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主は悪役令嬢を名乗る公爵令嬢  作者: 狐のボタン


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8/12

秘密の子



リリエルside



部屋を出ていくシンを見送り、離れたのを確認したのかメリスが話を切り出してきた。

「お嬢様、よろしかったのですか?」

「……怖かったのよ。真実を知ったシンがどうするのか…」

「お嬢様のシンへの信頼はその程度なのですね」

「煩いわよ!?」

メリスにはわからないわよ。明日には…というかもう今日だけど、私は結婚するのよ?

そんな大切な時にこんな重大な事実を知りたくはなかったわ…。

これがマリッジブルーってやつかしら。


「しかし…まさかサティーニア王家の紋章をこんな所で見るとは思いませんでした。お嬢様が読まれた手紙にはなんと?」

「メリスには、シンとの今後の関係を話し合った時に私の秘密も話したわよね」

「前世の記憶があるというお話なら聞きましたよ」

「メリスといい、シンといい、あっさり受け入れるからこっちのが戸惑うわ。 この手紙、私の前世の世界の文字で書かれているのよ」

「確か、サティーニア王家には、王族のみが読み書きできる文字があると聞いたことがあります」

「それよ。まさかだったわ。 どうやら過去にサティーニア王家へと嫁いだ女性が私と同じ世界からの転生者だったみたいね。それで機密情報とかを書き残すのに前世で使っていた文字を利用した」

「王族だけがその文字を習得し、他人が読めないとなれば…」

「ええ。完璧な暗号文の完成よ。でも私は読めてしまった」

「何が書かれていたのです?」

「後継者問題が落ち着くまで乳母へとシンを任せ、身を潜めておくように…と。国が落ち着いたら呼び戻すつもりだったみたい。 この手紙があれば証立てるのも容易だわ。なにより側室の女性が預けた懐剣もあるのだから。この小さな金属片は懐剣から外したものね。ぴったり嵌るはずよ」

懐剣の柄の根本部分に小さな穴があり、嵌め込むと同時に鞘が抜けた。


「紋章がロックになっていたわね。 見て、メリス」

「刀身にサティーニア王家の紋章…。これはもう疑う余地もありませんね」

「そうね。サティーニアの情勢って今どうなっていたかしら」

「来年成人を迎える王子が一人と、20歳で未婚の王女が一人。どちらも正妻の子で時期国王も王子で確定してます。現国王には二人の側室がおりますが、どちらも娘しかおらず継承権はありませんね。あちらの国は王家も貴族も跡継ぎは男系と決まっておりますし」

私の知っている情報と同じね…。レヴィアーゼ国(うち)は男女問わず長子が継承権最上位になるから、私も王家へ嫁がない以上、ルシフェラーゼ家の次期当主でいずれ公爵になる。


「サティーニアは友好国でもあるから私の披露宴に招待してあるし、参加表明もされているけど、どうしたものかしらね」

「知ってしまった以上、伝えないわけにも…。なにより次期ルシフェラーゼ当主でもあるお嬢様と結婚したとなれば、あちらとしても継承権で揉める心配もないですし…。むしろ何かのきっかけで後々になってから私達が事実を知っていたとバレた場合のが色々と問題になりかねません」

秘密にして隠し通すのも不可能ではないだろうけど、披露宴の最中にシンを見てサティーニア側の誰かが気がついたら面倒な事になる…か。

しかも、披露宴に参加するのが王子と王女、それに側室の一人。もしシンの母親の方が来たとしたら息子に気がつくかもしれない。


「メリス、至急サティーニア王家への手紙を出すから人を手配して。確実に運ばせたいから絶対に信頼できる人間を選んで。証拠としてシンの持っていたカプセルと中に入っていたものを届けさせるわ」

「かしこまりました。すぐに手配致します」

サティーニアの国王陛下と王妃様とは懇意の仲だ。側室の方とも当然面識がある。

私自身が国を追放された時の為にと構築しておいた関係がこんな所で役に立つなんて。

手土産に新作の焼き菓子も届けさせておこう。



夜のうちにメリスの手配した配達人へ手紙と証拠の品、後は手土産を持たせて出発させた。

一応、箱の中身は見ていない体で手紙は書いておいた。だって私があの暗号文を読めたと知られる訳にはいかないし…。

いくら懇意にしているとはいえ、国家機密に相当するものを読めるなんて安易に言えるはずがない。


結婚前夜にこんな大騒ぎになるなんて思いもしなかった。

明日が身内だけの結婚式で良かったわ。披露宴だったら心が保たなかった気がする。

この世界に私以外にも転生者が居たのにも驚いたけど、私の知る限り前世の世界の物が広まっていた様子はないのよね。

意図的に広げなかった人がいた可能性はあるけど…。

今回の手紙に限ってなら、使っている文字が旧仮名遣いだったから、サティーニア王家へ嫁いだ人は私のいた時代より数十年以上過去から来た人だったのだろう。

仮に明治とかの人だったとしたらこちらで広めるほど進んだ知識がなかった可能性もある。

いや…どちらかというと警戒して何も広めなかった可能性のが高い。文字を機密情報を扱う為のものとして王家のみに遺した様な人だ、あり得なくもない。


私は我が身可愛さに色々とやらかしてるからなぁ…。

でもそのお蔭で、この国にはもうシンのような辛い思いをする子はいなくなった。かなりの出費と時間がかかったけど後悔はしていないもの。

何より、私と出会うまで大切なシンを守っていてくれた人を安心して眠らせてあげたかったから…。


結婚式が終わったら、シンと一緒に報告がてらお墓参りに行こうかしらね。

初めてよね、シンと行くのは…。まさか先にメリスが連れて行ってしまうなんて思わなかったけど。

まぁでも…そのお陰でシンが私を想ってくれるようになったのだから感謝はしなくてはいけない。

シンの側室として側に置く、という立場でメリスも諦めてくれたし…。

当然、表向きは私とシンの専属メイドという扱いにはなるけど仕方がない。婿養子が側室を持つ理由も無いのだから。残さなくてはいけないのはあくまでも私の血筋だし。

……私個人の気持ちだけで言うなら、シンに愛人かいる…というのは腹立つけど仕方ないわ。私もメリスは好きだもの。追い出すなんてしたくはない。






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