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乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 作者:わい/三嶋 与夢
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エピローグ

 夏期休暇もそろそろ終わりが近づいていた。

 ただ、連絡が何も来ないのが気になっている。

 宮廷工作――そちらに時間がかかっているのだろうか?

「まいったな。早いところ話を終わらせて欲しいんだが」

 畑に出て作業をしていると、次兄のニックスが俺に文句を言ってくる。

「お前は本当にのんきだよな。下手すると処刑だぞ。それですめば良いが、俺たちまで巻き添えにならないか俺は不安で仕方がないんだ」

 四男のコリンはあまり話が分かっていない。

「兄ちゃん、決闘で相手五人を倒したんだろ? なら凄いじゃないか」

 次兄が怒鳴る。

「喧嘩をしたらいけない相手だったんだよ! コリン、お前も他人事じゃないからな!」

 朝から仕事をしているわけで、疲れたので背伸びをした。

 少し離れた場所ではアンジェリカさんがオリヴィアさんに畑仕事を教わっている。

 それを心配そうに見ているメイドたち。

 手伝おうとしても、アンジェリカさんに止められて手が出せないでいた。

「ここをこうして――ひっ! なんだ、このウネウネした生き物!」
「“アンジェ”、それはミミズです」
「ミミズ? 聞いたことはあるが……ひっ! “リビア”、手で掴んで平気なのか!」
「これくらいどうという事はありませんよ。さぁ、続きをしましょう」

 夏期休暇で仲良くなった二人は愛称で呼び合っている。

 俺も愛称で呼ぶのを許されるようになったが、基本的にそれ以上の関係ではない。そもそも、メイドの人たちが交代で見張りをしているので手が出せない。

 出す気もない。

 公爵令嬢に手を出すなど馬鹿のすることだ。俺は馬鹿じゃない。だから、手なんか出さない。

 コリンが俺の腕を引っ張った。

「兄ちゃん、どっちと結婚するの?」

「はぁ?」

 コリンの質問に俺は首を横に振る。

「いいか、コリン。相手は特待生と公爵令嬢だ。どっちも俺のストライクゾーンから離れすぎているから結婚は無理だ」

「すとらいくぞーん?」

 次兄は「また始まったと」と言って仕事を再開していた。

「特待生の姉ちゃんは平民で結婚は難しい。公爵家のお姫様は身分が高すぎて釣り合わない。分かったか?」

「うん、分かんない!」

「ははは、正直だな、コリン。ほら、さっさと仕事に戻れ」

「は~い」

 俺のストライクゾーンは好みなら二人ともありなのだが、身分的にどちらもアウトだ。ストライクゾーンにかすりもしない。

 もう、見るからにボール球だ。

 リビアはミットまで届かずワンバウンドしているような球で、アンジェは高めに大暴投したようなボール球。

 バットを振る気すら起きない。

 くそ……外見は好みなのに。

 それよりも今は俺の将来についてだ。

 まぁ、公爵様次第の状況だ。

 流石に酷いことになるとは思わないが……白金貨の山を用意したのだ。きっと大丈夫。

 でないと困る。

 そして、畑仕事をしているのがもう一人。

「爪が汚れる。手が痛いよぉ」

 泣き言を言っているのは次女のジェナだ。

 俺の鎧に爆弾を貼り付けた事を両親に告げ口し、事情もあったので夏期休暇はこうして働かせている。

 弟を暗殺しようとして、畑仕事で許される次女はもっと反省するべきだと思った。まぁ、殿下の乳兄弟。その命令を実行した連中に半ば脅されていたのも考慮するべきだろうが――俺たちが普段している仕事が罰になる時点で、この世界の基準はおかしいと思った。

