13話 漆黒の魔王VS強欲の魔獣
ブリューメルは雪村の身体の制御を奪うとすぐさまスキルを行使した。
ブリューメルから放たれる漆黒は、強欲の魔獣である白狼の周囲を包みこんだ。
白狼は思うように動けず、ただその場で伏せの体制になってしまう。
雪村は魔獣が呆気なく魔王にやられていく姿をただ、呆然と幽霊の如く見ていた。まあ今の状況は俺の身体をブリューメルが動かしていて、その様子を俺が俯瞰的に真上から見下ろしている状況だ。なんとなくゲームのプレイヤーみたいな感覚に近い感じがする。
さて戦いの方だが、見ての通りブリューメルの有利という状況で進んでいる。
中々小賢しい戦い方をしているブリューメルに、真っ向から攻撃を受けているのが白狼である。
というか白狼はこの状況においてなぜ退散することはないのだろうか。
「ぐ、くく。漆黒の魔王とやらよ」
白狼の口からなぜか人間の言葉が放たれた。
ブリューメルはにやりと笑いつつ、
「やっと、口を開いたね、強欲ちゃん」
「漆黒の魔王よ。なぜ、そなたは人間の味方をする。そなたはかつて多くの人間を葬りさり、漆黒の世界を築こうとしていたではないか?」
「懐かしいね。それ。まあ、でも今はこの肉体の人間の味方ではあるな。決して私自身が人間の味方をしているわけではないぞ」
「そうか。その肉体、なるほど、異世界人とみた」
「そうだね、彼は異世界人なのさ。しかも驚くことにこの人間まだ自分のスキルを発芽しておらぬ」
俺はその言葉に少し気になっていた。俺のスキルって一体なんだ。ブリューメルの発言から察するになにかスキルを発芽させるために条件とやらが必要というわけか。
「漆黒の魔王よ。そなたは一体何が目的だ」
「んー。私の復活かな。その先のことはまだ誰にも教えることはできない」
「そうか。そなたの真意は分かった。ならば我がこの場で直々に手を下そう」
白狼は漆黒の中から手を振りかざす。
その瞬間、白狼にまとわりつく漆黒は綺麗さっぱりなくなる。
ブリューメルは興味深そうに目を細める。
「へえ、やるじゃん。それが正しく『強欲』の力。それで私が包んだ漆黒を奪ったというのか」
「ああ、そうだ」
「なるほどね」
ブリューメルは納得したかのように頷くと、雪村に話しかける。
《こりゃー参ったね。多分、勝てないわ》
《お前のスキルをもってしてもダメなのか?》
《まあ、スキルが使えないというわけではないよ。ただ、私が今の状況で本気出すとこの世界をしばらく漆黒に包むことになるかも》
《そうなるとどうなるんだ?》
《この世界を漆黒に包むと体力のない者からどんどんぶっ倒れるね。最悪、死人が出る》
《じゃあダメだな。それでお前はこのまま俺の身体借りて戦うつもりか?》
《それもいいけど。ただ私の力を酷使しすぎると、最悪、君の身体が壊れるかもしれない》
《それは嫌だな。まあ、とりあえずこれ以上はスキル使うな》
《了解。その方向でどうにか戦ってみるよ。君の身体は治癒能力高い状態にあるから、致命傷でも大丈夫だろう》
こいつ他人の身体をボロボロにする気かと俺は内心ひやひやしながら聞いていた。
《ところでなんだが、お前が戦ってくれている間に俺、少し気づいたことがあるんだけど》
《ほう。それは何かぜひとも聞かせてもらおうではないか》
《ああ、そうだな。あいつの首を見てみろ》
《首?》
ブリューメルは白狼から距離を置いて、白狼の首を確認した。
そこにはまるで黒く焼けたような傷跡があった。
《ああ。なるほど。そこに攻撃すれば》
《そういうこと》
《でかした、ユキムラくん》
《なんか初めて名前で呼ばれた気するけど。まあいい。ブリューメル、作戦ガンガン行こうぜ》
「了解!」
ブリューメルはそう言うと白狼への攻撃を再開した。
雪村に言われた通りにブリューメルは白狼の首元にスキル『漆黒』を放つと、白狼はさっきまでの威勢はすっかり消え去り、呆気なく気絶したのだった。
白狼は気絶したかと思うと、みるみるうちに身体が収縮していき、何と子犬くらいのサイズになっていた。
ブリューメルは白狼を抱きかかえると、その頭を優しく撫でた。
白狼は嬉しそうに吠えた。言葉はなんか忘れたっぽい。
《おめでとう、ユキムラ君。これが白狼の本来の姿だよ》
《本来の姿ってこんな小さい魔獣だったのかよ》
《まあ、そういうこと。レオナちゃんの報告とか、事後処理は、ユキムラ君、君にすべて任せた》
《は?》
俺が呆気に取られていると、ブリューメルは俺に身体を明け渡した。
「ホント、自由過ぎる魔王だな」
と俺は少しクスっと笑っていると、街の方からレオナがやってきた。
「雪村さん、やりました、って、ええ!?」
レオナは俺が抱きかかえる白狼を見て驚いていた。
「ああ、こいつが雪を降らせていた魔獣、なわけ」
「なんでこんな小さく?」
「多分、一回気絶したからかな。それで本来の姿に戻ったらしい」
「なるほど。あ! それよりもユキムラさん」
「なに、思い出したかのように叫んで」
「何やら、王様があなたとお話したいとのことで、あと普通に脱獄したこともバレてますし」
「まあ、仕方ない行くしかないか」
王が俺に話があるって一体どういうことなのか。って思い当たる節が多すぎるな。
俺はレオナに連れられながら、再び街の方に戻ることにした。
なんともあっけなく魔獣討伐しちゃいましたね、ブリューメルさん。流石魔王です。さすまおです。




