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綺羅と嘘とその先  作者: 蛍灯 もゆる
綺羅の起
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33/102

それは、しんあいなるかんげん


「待ち合わせ早々、すみません」

「いいえ。雪さん、普段外歩くの大変そうだね」


くすくすと笑う春真に、雪之丞は眉を顰める。


「紅野君の方が大変だと思いますよ」

「そうかな? 相手があることなら、男の方が優位だと思うよ。それに、」

「それに?」

「目立たないフリは苦手じゃないんだ」


驚いて瞬くと、春真はこそりと声を潜めた。


「雪さん、ちょっと協力してくれる?」

「え?」

「実は、打算もあって誘ったんだ」


あまりにもあっさりと言うので、雪之丞は足を止めてまじまじと春真を仰ぐ。


「打算、ですか?」

「うん」

「なんでしょう?」

「雪さんがいれば、男性の観客も増えるかな、と思って」

「そういうことですか」


知らず息を詰めていたらしい。

雪之丞はふうと息をついて肩を竦めた。


「お客さん、少ないんですか?」

「いつも多くはないよ。でも、折角なら、いろんな人に見てほしいよね。大人も子どもも楽しめるものなら、特に」

「紅野君の持論ですか?」

「そう。ピアノにおける、ね」


にこりと笑って、春真は微かに首を傾ける。

彼にとってピアノというのは、思った以上に大きな位置を占めているらしかった。


「共感できない?」

「いえ。客寄せパンダ、協力します。ヒーロー好きとしては、ヒーローは人気者であってほしいですから」

「パンダか。言い得て妙だね」


大きく頷く雪之丞に、春真が目を細めて苦笑する。


「雪さん、ほどほどで」

「え?」

「雪さんが張り切ると、人が集まりすぎそうだから」

「なんですか、それ」


冗談交じりな台詞に膨れて見せると、春真はいつになく穏やかに笑みを浮かべた。


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