「その程度で許されるんだから感謝して欲しいね」

「あんたが問題を起こさなかったら、私だって爆弾なんかセットしなかったわよ」

 まぁ、そうだろう。

 だから俺も許した。実際、たいしたダメージもなかったし。

「畑仕事なんかしたくないよ~」

 文句を言っている次女を見て俺は思ったのだ。

 やっぱり乙女ゲーの世界って酷い、って。



 翌日。

 公爵家の飛行船が実家にやって来た。

 アンジェリカさんを迎えに来たらしいが、ついでに王都から役人を乗せてやって来たようだ。

 俺への対応が決まったという所だろう。

 役人の中でも随分と身分の高い――階位の高い人がやって来たのは驚いた。

 領主貴族は爵位で格付けされるが、領地を持たない王の直臣である宮廷貴族たちは階位を持つ。

 これは領主も持っているが、男爵以上は王宮で王に面会できる階位を貰えるだけだ。

 王を最上位にした一位から、王太子殿下が二位上。王族が二位下となり、実質的に役人の最上位三位は上も下も大臣クラスとなる。

 ず~と下がって六位下が王への面会権がある階位だ。多くの領主たちはこの階位を与えられている。

 男爵以上の領主は自動で貰える階位で、宮廷内の階位だと役人としては係長やら課長クラスだろうか?

 まぁ、そんな階位があるのだ。

 宮廷貴族でも爵位を持っている人もいるし、その辺りは説明が難しい。というか、俺には関係ないので詳しくない。

 ただ、やって来た役人は五位下――宮廷的には親父よりも格上の役人だった。

 そのため親父が緊張した様子だった。

 屋敷で話をすることになったのだが、役人の人はニコニコしていた。

「いやはや、今回は随分と大騒ぎでしたよ。婚約破棄に決闘騒ぎ。王太子殿下の廃嫡と話題に事欠きませんでした」

「は、はぁ」

 親父が緊張した様子で話を聞いているのだが、相手はそのまま何事もないかのように話を続けた。どうしよう……廃嫡の話、凄く気になるんだけど口を挟める雰囲気じゃない。

「宮廷内でもバルトファルト家の責任を問う声が上がっていましたが、公爵家が動いてくれたおかげで何事もなく終わりました」

 ヴィンスさんが頑張ってくれたらしい。

 ありがとう、アンジュパパ。

「あ、あの、それでバルトファルト家の処遇は?」

 親父が我慢できずに聞いてしまった。

 役人さんは笑顔で答える。

「安心してください。責任は問いません。むしろ、リオン殿は独立した騎士として正式に認められることになりました。在学中ですが、王宮で正式に叙勲式を行います。何しろ殿下の愚行に忠言した騎士ですからね。他の生徒も見習ってほしいものです」

 ……親父は安心して胸をなで下ろしているのだが、どうにも俺は雲行きが怪しくなってきた。

 叙勲式で卒業前に騎士? そんな話は望んでいない。

 今度は俺が質問する。

「ま、待ってください。俺の責任は? 男爵位を剥奪するとか!」

「そんな話は出ていませんが? そう言えば少し揉めましたが、リオン殿は男爵位を正式に与えられることになっています」

 騎士への叙勲、それと男爵位。

 ……これでは俺の計画が狂ってしまうではないか。

 今更学園に顔を出すなんて嫌だぞ。戻らないと思ったからやりたい放題だったのに!

「流石にそれは――」

「そう。流石にこれでは話になりません」

 なんだ、落としてから上げるのか。この人もやり手である。

 俺が期待のこもった目をしていると、書類を一枚用意してきた。

 何が書かれているのか読むと、親父が「ひゃぁぁぁ!」とか叫び声を上げた。俺もそんな声で叫びたい気分だった。

 役人が笑顔で告げてくる。

「リオン殿に宮廷階位六位“上”が許されました。おめでとうございます。昇進ですよ」

 ……昇進するとか聞いていない!



 公爵家の飛行船。

 リビアは同乗させて貰った。途中、実家のある浮島に寄って降ろして貰うことになっている。

 甲板でアンジュと話をした。

「宮廷の階位が上がるって昇進ですよね? でも、領主さんたちからしたら関係ないような気がしますけど」

 リビアはその辺りのことが分からなかったが、詳しいアンジェが説明してくれる。

「確かに領主にはあまり意味がないかも知れないが、宮廷がその他大勢の六位下よりも認めているとも言える。分かりやすく言えば、その他大勢の中でもマシという扱いだな」

「それ、褒美になるんですか?」

「何事も考え方だ。因みにだが、宮廷階位の九位と八位は一代限りの地位だ。七位から世襲できる地位になる訳だが、一つ階位を上げるとなると長年の忠勤やら大きな手柄が必要になるな」

