93泊目 サキュバス一掃作戦!
「シュリ様……!!」
倒れていたサキュバスはいつの間にか目を覚まし、ドアの向こうに立つ気配の正体に向かって、絞り出すような声を発した。
ドアを越え、入ってきたのは今までに見てきたサキュバスとは全く桁違いのオーラと殺気を纏う和装のサキュバスだった。
「おお、可愛い儂の子よ……。狼藉を働いているクズ共というのはこやつらか?」
シュリ様と呼ばれたサキュバスは、俺たちを一瞥し、なめるように観察をすると鬼のような剣幕で怒鳴りつける。
「許せん! 貴様ら、其処に直れ! 儂が直々に成敗してやるッ!!!!」
すると、目を開けて立っていることもやっとの強い風が部屋の中に吹き荒れた!
「くっ……。ヤベェぜ、この風の中じゃあ動くこともままならねぇ…! ニュウ嬢ちゃん、いけるか?」
「この状況で……っ、魔力が奔流してしまっていますわ……! 魔法も厳しいかもしれませんわね……!」
「そうは言っても、武器での攻撃も厳しいよ……っ! きゃあっ!!!!」
あまりの激しさに竜巻のように強大となった突風は、ミュウの体制を崩す。
身動きが取れないまま、シュリと一触即発の睨み合いが続く。
この状況を打破しない限り、ゲストハウスごと破壊されてしまう……!! どうする……!?
玩具が右往左往するのを見て喜ぶ残酷な子供のように、シュリはこちらを見ながら不敵な笑みを浮かべている。
このままでは全員がサキュバスの手に堕ちてしまう。それだけは許せない……!
どうにか拳や蹴りを入れて、この風を止めてやろう。そう思い、足を一歩踏み出したその時、風がぴたりとやんだ。
今がチャンス! と、床を蹴った直後、俺たちは絶望的な景色を目にする。
「やっほー!!」
「なにここ、狭い〜!!!!」
「お呼びですか?」
「人間はどこにいるのかな?」
「お腹ぺこぺこだよ〜」
「狭っ苦しい場所だな、おい」
「シュリ様ぁ……♡」
ドアの向こうからたくさんのサキュバスたちが顔をのぞかせている……!
「ま、待ってください……! こんな大量のサキュバス、私たちだけじゃ相手できるかどうか……!」
エルが涙声でそう漏らすと、完全回復したらしい最初に出会ったサキュバスがふふん、と鼻を鳴らして得意げに言う。
「ねえ、ヴァロールの巣にあったワープポータル覚えてるぅ? 貴方たち、それ、勝手に使ったでしょう? あのポータルを設置したのは私よ♡ で、そこにサキュバス族以外の魔力の形跡があったから、魔力の流れを辿って同じポータルをこのお家にも繋げたってわけ。そしたらビンゴ! 可愛い可愛い卵ちゃんの誘拐犯のお家でした〜♡ 貴方たちがポータルを使わなければ、まだ命日はのびたかもね。ざんね〜ん」
まさか、軽い気持ちで使ったあのポータルと、軽い気持ちで持ち帰った卵のせいでこんな窮地に立たされようとは……!
今、武器を持っているのはミュウ。そして魔法を使えるのはニュウとエル。俺とオイゲンは武器を持たずに部屋を飛び出してしまったため、素手の攻撃手段しかない。
周りを見る限り、下級のサキュバスがざっと30匹ほど。そして、ボスであるシュリが一人。このままでは万に一つも勝ち目はない。
「めちゃくちゃにヤバい状況だけど、やらなきゃやられるよね……! 私がまず雑魚たちを惹きつけるから、みんなはボスをお願い!」
「ええ、禁魔の建物であっても今回ばかりはお許しを。僕の魔法で全員のしてあげますわ」
「俺様の脚と拳、きちんと動いてくれよ? 寝起きにいっちょ、運動と洒落込みますか!」
「私は皆さんをフォローする補助魔法を発動させますっ!!」
ゲストハウスの仲間たちに続いて俺も拳を構えつつ、戦闘態勢を取った。
サキュバス一掃作戦の開始だ!!!!




