51泊目 突撃!となりの魔物ごはん!
「これ、本当にアイ・デューサの触手なの? なんか、イカフライと同じ食感……! 味も美味しい! あっさりしてるのにちゃんと旨味があるっていうか……。ソースとかを付けなくても味がついてて美味しいフライって新鮮ー!! 持ち歩きにも便利だね、これならバトル中にも食べられそうー!」
大量に揚げられたアイ・デューサの触手フライは、ミュウの前に出しておくと全て平らげられそうだ。
道中で食べる分を確保するために、俺は急いで食べ歩き分をしまった。
「闇羽虫……見た目は最高に気持ち悪いですが、味は最高に美味しいですわね……! 身もプリプリで、これ、本当にロブスターとか、オマール海老とか、そういう高級食材の味がしますわ……!! あの闇羽虫とは思えない。味噌? みたいなものも濃厚で、いくらでも食べられてしまいます。危険な食べ物ですわ……!」
ニュウも一口大に切られた闇羽虫のポワレを次から次へと口に運んでいる。
「これ、どう考えてもオマール海老のビスクの味そのものですね!? えええ、すごい、あの闇羽虫からこんな旨味が……。むしろオマール海老よりも深い旨みを感じられる気がします。こんなに美味しいなら、もっと早く食べておけば良かったです! 虫なのに魚介系の味がするんですねぇ」
エルが感動しているように、偽オマール海老ビスクは、本物のオマール海老を使っている、と言ってもバレることはないだろう。
それくらい、本物に近しい味だ。
闇羽虫であれば、オマール海老と違って高価ではない……というか、少しの危険が付いてくるとはいえ、自分でいくらでも狩りにいけるから実質食べ放題だ!
食べる前の見た目の気持ち悪ささえ我慢できれば、いくらでもオマール海老が手に入る……。これはもう世紀の大発見と言っても過言ではないだろう。
水筒にスープを入れれば、歩きながらでも手軽に補給できる。これは闇羽虫の討伐が捗りそうだ!
さて、俺はメインディッシュとなるアイ・デューサの目玉パイ包みをいただいてみよう。
パイにナイフを入れると、少しの固さがあるゼラチン質にナイフが当たった。
それをそのまま押し込むと、ゼラチンが切れてその中からどろりとした液体が滲み出た。
「オ、オイゲン……これは、ちゃんと美味いのか?」
切り込みを入れられた真っ赤な巨大目玉と目が合ったような気がして、恐る恐るオイゲンに尋ねる。
「そいつは見た目はアレだが、味は一級品だ。怖がらずに一口食ってみろって!」
そう言うオイゲンに背中を叩かれた俺は、意を決してプルプルとした目玉のカケラを口に運ぶ。
「……!!!!!」
全くクセのない、甘く濃厚なレバーのような味がする。
サクサクとしたパイと、トロッとした目玉の相性は最高だ!
目玉だと思って食べると気持ち悪いが、一言で言うならばこれはまさにフォアグラのゼリー寄せ、のような旨味がある。
噛めば噛むほど甘みのある味が滲み出てきて、更に口の中でふわりととろける。
こんなにも美味しい食材があったなんて……!
「こいつはすごいな……。一体どうやったら目玉がこんなに美味しく……」
俺がそう言って振り向くと、オイゲンは既に座りながら眠りかけていた。
休まずにずっとこれだけ美味いご飯を作ってくれていたんだ。
今は起こさずにゆっくりと休ませてあげよう。




