86泊目 また夢の中へと
卓上の料理を全て平げ、デザートまで存分に楽しんだ俺たちは、紅茶を手に談話室に集った。
「そういえばさ、エルちゃんはお目当てのものを無事手に入れたじゃん? それ、何に使うの?」
ミュウが興味津々、といった様子でエルに訊く。
「それは……。多分、もうすぐどういうことか皆さんにお伝えできると思います! まぁ、失敗しなければ、ですけど……。それまでもうちょっとだけ待ってください」
「ふんふん、何かの魔法に必要、ってことなのかな? 何かまた手伝えることがあったら言ってね!」
「はいっ! ありがとうございます! 絶対、成功してみせます……!」
二人のやりとりを見守ったあと、俺はクロエに向き合う。
「クロエ、留守を頼んでいる間に何か問題とかはなかったか?」
「うん! 平和中の平和〜。お客様もおらんし、時間も何も起きんし、なんなら暇すぎてそれが1番の大問題、って感じやったわぁ〜」
「そうか、それなら良かった!……冷蔵庫の中の食料がごっそりと無くなっているのは俺にとっては大事件なんだが?」
「え〜〜?? それは大変やなぁ、ウチ、知ーらないっと!」
そう言いながらクロエは自分の分のカップを下げる、と言ってキッチンの方へと向かっていった。
まったく、大食らいがいると食費もバカにならないなぁ。
久しぶりの和やかな談笑を楽しんでいると、時計の針はもう23時半を示していた。
そろそろ寝る支度をして、明日からのゲストハウス業務に備えるとしよう。
業務ができなかった数日の穴を埋めるには、いつもより少しだけ慌ただしく動かなければいけなくなりそうだ。
俺はみんなに声をかけ、先に寝室へと戻ることにした。




