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第1話「幼馴染との再会」


ここから第一章「朝倉美咲編」が始まります。


最初に登場するヒロインは、主人公・神代悠斗の幼馴染である朝倉美咲。


小さな頃から家族のように過ごし、誰よりも長い時間を共有してきた二人。


しかし、美咲の中ではその気持ちは少しずつ変わり始めていました。


友情から恋愛へ。


幼馴染だからこそ伝えられない想いと、変わらない日常の温かさを感じながら、お楽しみいただければ幸いです。


それでは、第一章第1話「幼馴染との再会」をご覧ください。



春。


満開だった桜は少しずつ葉桜へと姿を変え、大学の新学期も落ち着きを見せ始めていた。


神代悠斗は大学二年生となり、新しい講義やゼミにも少しずつ慣れ始めていた。


「ふぅ……。」


午前中の講義を終え、悠斗は自宅のアパートへ戻る。


一人暮らしを始めて一年。


部屋は決して散らかっているわけではないが、どこか生活感に欠けていた。


冷蔵庫を開ける。


中にはペットボトルのお茶と卵、ヨーグルトが少しあるだけ。


「昼ご飯、どうしようかな……。」


そう呟いた瞬間だった。


――ピンポーン。


インターホンが鳴る。


「はい。」


玄関を開けると、そこには一人の女性が立っていた。


肩まで伸びた栗色の髪。


優しい笑顔。


両手には大きな保冷バッグ。


「こんにちは、悠斗。」


「……美咲!」


朝倉美咲。


悠斗の幼馴染であり、小さい頃から家族ぐるみで付き合いのある存在だった。


「久しぶり。」


「大学が始まって忙しかったからね。」


「でも、ちゃんと元気にしてるかなって思って。」


美咲は笑顔のまま部屋へ入る。


「お邪魔しまーす。」


慣れた様子でキッチンへ向かう姿は、まるで自分の家のようだった。


冷蔵庫を開けると、中を見て大きくため息をつく。


「やっぱり。」


「え?」


「全然食材入ってないじゃない。」


「忙しくてさ。」


「忙しいは言い訳になりません。」


美咲は少し頬を膨らませながら保冷バッグを開く。


中から次々と保存容器が並べられていく。


肉じゃが。


鶏の照り焼き。


ほうれん草のおひたし。


きんぴらごぼう。


味噌汁。


炊きたてのご飯。


「こんなに?」


「全部作ってきたの。」


「一人じゃ栄養偏るでしょ。」


悠斗は思わず苦笑する。


「いつもありがとう。」


「お礼より先に食べる!」


「はいはい。」


二人で食卓を囲む。


「いただきます。」


「召し上がれ。」


一口食べた瞬間、悠斗の表情が緩む。


「やっぱり美咲の料理、美味しい。」


「ほんと?」


「お店出せるよ。」


その言葉に美咲は照れながら笑った。


「そんな大げさだよ。」


「でも……そう言ってもらえると嬉しい。」


食事を終えると、美咲は自然に食器を洗い始める。


「俺がやるよ。」


「いいの。」


「昔から私の担当だったでしょ。」


幼い頃から変わらない役割。


悠斗が食べて、美咲が片付ける。


そんな日常が二人には当たり前だった。


洗い物を終えたあと、美咲は部屋を見回す。


「掃除はしてるね。」


「最低限だけ。」


「洗濯物もちゃんと畳んである。」


「褒められた。」


「そこは褒めるところ。」


二人は顔を見合わせて笑った。


その笑顔は、小学生の頃から何一つ変わっていなかった。


午後になり、近くの公園まで散歩へ出掛ける。


春風が心地よく吹き、子どもたちの笑い声が聞こえる。


「懐かしいね。」


美咲がベンチへ腰掛ける。


「ここで毎日遊んでた。」


「鬼ごっことか。」


「ブランコも。」


「砂場で泥だらけになって、お母さんたちに怒られたよね。」


「あったあった。」


思い出話は尽きない。


どれも笑顔になれる記憶ばかりだった。


美咲は悠斗の横顔を見つめる。


(昔は私の方が背が高かったのに。)


(今じゃすっかり追い越されちゃった。)


(優しくて、真面目で。)


(昔と変わらない。)


(でも……。)


(私はもう。)


(幼馴染としてだけじゃ見られない。)


心の中だけで呟く。


その想いは、まだ悠斗には届かない。


帰り道。


夕日が街を優しく照らしていた。


「また料理作りに来てもいい?」


美咲が少し遠慮がちに聞く。


悠斗は迷うことなく答える。


「もちろん。」


「美咲が来てくれると安心する。」


その何気ない一言が、美咲の胸を温かくする。


「じゃあ約束。」


「来週も来るね。」


「楽しみにしてる。」


手を振り、それぞれの家へ帰る二人。


しかし、美咲は歩きながら胸に手を当て、小さく微笑んだ。


「……やっぱり好き。」


幼い頃から積み重ねてきた時間。


誰よりも近くにいた存在。


その想いは、もう友情ではなかった。


そして悠斗は、まだ知らない。


この穏やかな日々が、やがて五人の女性との運命へと繋がっていくことを。



最後まで第1話をお読みいただき、本当にありがとうございました。


今回は、美咲と悠斗の日常を中心に描きました。


料理を作りに来ることも、一緒に食卓を囲むことも、思い出の公園を歩くことも、二人にとっては当たり前の日常です。


しかし、その何気ない時間こそが、幼馴染ならではの深い絆を育んできました。


一方で、美咲の中では友情では収まりきらない恋心が少しずつ大きくなっています。


悠斗はまだその想いに気付いていませんが、二人の関係は少しずつ変わり始めようとしています。


次回、第2話「変わらない距離、変わり始めた想い」。


幼馴染という心地よい距離が、恋という新たな感情によって少しずつ動き始めます。


引き続き、『五つの誓い――僕だけの五人の花嫁』をよろしくお願いいたします。


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