 リビアにはよく理解できなかった。

「長年の忠勤というと、十年とかですか?」

「八位まではそれでもいいが、七位より上は世襲できる関係で個人ではなく家単位で考える。親子三代で真面目に仕えた、とかそのレベルだ。普通にやれば百年はかかる」

 それを聞いてリビアが驚く。

「な、なら、それだけ認められたって事ですよね!?」

「そういう事だ。まぁ、宮廷からすれば昇進させても痛手はないからな。リオンは宮廷貴族ではないから年金も支払われない。ただ、昇進させるとは思わなかったが」

 アンジェにしても、ここまで待遇が良いと勘ぐってしまうレベルだという。

 奇々怪々な宮廷事情。どうしてこうなったのか、という事例は多い。今回もそうした一件だったのだと納得するしかない。

 ユリウスを廃嫡して、リオンを昇進させる程に優遇することで利益が生まれる個人や集団がいるのだと結論づけた。

 話を聞くリビアはその辺りの話に疎く、あまり理解していない様子だった。

「良くて男爵からの降格だと思ったのだが」

 リビアが思い出す。

「そう言えば、リオンさんが賭けで手に入れたお金を使ったとか言っていました!」

「何? そうなると……金の力か? いや、しかしそれにしては……う~ん」

 二人は答えが出ないので話題を変える。

「話は変わるが、リオンが新学期前に叙勲式を行うらしい。お前も来るか?」

 誘われたリビアが少し困る。

「で、でも、そういう場に参加したことがなくて」

「制服で良いさ」



 最悪だ。

 連れてこられたのは王宮。王様がいるお城と思ってくれれば良い。

 ゴテゴテ飾りの付いた騎士服を着せられ、俺の鎧であるアロガンツは会場に飾られ、オマケに参加者がとにかく多い。

「なんでだよ。なんでこんなに参加者が多いんだよ」

 控え室で嘆いていると、この日のために王都に来た両親が俺を見て泣いている。

 お袋が酷い。

「こんなに立派なって。昔はちょっと馬鹿な子かと思っていたのに、あんた実は凄かったんだね。お母さん、本当に嬉しいよ」

 親父も泣いている。

「まさかお前がこんなに早く騎士に任命されるなんて思わなかったぜ。ちくしょう……涙が出てきやがるぜ」

 次兄や次女は制服姿だ。

「あれ? あっちの家族は?」

 次兄はゾラたちが来ていないことを不思議に思っているようだが、次女は最初から来る気がないのを知っていたらしい。

「来るわけないじゃない。そもそも、リオンは独立した別のバルトファルト家よ。それにしても六位上か……」

 次兄と次女の話が続く。

「なんだよ?」
「このままリオンが宮廷に仕官すれば、女子にしてみれば狙い目になると思ったのよ」
「リオンが? こいつ、全校生徒に恨まれているじゃないか。俺たちだって新学期になったらどうなるか分からないぜ」
「馬鹿ね。昇進したのよ。リオンが王宮に認められた、って事よ。馬鹿以外は察してくれるわよ」
「なら学園に戻っても大丈夫そうだな」
「どうかしら。荒れるんじゃない? 全財産すった子もいるし」
「どっちだよ。ハッキリしろよ」
「五月蠅いわね。私だって知らないわよ」

 くそっ! 下手に全校生徒のヘイトを稼いだせいで、学園に戻るのが怖い。そもそも戻るなんて考えていなかった。

 戻るんだったらもっと手加減したし、賭け事で荒稼ぎなんかしなかった。突発的に行動した俺の馬鹿!

