の憑神。
彼女の魂を喰らって宗が感じたものは、例えようのない後悔だった。
命を賭し、他者を殺してまで"願い"に手を伸ばそうとする者の魂は重みが違う。あれ以来宗は後悔を忌避するようになった。それほどに強烈な想いというのはこびりついて離れない。
後悔は消えない。やり直すこともできない。
確かな後悔からは生涯逃げることはできない。
そんなものは絶対に避けるべきだ。
「何に代えても叶えると誓ったんだろ? 俺を喰らってでも叶えるくらいの気概を持て。自分の目で結末を見届けるまでは思いつめてる暇などないだろ」
だからこそ己の内に信念を建て、その石碑に覚悟を刻むのだ。
何があってもあちら側になるわけにはいかない。
「うん、そうだよね。唯でさえ他人に叶えて貰おうとしてるのに、見届けるまで手を抜いたらダメだよね……よしっ!」
勢い良く立ち上がった少女はふらつくこともなく、無理しているだろうともその立ち姿には不思議と安心感にも似た力強さがあった。
――ようやく納得したか。
「狐の本当の名前――教えて」
と、安心したのも束の間。どうやらフォローの甲斐虚しく、またぞろ勿忘兎が正気を疑う戯言をほざきはじめた。
「なぜそうなる。教える気はないと言ったはずだ」
「私が狐を裏切らないため」
それで裏切らないと言われても保証はないし、むしろ名前一つで協力関係が崩れるような奴では困る。
しかしながら、常人とは、名前を教えてくれるかどうかで警戒レベルが変わる生き物だ。憑神遊戯に参加している女子高生が、果たして常人や常識的という定義に当てはまるかは議論の余地があるとして、この少女が"願い"のためになら自身の価値観を理性で捻じ曲げられる人物だというのはわかった。
――本来の価値観は、とことん憑神遊戯に向いていないんだろうな。
「はぁ、適切な距離感というものがあるだろ……」
「裏切らないためって言ったけど、私が迷わないためでもあるの。効率がいい方が狐のためにもなるでしょ?」
食い下がりはしたものの、そう返されてしまえば否定しにくい。理由も彼女本人の考え方に由来するものとくれば尚更だ。
「互いに入れこまない。それが条件だ」
「わかった」
名前一つで迷いが晴れ、心情的な面でも協力に前向きになるというならここで変に意固地になるべきではない。それこそ今までの言葉が美雪を言い含めるための方便だったと思われるだろう。
ある程度腹を割って話した手前仕方ない――そう腹を括った宗が名を名乗ろうとしたとき、
「じゃあ、改めて自己紹介しよっか」
「――? 必要ないが?」
不幸は重なるというが、珍事もまた重なるらしい。ついでに愚行も。
落憑たちの時に自己紹介ほど無駄な事はないと言っていたのをもう忘れたというのか。
「ほーら!」
しかし勢いづいたウサギは猪もかくやと留まることを知らないらしい。
ぐいぐいと引っ張られ、遂には無理やりに立たされる。
「私は月野美雪」
――この際、致命的な情報だけ避ければいいか……。
「ほらほら、狐の番だよ?」
「はぁ……宗だ」
憑神遊戯の中で、できるだけ効率的にと考えてきた宗だが、ことこのウサギとのコミュニケーションにおいてはそれが最も非効率らしい。
そう結論付けた宗は会話のコントロールを諦め、今回はウサギに流されるままに実を任せることにした。
「――御神 宗、でいいの?」
「姓はない。妹は徒人だが俺には憑神遊戯がある。そういうことだ」
憑神遊戯に参加できない妹は御神家の養子に入ったが、そうでない宗に苗字は必要なかった。
どの道、過去の血筋は宗を以って絶える。宿願に殉じた一族だというのなら、願いに届いても届かなくても、その先の役割は存在しない。だとしたら宗は宗でいいのだ。
「そうなんだ。まぁ、苗字が変わることなんて珍しくもないもんね。それに、下の名前の方がその人って感じがするし、それを聞けたから私としては満足かな」
調子が戻ったのは良いが、戻り過ぎて幼児退行――まではいかないが、ほのぼのとし過ぎだと思うのは宗の気のせいだろうか。
――いや、女子高生とはこういうものか。
いつかの恥的生命体を思い出して、宗は自分の理性に納得をこじつける。
「一応確認するが、呪いが残ってて変な意識が働いてるんじゃないだろうな? だとしたら自分を憐れんだ方がいいぞ」
「ていっ!」
――ポスッ。
「――……」
気のない蹴り。しかしその軌跡と狙いは完璧で、寸分違わず宗の内太腿を捉える。
「言ったよね? その話をしたら蹴るって」
いきなり何の真似かと思えば、そういえばそんな話もあったなと思い出した。
ガレージの時と合わせてこれで三回目。当然三回目にはラビットキックが飛んでくるのだろうと想定していただけに、幸運というか、拍子抜けというか、何とも安い蹴りだった。
「呪いじゃなくて、ちゃんと私自身の気持ちだから……誰にも言わないし、口にも出さない。ただ、どうしても知りたかっただけなの」
気恥ずかしそうにフードを被りながら、少しだけ歩を進める美雪。
しばらく沈黙が続いた後、彼女は迷いを断ち切るようにこう言った。
「私、宗を信じてみる」
月を見上げる少女の横顔は、フードに隠れていて見えない。
ただ、僅かに見える口元が後ろ向きなものではなかったから、それだけわかれば十分だった。
「だからさ、私の願い――」
夜風になびき、するりとはだけたフードからあでやかな黒髪が広がる。
それはいつかの、浮世離れした天華のような憑神に目を奪われたときのことを思い出させる。しかし、宗には目の前の少女にも同じだけの眩しさあるような気がした。
――俺には……ないものだな。
殺伐とした殺し合いの中で"願い"のために己を研ぎ澄ます。それでもなお心を失わずにいられる強さ。その在り方としての強さを柄にもなく羨ましいと思ってしまった。
「ちゃんと叶えてね?」
美雪が振り返る。
思えば、彼女の笑顔を見たのはこれが初めてだろうか。
月光に濡れたその微笑は、宗には少し眩しすぎるくらいだった。
――"願い"のためなら何でもして見せろ。そう言ったのは俺だろ。
憑神遊戯で協力関係を続ける上で、互いの感情はきっとよくないものなのだろう。
だがそれでも構わない。二人の意思など関係なく終わりは来る。ならば、無責任だろうと人でなしだろうと宗は己が"願い"に突き進むのみだ。
「ああ、そういう約束だからな」
少女が少年を信じると決めた夜、少年もまたどんな痛みを伴っても"願い"を叶えると、覚悟を新たにしたのだった。
これにて二章終了となります。
更新の遅い拙作にお時間いただきありがとうございました。
残すは閑話と幕間が恐らく各一話ずつ。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
本編は三章からスタートします。
どうぞ今後とも、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。




