高校生活スタート
「へえ。
弟いたんだキヨト。」
「中学にもいたじゃないか。
弟っていっても
双子で少し生まれた時間が早いだけだけど。」
タケゾウの発言に
キヨトが少し呆れながら返答した。
「タケゾーはもう少しまわりに興味を持とうね。」
「確かにタケしゃんはもう少しまわりに
興味をを持ってもいいかもね。
先生がお父さんっていうのはびっくりしたけど。」
「そうそう!
まさかお父さんが担任なんてすごいよね。
赤点取っても直してくれるんじゃない?」
そんなタケゾウに
サヤとハルも少し呆れ気味に
意見を言うと
キヨトの父について話題は変わった。
「そんなえこひいきしてくれる
ような人じゃないよ。
しかし…まさか担任になるとは。」
「そりゃそうだ。
自分の親が担任とか
考えたくないわ。
授業中、寝てらんね。」
「「「それは、どの先生でもダメ!」」」
「ぐ…そんな揃えて言わなくても…。」
「「「ぷ…あははは」」」
タケゾウが皆に呆れられているのを
何とか回避しようと発言したが
三人から同時攻撃を受け
敢え無く敗退した。
そんな皆が笑っているところに
一人の男が近寄ってきた。
「また楽しそうだね。」
「お、モトカズ。」
「おはよう。」
「おはようございます。」
「おはよー。」
クラスメイトのモトカズがやってきた。
高校に入ってから
タケゾウが珍しく仲良くなったクラスメイトだ。
そんなこんなで高校生活が無事始まっていた。
奇跡的に皆が同じクラスとなり
始まりの心配事は解消されていた。
一部を除いては。
「おいキヨト。
あいつなんなんだよ?」
「あいつって?」
「ショウジロウってやつだよ。
話し掛けてもシカトするし
ムカつくんだけど。
ヤっちまってもいいのかあいつ?」
「な、なんてこと言うんだよ。
ダメに決まってるだろ。
なんでそんなこと言うんだよ。」
「ムカつくからに決まってるだろ。」
キヨトの弟のデンジだった。
キヨトとは違い明るく、面白いタイプのデンジは
気性が荒く、感情に素直な面が強く
ショウジロウの態度に納得がいかないようだ。
デンジの他にもショウジロウを
よく思わない者は多かった。
新しく知り合った者、中学が同じだった者
どちらでも関係なく
ショウジロウはあまり話さなかった。
特に、デンジには
口を全く開かず声を発することすらしなかった。
そんな状況を気にして
キヨトがデンジをなだめる。
そしてデンジの荒っぽさは高校に入りエスカレートしたのか
度々問題を起こしていた。
それの抑止力となるよう
キヨトはタケゾウ達といるよりも
デンジといることが次第に増えていった。
そんな入学してから一ヶ月ちょっとすぎた
五月末の頃。
「お、おいデンジ!」
「なんだよ、うっせーな。」
昼休みの教室でデンジがショウジロウに絡み
シカトされ、ついに胸ぐらをつかんだのだ。
「こいつがいっつも一人でいるから
なんとかしてやろうとしてんだろうが!」
「だからって暴力振るったらダメだろうが!
とにかく離すんだ!」
「いやだね!」
胸ぐらをつかんだままキヨトにそう言ったデンジ。
キヨトはその手を掴み離すよう説得を続けた。
教室に残っていた者はオロオロと
止めるべきか止めないべきかと
悠長に話し合いをしながら傍観していた。
「はは。」
ショウジロウの静かな笑い声が
そんな言い争いを切り裂いた。
傍観していた者はもちろん
その笑い声の異常さに
キヨトとデンジも言い争いをやめ
ショウジロウを見た。
「な、何笑って…」
デンジは最後まで声を発することができなかった。
どう見ても異常である。
胸ぐらを掴まれ
一応は自分のことで言い争いをしている二人を
まるでテレビでも見ているかのように笑っていたのだ。
そこに自分が存在しないかのように。
そして、ショウジロウが声を発した。
「…あれ?
もう終わりなの?
せっかく面白くなってきたのに。
また今度に期待かな。」
そう言うと胸ぐらをつかんだ手を
軽く払い
席について何もなかったように
ぼーっと教室の外を眺め始めた。
この異常さにようやく
対応したデンジが声を荒げた。
「おいてめぇ!
