62泊目 そして君たちが出会うのは
「それじゃあ、祭壇を確認させていただくとしますか……っと!」
三体のヴァロールを倒し、守護者がいなくなった祭壇を細かくチェックする。
金目のものはもちろん、何か珍しいお宝がないか確認する作業は、ダンジョン探索で1番心躍る瞬間と言っても過言ではない。
宝石や貴金属、武器として使えそうなナイフ、呪術師へ売れば高値が付く呪い具、生命力を高めるソーマに兎雪獣の上質な毛皮、蒐集家垂涎のヴァロール族が崇める石板……。
そこに乗せられていたお宝たちはどれも一級品で、相当な価値があるシロモノだった。
そして、中央に恭しく祀られていた紫色の球体と金色のゴブレット。
球体の発光は弱まることがなく輝き、ゴブレットの中には液体とも固形とも言い難いゼラチン質の何かがたっぷりと入っている。
どちらかがエルが求めているであろうアイテムだと言うことはわかる。
俺はエルに話しかけようとして後ろを振り向いたその時ーーーー
危ない! と声が出るより先に、紫色の閃光が目の前を疾風の如く走る!
そして閃光は今までとは比べ物にならないくらい巨大なヴァロールに命中し、消えた。
「グ……ガァァァァァァァァァァッ!」
それと同時に、ヴァロールは大きな雄叫びをあげ、その雄叫びにより物凄い風圧が俺たちを襲った!
「くっ……ダメ。全然歯が立ちませんわ……!」
ヴァロールに手を掲げながら、ニュウが歯を食いしばる。さっきの閃光を発したのはニュウによる魔法だ。
「こんな……おっきい……ヴァロールのボス……?」
腕で風圧をガードしながら、ミュウは絞り出すように声を出す。
今、俺たちの前方にいるのはかなり巨大なヴァロールだ。恐らく、群れの主……と言ったところだろう。
雄叫びにより巻き上げられた風で姿を確認しにくくなってはいるが、今まで倒してきたヴァロールの二倍はある。
今は向こうもこちらを警戒して遠くの方から睨みを効かせてきているが、アイツに攻撃をされたらひとたまりもないだろう。
俺たちがまともにやり合って勝てる相手ではない、と本能が身体全身に訴えかけてくる……!!
間合いを詰めることもできず、背中にびっしりと汗をかく。
どうにかしなければ、とは思うが、どうする、どうする、と頭の中で回るだけだ。




