64泊目 「大丈夫、って言葉は5割大丈夫じゃないのよー!!」
「何だ、何が起こった!? みんな、無事か……!?」
激しい耳鳴りの中、出来る限りの大声で叫ぶと遠くの方からぼんやりと仲間達の声が聞こえた。
それに混じり、近くで巨大な何かが倒れる音と、それと同時に
「わぁっ……!!」
という短いエルの叫びも聞こえてきた。
「エル! 無事なのか!? 無事なら返事をしてくれ! くそっ……どうなってる!?」
目の前はまだ白い光に包まれていて、何も見えない。その上、耳鳴りも未だ治まりそうにない。
何が起きているのかがわからないまま、必死に声を張り上げる。
「……ユートさん! そちらは無事ですか!? 私なら大丈夫です! 無事です! ヴァロールからも解放されました!」
エルの声が薄くと聞こえてきた途端、安堵感から一瞬張り詰めていた気が解けた。
けれど、状況が全くわからない今、油断は即命取りとなる。
俺はパンッ! と音を立てて自分の頬を強く叩き、そして目をこする。
少しずつ白い光が晴れてきて周りをなんとか認識できるようになってきた。
そしてまず、近くで横たわっているエルが目に飛び込んでくる。
「おい、エル! 大丈夫か!? 動けるか!?」
俺は即座にエルに駆け寄り、その身体を支える。
「ーーッ!! すみません。元気、なんですが、ちょっと骨をやっちゃったみたい……ですね」
俺の顔を見てエルは無理矢理作ったような笑顔で微笑むが、その表情はとても苦しそうだ。
ひとまず命の心配はなさそうだが、それでも重症なのには変わりない。
いつまでも魔物やヴァロールが生息しているここにいるわけにもいかず、まずは全員で撤退をすることが最重要課題だ。




