27泊目 「足りない!足りない!全然足りなーいっ!」
「……腹が、膨らまない」
一体どういうことなのかわからないが、いくら食べても腹が一杯にならない、どころか口を少し休めると空腹感が湧き出てくる。
これは様子がおかしい、と思って周りを見ると、皆が同じなのか、全員がひたすらに食べ続けていた。
オイゲンが用意した食事では足りず、食糧バッグの中身から取り出したであろうパン、生野菜、煮豆、フルーツも布の上に散乱している。
待て待て、何かがおかしい。
大飯食いが集まってるとはいえ、ここまで飢えた獣のように食べ続けるのは不自然だ。
そう考えながらも、次から次へと新しい食糧に手が伸びてしまう……!
「ちょっと……待って……?」
夢中で食べ物を口に入れ続けていたミュウが、ようやく口の中に物を放り込むのを辞めて言葉を発した。
「え、ナニコレ、どうなってるの? 食糧が……ほぼ全滅……?」
こんなに食べたっけ? と、普段とは違う自分の行動に戸惑っているようだ。
「あら嫌ですわ……僕としたことが食べすぎたかもしれませんわ……。でも、何故かしら、全然満たされない……」
「本当だ……。食べている時は満足できるのですが、食べるのを止めてしまうと、すぐにまた空腹に戻ってしまいます」
ニュウとエルもその不思議な現象に首を傾げている。
「俺様のデリシャース! な料理が美味しすぎて手が止まらないってわけじゃねぇなコリャ……。今日は全てが美味しく感じられて上出来だと思ってたんだが、何かが匂うぜ……」
少し悲しそうな顔をして肩を落とすオイゲンだが、料理の美味しさは間違いではなかったぜ!
……というか、全員が同じように空腹を感じ続けているということは、何らかの魔法現象か罠が発動しているということか?




