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28泊目 「食べ放題のお店があればいいのにねえ」

「あ」


 チーズを食べながら思考を巡らせていると、エルが小さく声を出した。


「ヴァロールの、冬眠準備だ……」


 俺は聞き返す。


「冬眠?」


「はい。文献で読んだことがあります。ヴァロールは冬眠前、食糧をたくさん身体に溜め込めるようにわざと空腹を感じられるお香を焚くって……」


「それで、その香の作用が俺たちにも影響しているっていうことか!?……確かに、3下層に着いてから急激な空腹に襲われたような……」


 どうしたものか、と頭を掻いていると、ニュウがクッキーを食べながら言った。


「でしたら、そのお香を焚いている香炉を壊してしまえば良いのですわ。この階層のどこかにあるはずでしょう?」


「そうだね! それさえ無くなっちゃえばこの空腹も治るでしょ!!」


「お前らの場合、普段から物凄い量を食べてるから今がデフォルトなのか香の力なのかわかんねぇよ……」


 ものすごい勢いでクッキーの袋を空にしていく姉妹を見て、思わず笑ってしまった。


 そうとわかれば、空腹はどうしても避けられない。

 しかたなくメンバー全員が片手に食べ物を持ちつつ、ひとまずこの階層にあるであろう香炉を探すことにした。

 香炉を破壊しない限り、この耐え難い空腹と付き合っていかなければならない。

 道中現れる魔物との戦闘も食べ物を食べつつじゃないと、すぐに空腹感でスタミナ切れになってしまう。

 こんな罠は生まれて初めて経験するけれど、物凄くキツいぞ……!

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