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綺羅と嘘とその先  作者: 蛍灯 もゆる
綺羅の承
49/102

それは、だれもがつかえるまほう


日曜日の朝というのは、なかなか早く起きようという気になれない。

実際春真が行動を始めたのは、10時をある程度過ぎた頃だった。

携帯電話には、30分前に行きつけの楽器店から留守電が入っていて、注文していた楽譜が届いたから、余裕のあるときに取りに来てくれと、ぼそぼそとした声が残っていた。



服を着替えて適当な朝食を取ると、春真は駅の近くにある楽器店に向かった。


「あ、春真兄ちゃん!」

「はるまおにぃちゃん!」


近所の家の前の道路に落書きをしていた兄妹が、はっと顔を上げて嬉しそうに寄ってくる。


「おはよう、二人とも」

「ねぇねぇ、春真兄ちゃん」

「なに?」

「褒め言葉って、どうやって言ったらいい?」


もじもじと袖を引く少年に、春真はきょとんと首を傾げた。


「どういうこと?」

「おにいちゃんてば、むこうどおりのでんきやのみよちゃんがすきなんだよ。それでね、なかよくなりたいんだって」


こっそりと兄の秘密を囁いたのは、ませた少女で、少年は途端に真っ赤になって妹に手を振り上げる。


「こら! 何で言うんだよ!」

「だってきいちゃったもん。それに、ちゃんと言わないとはるまおにぃちゃんわかんなくて、ひんといえないもん」

「それは、そうだけど」


もごもごと口の中で呟いて、少年はおずおずと顔を上げた。


「お母さんが、春真兄ちゃんは女の子にモテモテだから、どうやったら美代ちゃんを喜ばせられるか聞いてごらんって」


此処に至って漸く状況を把握して、春真は困ったように目を細める。

期待の籠った目がきらきらと見上げていた。


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