101泊目 エリオット・フランシス
「ボクの本当の名前はエリオット・フランシス。れっきとした男なのですが、とある調合魔法の研究中に、凄く良い配合を思いついたんです。これなら身体の機能を一時的に上昇させられる秘薬が作れる……。そう思って調合に取り掛かり、無事秘薬の作成は成功したと思われました。ーーそれが全ての誤りだったんですね。秘薬が成功した、という思い込みの喜びから、早く効能を試してみたくなって自分で少し飲んでみたんです。理論値的には間違いない調合だったので、自作の薬を過信していたみたいです……。薬を少し飲んだ瞬間、ボクは男の姿からこのような女の子の姿に変化していました。後から気づいたんですけど、調合用の試験管の中に想定外の薬品が入ってしまっていたのを気づかないまま使っちゃってたようで……。まぁ、調合は失敗、ってことです。それで、男の姿に戻るための解除薬を作るために、ヴァロールの闇水がどうしても必要だったんです。いつまでもこの姿のままでは学校にも戻れず、友人たちにも会えません。それで、冬休みを利用してヴァロールの巣があるこの街にやってきた……と、言うわけなんです」
エルの話はにわかには信じられないものだった。この可憐な美少女が男……!?告白していないのにフラれる、という気持ちのようななんとも言えない気持ちになったが、真剣なエルの語り口から察するに、これは冗談などではなく本当のお話なんだろう。
「いつかは言わなきゃ、とは考えてはいたのですが、皆さんに良くしてもらって仲良くなって、だけどそれは"女の子としてのエル"と仲良くしてもらっていただけで、"非力な男としてのエリオット"が受け入れてもらえるのかどうかずっと不安で……」
「ううん、そんなのは関係ないよ!本当は男の子だって聞いてビックリはしたけど、エルちゃんはエルちゃん、でしょ?そこに女の子だから、とか男の子だから、とか、何の関係も無いと思うな」
「ええ。僕もそう思いますわ。エルさんはエルさん。それ以上でもそれ以下でもありませんわ」
「おう。嬢ちゃん……じゃなくて坊ちゃん、って言った方が良いのか?そんなん、なーんも気にすることじゃあないぜ!同じ釜の飯を何度も食ったら、もうそれは家族みたいなもんなんだからよ」
「せやせや〜。もう〜、早く言ってくれてよかったのに〜。水くさいわぁ〜。ウチは可愛らしい妹でも弟でも、なんだって大歓迎やで!」
エルが不安な気持ちを吐露すると、仲間たちはそれを笑い飛ばす。
不安そうに周りの表情を伺っていたエルも、今ではまた困ったようにはにかむ笑顔を顔に浮かべている。
「そうだ。エルはもう俺たちにとって、大事なかけがえのない仲間なんだぜ。そしてそれは、エルに何が起ころうと、エルが何になろうとずっと変わらない。どんな自分であっても自信を持っていてくれ。その自信に、俺たちも応え続けることを約束するぜ!」
俺はそう言い終わった後、なんだがこそばゆい照れを感じてしまい、空になっているエルのティーカップにハーブティーを注いでやる。
エルが何者であっても、今目の前にいるエルは共に泣き、怒り、成長した大切な仲間だ。エルへの気持ちも、今まで培ってきた思い出も、なにも薄れたり掠れたりなんかするわけがない。これからと今までも、辛い時には共に泣き、嬉しい時には共に笑う、そういう関係でずっといたい、と心から思っているんだ。
「み、みなさん……っ!ありがとうございます!!」
さっきまで笑っていたエルの目には、涙が溜まっている。
そしてすぐに涙腺の堤防は決壊し、顔中をぐちゃぐちゃにしながら大号泣をするエルがそこにいた。
まったく、コロコロと変わる表情は見ていて飽きることがないなあ。




