身分
「魔女とやらも大したことないな」
苛立った長老はつい毒づく。
それを諫めたのは、部下の一人オズ・ラテーシアだ。
「こんな砂漠に水を湧かせるのなんで、そりゃ時間が掛かりますよ」
オズはラテーシアという苗字だが、長老のはとこの娘の入り婿という本家筋からはかなり離れた親戚になる。
ルウ族には三つの身分制度がある。
神の化身ともされる第一身分。神殿にほんの数人ほど住んでいるとされ、最高位とも呼ばれる人たち。
第二身分は、いわゆる兵隊たちだが主にラテーシア家とレファイ家の二つ。
第三身分はいわゆる平民だ。
今のルウ族の者はさほど身分を気にしない者が多いのだが、オズは気にしていた。
平民出身だったオズは結婚により第二身分になれたことを喜び、魔力が強いことから長老の部下に抜擢されたことを誇りに思っていた。
そんな経歴であるオズは、長老の従順な部下だった。
「いくら払ってると思ってるんだ」
「しっ……。聞こえますよ」
水脈を開くと意気込んだ長老だが、自分たちに出来ることはなく、ギルドに依頼するという手段に出たのだ。
高い金を払った割には、なかなか水が湧かないことに長老は苛立っていた
「だいたい、こんな砂漠のど真ん中より、もっとルウの地近くで……」
「そんなことしたら、兵士どもに見つかってしまうだろうが!」
「はいっ! すみません」
長老が拳を振り上げかけたので、オズはすぐさま頭を下げた。
「しかし、この辺は魔脈がほんのわずかしか感じられません。もう少しだけでもルウの地に近い方が……」
「黙れ! ここでいいんだ。私の感覚が間違ってるというのか?」
ルウの地には水脈がある。
それに伴うように魔脈もあるのだ。
オズは魔脈を感じ取ることができるのだが、ここで感じる魔脈はごくわずかだ。
しかし、長老の感覚の方が正しい! そう揺ぎなく信じるオズはそれ以上進言することはなかった。




