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それは、さきをおもうから
「お前さ、気に入ったんだな」
「え?」
予想していなかった言葉を投げられて、雪之丞はスープから顔を上げた。
「突然、何を言いだすかと思ったら」
「そうだろ。そうでもなきゃ、お前が青柳社長に何の報告も上げる気がない理由がつかないだろ」
「報告しますよ。どう、報告するか悩んでいるだけです」
「それが気に入ったってことだろ」
珍しく、弱気そうな顔をして呟く緑川が珍しくて、雪之丞は僅かに瞬く。
「そう、ですか?」
「たく、予想は当たったってことだな」
「なんですか、予想って」
「お前は、引きずられるだろうなってことだよ」
そう言えば以前、緑川は話を濁したことがあった。
『百戦錬磨というよりは、興味がないような気がします』
『はぁ?』
『来るもの拒まず、去る者追わず、というか』
それこそ、春真の女性関係の話をしていた時だった気がする。
あの時口にしなかった言葉は、どうやらそういうことらしい。
「言っておきますけど、紅野君が悪くない。紅野君が悪い。というのは、もともと判断するような事項ではなかったですよ」
「まあな。それでも、そいつ自身はどうするつもりなんだ?」
「話をするつもりだ、とおっしゃってました」
「そうかよ」
「大丈夫ですよ」
小さく苦笑して、雪之丞は手を伸ばして目録を取り上げた。
「青柳さんも、そのあたりは解っていると思いますから」




