103泊目 そして季節は春へと続く
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エルがゲストハウスを発って数ヶ月。季節は巡り、シュトーレンにも暖かな春が訪れた。
魔法学院に戻ったエルからは何度か手紙も届き、お互いの近況を報告し合った。
元の姿に戻る薬品の調合にも成功し、今はまた錬金魔法の研究に忙しい日々を送っているようだ。
冬が終わり、ゲストハウスの方もまた冒険者や旅人たちで賑わいを見せはじめた。
暖かくなり、日向ぼっこに精を出すユキチさんは今日も窓際でゴロゴロと喉を鳴らしている。かと思いきや、宿泊者たちに撫で回されるのが嫌らしく、気が付いたら高い梁の上に登って不機嫌そうな顔をしていたりする。
「あ〜!あかん!夕飯用の薬草足りへん!」
「仕方ねぇ、こっちのハーブで代用するぞ!」
「ニュウ!向こうのお部屋の支度もうできた!?」
「勿論ですわ。僕にかかれば余裕綽々ってやつですわ。ほら、ミュウこそ手が止まっていてよ」
以前より多くの旅人が訪れているのには理由がある。
それは、新しいユキチハウス看板料理!
そう、ユキチハウスでは前代未聞の"魔物料理"を提供することにしたのである!!!!
はじめは顔を顰めていた人々も、オイゲン特製の魔物料理を一口食べたらあまりの美味しさに目を丸くして驚いていた。
魔物料理を食べたお客様からの口コミでどんどんその噂は広がり、今では魔物料理を味わうためにわざわざ他の大陸から海を渡ってくるお客様まで現れる始末だ。
ここしばらくは料理の食材となる魔物を仕入れるために、魔物の討伐も行いつつゲストハウスを回している。
ゲストハウス経営だけでは少し退屈に感じていた日常も、魔物との戦いによって突然刺激的になるものだ。
そして俺は剣の腕を研くだけでなく、魔法の勉強も積極的に行っている。
魔法というものは使いこなすのがなかなか難しく、何度も挫折しそうになっているが、何かに挑戦するということは自分の新しい可能性に気付けるようで楽しい。
さて、ユキチハウスはそろそろお昼休み。
みんなの食前の紅茶を用意でもしますかね……!!
と、椅子から立ち上がると玄関の方で来客を告げるベルが鳴った。




