84泊目 うねうね
「いや、ちょっと待て……? コレは一体どういうつもりだ……??」
全員が言葉を失って呆然としている中、俺はオイゲンに尋ねた。
「ん? 見たまんまだが? こいつはこのちょっと辛めのソースとオイルに絡めていただくと美味いんだ! ま、ちょっとばかし食べにくいかもしれないが、新鮮なんだから仕方ないさ。そこは各々頑張って口に放り込んでくれ! ほれ、食ってみろって!」
目の前に置かれた料理。それはまさに俺たちの想像を絶するものだった。
大皿の中ではアイ・デューサの触手がうねうねと動き回っている。皿をはみ出してどこかへと逃亡する触手もあるくらいの元気さだ。
「え〜、これはアレ? 活け造りっちゅーヤツ? ウチ、初めて見た〜!! これこのまま食べれるん? おもろいなぁ〜! あはは、元気によう動いてんね〜」
「え〜っと、クロエ? これ、平気なの……?」
あまりにも新鮮すぎるアイ・デューサを目の前にしてひとりはしゃいでいるクロエに、ミュウが信じられない、と言った声色で尋ねる。
「え? うん、新鮮でなかなか美味しそうやないの〜。ミュウたちもダンジョンでこれくらい新鮮なのを食べまくっとったんやろ? ほんま、羨ましいわぁ〜」
そう言いながらクロエは未だに動きを弱めない触手にフォークを伸ばし、何の躊躇いもなく口に入れる!
「……うんっ! プリプリコリコリしてて美味しい〜!! 噛めば噛むほど甘みが出てくる! デビルフィッシュみたいな見た目しとるけど、味はこっちの方が濃厚やんなぁ。何もつけなくてもこんなにしっかりとした甘みがあるんやねぇ、ウチ、これきにいったわぁ! やっぱ、食材は新鮮なもんを食べるのが1番やね〜」
少しも臆することなく次々とアイ・デューサを食べていくクロエ。
魔物料理に慣れた他のメンバーですら意表を突かれたこの料理を前にしても美味しそうに食べるその表情には、恐怖すら感じてしまう……。
「んん? 皆どないしたん? 食べへんの? ウチとオイゲンで全部食べてまうで〜」
呆然と動く触手を眺めていると、いつの間にかオイゲンも食卓に座ってアイ・デューサを食べていた。
「いや美味い! やはり瞬間冷凍は正義だな! まさかここまで新鮮なままだとは思ってなかったぜ! コイツはホント活け造りに合うなあ。ホラ、お前らもぼーっとしてないではよ食え! 新鮮さってのはなぁ、卓に並べた瞬間からどんどん落ちていくんだぞ!」
「そ、そうですよね……! 何事も挑戦です! 魔物を初めて食べた時も美味しかったし、大丈夫大丈夫……」
エルは自分に言い聞かせるように大丈夫大丈夫、と唱えながら勇気を奮い立たせているようだ。
そして、目を硬く閉じながらアイ・デューサの触手を口の中に放り込むと……。