自分のことで話してるのに
なんなんだよ!?」
まるで恐怖を振り払うように
叫んだデンジ。
その叫びはショウジロウには届かなかった。
まるで自分のことではないように
ショウジロウはデンジに目をやった。
「ぐ…この!」
デンジはついにショウジロウを殴ろうと
拳を作り、振りかぶった。
「や、やめろ!!」
そこにキヨトが止めようと
デンジの振りかぶった手を
掴むために手を出したが
それが顔に当たってしまった。
「キヨト…てめぇ!」
「ち、ちがう!
ただ止めようと…」
そう言おうとしてキヨトの顔面に
デンジの拳が入った。
そして教室が騒然としているところに
タケゾウ、サヤ、ハル、モトカズがやってきた。
「きゃあ!
な、何してるの二人とも!」
「た、タケしゃん!!」
「わかってる!
モトカズ止めるぞ!」
「はいよ!」
ドアをくぐったタケゾウとモトカズは
二人に突っ込んだ。
タケゾウはキヨトに
モトカズはデンジにタックルをし
真横に吹っ飛ばした。
「何してんだキヨト!」
「デンジくんもやめようよ。」
モトカズは倒れたデンジの両足を
そのまま両手で縛った。
「は、離せこら!!」
「離さないよ。
暴れないでね。」
「おいキヨト…。」
タケゾウがタックルで
横に吹っ飛ばしたキヨトは
特に声を荒げるでもなく
冷静に立ち上がった。
タケゾウはそんなキヨトに
何か言おうとしたが
そのまま口を閉じ立ち上がった。
「デンジ。
もうやめよう。」
唇から少し垂れた
血を手でサっと拭うと
キヨトは倒れて暴れているデンジに言った。
あまりにも冷静に言うキヨトに
デンジは少し顔を強張らせて
何かを言おうとしたが
そのまま暴れるのをやめた。
教室にいた者も同様に
ざわつくことすらなく
キヨトを見ていた。
キヨトが怒っているだろう
そんなところを
見た者がいないからだ。
「珍しく怒ってんな。
口大丈夫か?」
「ん?
ああ。
大丈夫だよ。
…怒ってるってほどじゃないよ。」
「そうか?
目が座ってたぞ。
しかし、キヨトも怒るんだな。」
空気を読めないタケゾウのセリフに
まわりの者は冷や汗をかいた。
「ははは。
相変わらず直球だね。
確かに怒った。
暴力は良くないからね。」
「暴力は良くないかもな。
にしても怒る時くらい
もっと感情出せばいいのに。」
タケゾウの空気を読めない発言で
キヨトの表情もいつものように戻った。
まわりの者達は少し安堵した。
「感情的になってもね…。
あの…ショウジロウくん。
弟が迷惑かけたね。
ごめんね。」
キヨトはショウジロウに
深く頭を下げて謝罪した。
そんなショウジロウに
クラスの視線は集中した。
「…あ、僕に?
気にしなくていいのに。
楽しかったからね。」
ショウジロウの意味のわからない
発言に皆が
疑問に顔を歪めた。
「た、楽しかったの?
それなら…いいのかな?
とにかくごめんね。」
「…。」
ショウジロウは
乾いた作り笑顔で何も言わず
キヨトに笑いかけた。
「なあショウジロウ。
お前は何がしたいんだ?」
そこにタケゾウがその空気を壊すように
話し掛けた。
途端にショウジロウの顔が
タケゾウを注視するために
タケゾウのほうを向いた。
タケゾウを見つめるその瞳には
諦めや失望が渦巻き
その奥底にタケゾウを手招きするように
復讐や嫉妬が影を潜めていた。
タケゾウはそんな瞳を見ると
背中に一筋の冷ややかな
汗が流れるのを感じた。
「…何が…したいかだって?」
「あ、ああ。
クラスの奴らが
しっかり気にかけてくれたろ?
お前にとって迷惑だったんなら
もう話掛けないように
したほうがいいだろ?」
タケゾウなりに少し気を使った発言だった。
「…ははは…。」
その発言を聞いた
ショウジロウは乾いた声で少し笑い
ゆっくりと声を発したのであった。
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