第1章-46 時空を超えたコメント
(誰かが私を呼んでる……この声は……アーサー?)
(……温かい……この匂い……知ってる)
盛大な恥をかいた甲斐あってか、両手で抱き寄せているシャルとエリーは目を覚ました。
「あ……アーサー……?」
「うん、遅くなってごめんね。約束通り助けに来たよ」
「……この匂い……好き」
「エリー? あんまりクンカクンカしないでもらってもいい? 恥ずかしいから」
だんだんと意識がハッキリしてきたシャルとエリーは、我に返ったのか満面の笑顔を浮かべて抱き着いてきた。
「来てくれて……嬉しい。アーサー……」
「……このまま結婚する?」
「ちょっ、エリー!?
そういうのはもっと段階を踏んでからでないと!
まずはお姫様抱っこしながら指輪の交換からでしょ!」
「……シャルはそういうのが好きなんだね」
「なっ! ちがっ! いや違くないけど違くて!
ちょっと、アーサーも何か言いなさいよ!」
起きたてでまだ混乱しているのか僕の左右でお喋りが止まらない二人。
その会話が聞こえてくる周囲の民衆は、彼女達のあまりの尊さに一生推せると呟いていた。
「っ!?」
さっきまで僕達がいた場所に衝撃波のようなものが襲来してきたので咄嗟に跳んで避けた。
危なかった、あとちょっと遅かったら真っ二つになっていたかもしれない。
再びコロシアムに降り立って二人を立たせた。
「下がってて、せっかくの綺麗な服が汚れちゃう」
「っ、アーサー……勝ってね!」
「……後でウエディングドレス触れるよ!」
「任せて!……いや触れるよって何!?」
「……えっ?」
「えっ?」
あれ、エリーと上手く会話が成り立っていないような気がする。
(アーサー様。それは結婚式を挙げた後の最初の夜を楽しみにしておいてねという意味でございますよ)
なんかシャリアさんが時空を超越した感じで脳内に介入してくるんだけど!?
えっ、なにこれ僕の妄想なの?
だとしたら10歳の女の子相手にかなりヤバいこと考えてることになるよ、僕!?
「俺のお嫁さん達といちゃつくんじゃねぇぇぇっ!」
「ぐっ!?」
ギャギイイイイイイイン!
勇者のライフイーターと僕の剣が激しく交差して火花を散らす。
この威力、腐っても勇者というだけある。
「シャルとエリーは小鹿のお嫁さんじゃないよ?」
「誰が小鹿だコラぁぁっ!」
そう言いながらライフイーターにエネルギーが集中していく。
これはデカいのが来る!
「滅殺斬り!!!」
「旋空破斬!!!」
ぐうぅぅぅぅっ!?
ダンジョンで会得した必殺剣で咄嗟に受けて立ったが、勇者のふざけた技名は凄まじい威力を持っていた。
先ほど受けた衝撃波を圧縮したような感じなので、本来は接近戦で使う技だったということだろう。
でも、こっちだってミラン姉さんと特訓したんだ。この程度で負けるもんか!
(お前だけだよ、この場でアタシを思い出してくれたのは)
今度はミラン姉さんが時空を超越した感じにコメントしてくる!?
なんなの、流行ってるのそれ?
しかもなんか内容が切ないし。そっちで何があったのさ!
(なるほど、最近ご家族と上手くいっていないのですね。
まずは奥様へ日頃の感謝を言葉に。
それから行動も伴っていなくては伝わりませんので、積極的に育児を協力したり家事を行うなどしてみてはいかがでしょう?)
なんかセラスさんが時空を超越しながら現代社会の共働き夫婦みたいな人生相談受けてる―――!?
しかも今その情報いらないやつ!
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