 最悪、家族を巻き込んで命が危なくなったらみんなでルクシオンに乗って逃げれば良いとか考えていたのがいけなかった。調子に乗ってしまっていた。

 ここでハッとした。

「王太子殿下の父親が王様だよね」

 親父が冷めた目を向けてくる。

「当たり前だろうが。陛下の前で変なことをするなよ。今度こそ首が飛ぶぞ」

 俺は無視して話を続ける。

「自分の息子をボコボコにした相手を昇進させるって……どんな気持ちかな?」

 親父が腕を組んで考え、俺から視線をそらした。

「……面白くないのは事実だな。俺なら嫌だ」

 そりゃそうだ。

 いくら息子が悪かったとしても、面白いとは思わないだろう。いったい俺のことをどう思っているのか聞いてみたい。

 いや、やっぱり知りたくない。



 ――その日。

 一人の騎士が誕生した。

 十六歳という年齢で正式に騎士として認められるのはホルファート王国では珍しく、同時に爵位も正式に与えられる。

 階位は六位上。

 冒険者としての成功。

 そして、王太子の愚行を諫めた事も功績に数えられた。

 実際は名のある家の跡取りたちを五人も倒したその実力を評価されたと言われているが、正確な理由は不明である。

 だが、ホルファート王国に若く力のある騎士が誕生したのは事実。

 そんな騎士を見るために王宮には大勢の者たちが押し寄せた。



 夜。

 次の日から学園生活が再開するとあって、俺は学生寮に来ていた。

 ホテルのような上級クラスの寮では、入った瞬間から以前と対応が違っていた。

 用意された部屋のグレードが上がっているのもそうだが、使用人たちの態度も入学当初とは明らかに違っていた。

 学生寮の生徒たちも、俺を遠巻きに見るだけで話しかけてこなかった。

 ダニエルやレイモンドも、引け目があるのか声をかけてこない。

 広くなった自室。

 ベッドに大の字に横になる俺は、天井を見上げながら呟く。

「どうしてこうなった」

 律儀に返答するのはルクシオンだ。

『やはり安易な考えで行動した結果ではないでしょうか? 私がいるから多少無理をしても大丈夫と判断し、調子に乗って決闘に参加した事が致命的でした。失敗しても大丈夫だと思い、好き勝手に暴れたのがいけません。後処理も問題です。命欲しさに大金を支払い、宮廷工作に随分と資金が流れたと判断します。結果、昇進するという、望んでいない形に行き着きました。まぁ、ハッキリ言って……自業自得です』

「的確な回答ありがとう。気が付いたなら途中で言えよ、馬鹿野郎」

『途中で修正しようにも情報不足でした。言わせていただければ、私としてもこの結果は少々意外です』

 役に立たないAIである。

「くそ……おかげで婚活生活に逆戻りだ」

『よろしいではないですか。昇進したことで女性の見る目も変わるかも知れません』

「変わると思うのか?」

『はい。ただし、決闘での賭けがいけませんでした。あれで七割に近い学生を敵に回してしまいましたから。情報を集めましたが、夏期休暇にダンジョンに挑んで金を稼いだ生徒は男女ともに過去最高だったそうですよ』

 全財産を賭けた奴もいれば、借金をした馬鹿もいる。それくらい絶対に勝てると思い込んでいたのがいけない。

 まぁ、俺も知らなければ絶対に殿下たちに賭けていた。

『因みにマスターの評判は、卑怯者、口が悪い、最低野郎、などの罵倒が多い結果となっています』

「そんな情報いるの!?」

『マスターが嫌がると思って集めてみました。ですが、一部の男子からは人気もあるようです。言いたいことを言ってくれた、と』

「嬉しくて涙が出るね!」

 入学前よりも更に結婚が難しくなってしまった。

 確かに自業自得ではあるが、こうなると分かっていたらもっと自重した。だって、殿下をボコボコにして無事だと思わない。

『まぁ、良いではないですか。女尊男卑で男に厳しい世界ですが、結婚が全てではありません。世間体を気にしなければそれ以外は自由です。それこそ、金の力を使うべきでしょう。金に困っている女子を探せば良いのです』

「え~、それって酷くない」

『マスターにピッタリの解決方法ですね』

 ――こいつ、俺のことをどんな目で見ているんだ?




