1. 深夜のお客さま
ぼくは静野溜五郎、三十歳だ。
夕勤で深夜まで仕事をして帰ってくる。そのためゴミ出しの時間にゴミを出しに行けない。
それもあるが、ぼくは根っからの面倒くさがりなのだ。
ひとり暮らしのため誰かに頼ることもできない。どんどんゴミがたまっていく。仕事のストレスで買い物依存になり、いるのかいらないのかわからないものがどんどんとたまっていく一方。
そしてついに、ぼくの部屋はゴミ屋敷になった。
足の踏み場はもちろんなく、寝る場所しか残っていない。
玄関、キッチン、洗面所、風呂、トイレ、リビング。そのすべてがゴミの山。
かろうじてシャワーの場所だけは確保している。
リビングと寝室は一緒。だから、リビングの片隅にぼくの寝床がある。その近くにあるテーブルの上にはパソコンがあり、その周りには空き缶やペットボトルが乱雑に置かれている。
床の周りはテーブルと同様、コンビニの食べ終わった弁当のゴミ袋が大量に散乱している。
仕事から帰ってきてそんな状況の部屋を見ると、片付けようという気力もなくなる。
部屋の行き来をするたびにペットボトルやゴミ袋を踏み付ける毎日。
汚い部屋なのはわかっている。きれいにしたい。片付けたい。苦しい。もう耐えられない。もう限界だ。
(……だ、だれか助けてくれー!)
そんな感情がいつもわき起こる。だができない。何かの呪縛みたいなものがぼくの体を支配しているかのように、掃除、片付けようという意思がわき起こらない。
「はあ……寝るか」
すると、ピンポーンと玄関のチャイム音が鳴り響いた。一瞬の静寂のあと、ぼくはすぐさま時計を確認した。
時刻は午前三時過ぎだった。
ピンポーンとふたたび音が鳴る。
「え? なんでこんな時間に?」
体が疲れているからだろうか不思議と恐怖心はなかった。
仕方なくいつものように居留守を使うかと思い玄関スコープをのぞき込んだ。
そこにいたのは……。
白い振袖に赤い袴を着た巫女さんみたいな人が立っていた。
「だれ? 巫女さん? なんで?」
だがよく見ると黒い長い髪を後ろで縛り、目を閉じているが品のある顔をしている。この時間にそこにいる人物は明らかに異様であり神々しくもあった。
用心深いぼくは疑ってしまう。訪問販売や変な勧誘なのではないかと。そもそも訪ねてくる時間がおかしい。
ほかにも素直に出れない理由がある。それはゴミの散らかった玄関を見せたくないからだ。
(……どうする?)
彼女の顔をこうやって見ていると、結構自分好みの女性だ。
(こ、これは人助けだ)
そう思いながら、ぼくは意を決してドアを開けた。
「はい」
出てみると彼女は顔を上げてゆっくり目を開けると話し出した。
「夜分に申し訳ありません。わたくし、福の神の使いの小明という者です」
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