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主は悪役令嬢を名乗る公爵令嬢  作者: 狐のボタン


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7/12

約束の日を迎えた子



自室からおばさんの小箱を持ち出し、メリスさんとお嬢様の部屋へ戻ってきた。

「なんでメリスまでいるのよ」

「私だけ除け者にするなんて! お嬢様、約束を反故にされるおつもりだったのですか!?」

「違うけど、正妻は私なのだから全てにおいて私が優先されるべきでしょう?」

「くっ…やむを得ず合意したものの、やはり納得いきません!」

「あら。だったらただのメイドとしてこれからもよろしくね?」

「くぅぅ…。権力が! 財力が憎らしい!」

「諦めなさい。どのみちメリスにも話すつもりではいたのよ?」

「それならいいのですが…」


お二人が何を揉めているのかわかりませんが、夜も遅いですし…。

「お嬢様、そろそろ先ほどのメモと小箱について説明してくださいませんか?」

「そうね…。シン、話を聞く覚悟はある?」

真剣なお嬢様の様子から、決して楽観的に捉えていい話ではないと理解できますが…

「聞かせてください。知らなくてはいけないんですよね」

「そうね。これはシンの出生に関わるものだから…。ただ、所々インクが滲んでしまっていてわからないところもあるから、そこはごめんね」

「お嬢様が謝られる必要はありません。多分僕の所持方法が悪かったのだと思いますし…」

ずっと首から下げていたのだから、この十数年の間に雨で濡れたり等色々あったはずだ。


「シンを育ててくれたおばさんは、乳母だったらしいわ。どこかの国の何とかっていう家の高貴な血を引いているのだけど、側室の子だったから後継者争いを避けるため、国から逃げてきたみたい」

「国名とどこの家かはわからないのですか?」

「ええ。一番大切な部分が滲んでしまっているの。ヒントは多分一緒に入っていた紋章と、メモの最後に書かれていたパスワードね。これが箱を開けるキーになってるみたい」

お嬢様は箱の鍵を解除しようとぐるぐると回しながら確認してる。


「シン、紋章とはなんです?」

「多分コレのことかと」

紙の他に入っていたのなんて小さな小さな金属片くらい。

手渡した物を見たメリスさんはプルプルと震えだした。まさか怒ってる…?


「あ、開いたわ」

箱をイジっていたお嬢様はあっさりと鍵を解除してしまったらしい。

「シン、ほら。開いたわ」

「お嬢様がそのまま開けてくださ…」

「シン! お嬢様! この紋章を見て何も気が付かなかったのですか!!」

はい?メリスさんは何をキレてるんです?


「小さすぎてまだよく見てないのよ。メリスは何かわかったの?」

「よく見てください!」

メリスさんは金属片と拡大鏡をお嬢様に手渡す。

「煩いわね。落ち着きなさいな…。 ………嘘よね?」

拡大鏡を覗いたお嬢様までプルプルと…。

「その箱を開ければ確実な証拠があるのでは?」


お嬢様は慌てたように箱を開き、中身をすべて取り出した。

何通かの手紙と、貴族の女性が護身用にと持つ小さなナイフ。宝石やらで装飾されてかなり豪華。

「シン、手紙を見てみなさい。読めないものがあったら渡して」

「は、はぁ…?」

手紙は全部で三通。


一通目はまた読めない文字だったからお嬢様へと渡す。

二通目はライラという人からの手紙。

”これを読んでいるという事は、恐らく私はもう傍にいないのでしょう。貴方には何も知らないまま幸せになって欲しかった。だからこの手紙の入っていた箱の事も何も伝えていなかった筈です。でも貴方は私が手渡したカプセルケースに残した手がかりからこの手紙へと辿り着いた。 もし、すべてを知る覚悟があるのならもう一通の手紙も読んでみなさい”

おばさんの名前がライラで間違ってないのだろう。カプセルケースを渡されたのは僕だから、コレも僕に当てた手紙、そう判断していいと思う。


読み終わった手紙をテーブルに置き、次の手紙へと手を伸ばす。

「シン! 見なくてもいいのよ?私が一生面倒を見てあげる! だから…」

「お嬢様が読んでほしくないと言うなら僕は読まなくても構いません」

「…私に止める権利なんてないわよ…」

そんな寂しそうに言わないでくださいよ。きっとお嬢様はすべてを把握して、その上で僕に読まないでほしい。そう思っているのだろう。


手紙へと伸ばしていた手を引っ込める。

「これらすべてお嬢様へとお預けいたします。どうするかの判断もお任せします。僕はもうお嬢様のものですし」

「…わかったわ。 もういい時間だし休みましょうか。シン、明日に備えてちゃんと寝ておきなさい」

お嬢様におやすみなさいと伝え部屋を出た。

メリスさんは残るように言われていたから、明日の仕度でもあるのかもしれない。


さっきの手紙を読んで、色々と知りたかったのは事実。

でもお嬢様を悲しませてまで読む必要はない。なにより知ったところでどうなるというのか。

僕はお嬢様の従者で、次期公爵となるお嬢様へと婿入りする身だ。立場として僕なんかていいのだろうか…という思いはあれど、不満なんてない。

これからも一番近くでお嬢様を守れるのだから。






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