魔女
かくいう長老には魔脈を感じる力はほぼほぼない。
自身の能力を過信している長老は、いつしか自分が本当に魔脈を感じているように錯覚していた。
その時だった。
「あぁっ!」
エニモスが悲鳴のような声を上げた。
「水が湧いたか!」
喜び勇んで駆け寄ろうとした長老だが、オズが必死で止める。
その理由は?
「アンドロイドです。下がって」
その一言に、待機していた部下たちが一斉に動く。
長老を囲むように立ち、守る体勢になった。
アンドロイドの中には魔力に惹きつけられるものもいる。
エニモスの魔法陣は、水脈ではなくそういうアンドロイドを呼び寄せてしまったようだ。
「……せえいっ!」
エニモスが杖で描きかけの魔法陣に杖を突く。
深々刺さった杖を引き抜くと、そこにはスライムの残骸がひっついていた。
スライムとは通称で、自身の外側をゼリー状の粘液で覆い、それで人間や他の生物を粘着させ攻撃をしかけてくるアンドロイドだ。
エニモスはそれをぶらぶら振り回し、長老たちに見せた。
「ほほほ…… わらわはギルドに所属するだけあって、アンドロイド退治の方が得意ぞよ」
甲高い声で笑っている。
アンドロイドを退治できたことを安堵したオズはじめ長老の部下たちだった。
無作為に襲い掛かって来るアンドロイドほどたちの悪いものはない。逃げるにしろ、排除するにしろ、兵士数人いても大変な作業なのだ。
安堵した部下たちに対し、長老は怒っている。
「え~い! そんな調子で水脈を開くのはいつになるんだ!!」
長老が文句を言い出す。
それを聞いて、エニモスは不穏な表情になる。
「何を言う? 無謀な計画だと最初に申したはず。それでもいいと了承したのはそちらであろう」
確かにそうなのだが、それは他に選択肢がなかったからその条件で飲んだに過ぎない。
長老にしてみれば、かなり不本意な取引だったのだ。
「わらわは辞めても構わんぞ?」
エニモスは嫣然と微笑んでいる。