 始業式から三日が過ぎた。

 学園生活は順調とは言いがたい。

 何しろ周りが俺を避けてくる。

 ダニエルとレイモンドが俺に謝罪してくれたことが救いではあるが、以前のような関係に戻るには時間もかかるだろう。

 二人が俺に負い目があるのか、まだ話しかけてもギクシャクしている。

 ただ、俺以外は順調なようだ。

 ルクシオンの調べでは、アンジェもリビアも学園生活に困っていないらしい。まだ三日しか経っていないのでこれから何が起きるか分からないが、二人の周囲は落ち着いたものらしい。

 アンジェの方は信用を取り戻そうと必死な取り巻きたちに辟易している様子らしいが、それ以外は以前と同じようだ。

 リビアも夏期休暇中に勉強を進め、もはや俺では何を言っているのか理解できないレベルになっていた。

 勉強を教えて欲しいと言われないかビクビクしている。

 いっそ出来るふりをしていたと謝罪して謝ってしまいたい気分だ。

 そして問題がもう一つ。

 殿下たちだ。

 決闘で二度と近づかないと決めたわけだが、マリエとは離れていなかった。恋人ではなくなったとしながらも、夏期休暇中にマリエやカイルを含めた七人で何度もダンジョンに挑んでいたらしい。

 グレッグやクリスは俺と再戦するため、力を付けようとしているようだ。

 ジルクやブラッドは、実家からの支援を打ち切られたので資金稼ぎが主な目的らしい。

 マリエに関しても同じようだ。

 元からマリエの実家である子爵家の家計は火の車。支援など期待できるわけもなく、ダンジョンに挑んでいたようだ。

 そして殿下――ユリウスは、そんなマリエたちと行動を共にしていた。馬鹿にしたような話だが、本人たちの言い分は「たまたまダンジョンに挑もうとしたら一緒になった」という事になっている。

 俺は決闘後に評価は酷く落ち込んだのに、殿下たちに関しては同情されて中には応援している女子もいるらしい。

 それに七人で随分楽しそう――いや、一人だけ楽しそうじゃない奴がいた。

 今回の元凶であるマリエだ。

 地位も名誉も、そして財産も失ったような面子に囲まれて苦しんでいるらしい。他の面子はそれを楽しんでいるのがポイントだ。

 周りは楽しそうなのに、マリエ一人が現実を見て焦っているのが笑える。

 小賢しく動き回った結末は、間違いなくマリエにとって望んだ結果ではないのを思えばこれほど素晴らしいことはない。

 スカッとした。今日はよく眠れそうだ。

 校舎の中庭にあるベンチに座り、そんなことを考えていると両脇に人が座る。ダニエルやレイモンドかと思ったが、雰囲気が柔らかく良い匂いがしたので違うと思った。

 野郎臭くない。

 顔を上げるとリビアとアンジェが座っていた。

「リオンさん、今日も一人ですか?」

「心を抉る言葉をありがとう。今日も一人です」

「まったく、その物言いをどうにかしたらどうだ? それより暇なら付き合え」

 取り巻き連中を巻いてきたのか、アンジェは少し疲れた表情をしていた。

「付き合う? どこに?」

 リビアがウキウキとした表情をしていた。

「クレープの屋台です。評判の良いお店があるんです!」

 流石は乙女ゲーの世界。

 剣と魔法のファンタジー世界でありながら、クレープや甘いものは大抵揃っている。女性に優しい世界だ。

 男には厳しくなければ最高の世界だろう。

「イチゴとかチョコはあるのかな?」

 しかし、体が糖分を求めるので俺も興味が出てきた。

 リビアが思い出しながら答える。

「あるみたいですよ。イチゴジャムは人気でしたね」

 アンジェはクレープ自体が珍しい。

「屋台か。あまり経験がないな。取り巻きたちも、私が口にするようなものではないと言って買わせないからな」

 そう言う取り巻きの女子たちは、大抵が屋台で買い食いをしているはずだ。ルクシオンがそんな報告をしてきた気がする。

 二人に手を握られ、立たされるとそのままクレープの屋台を目指すことになった。

「リオンさん、早く」

「ほら、急げ」

 背中を押され歩き出した。

 こんなに優しくて可愛い二人だが、俺にとっては手の出せない相手だ。理不尽すぎないだろうか?

 本当に――乙女ゲーの世界は(モブ)に厳しい。
いかがだったでしょうか? 楽しんでいただければ幸いです。

これにて第一章が終了となります。

明日は短いですが幕間を投稿する予定です。

今後の予定は活動報告で報告できればと考えています。
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