第1章-40 シャリアさんの冒険 前編
話は昨夜に戻ります。
セレスさんの送り込んだ諜報員から私宛にヘルプ要請が届きました。
お嬢様達が軟禁されている場所までは情報網を駆使してなんとか突き止めることが出来たものの、宮廷魔法士による厳重な封印が城全体に施されており部外者は立ち入ることが非常に困難な状況とのことです。
やれやれ、彼はまだ訓練が足りないようですね。
セレスさんに伝えて再教育してもらうようにするとしましょう。
諜報員の彼からの情報によると、城の西側最上階にある国賓用の部屋にお嬢様達はいるようです。
かなり警備が厳重のようですので、こういう時は逆に堂々と入る方が効果的なのですよ。
現に私は正門から普通に入ることが出来ました。
今は侍女長からの依頼でお嬢様達の世話を任されている侍女達が聞き耳を立ててばかりで仕事をしないそうなので指導しに行くところです。
全く、お嬢様達の世話をサボるなんて信じられません。
「あのすみませんナディアさん、料理の最終確認お願いします」
「どれどれ……もう少しレモンを足すと味が決まりますよ。
それからこちらは焼く時間をあと二十秒早めたほうがよいですね」
「ナディアさん、来月のシフトなんですが……」
「シーナさんとメーリエさんの配置を交換して、ユルンさんをホール担当に、グランノさんをミーサさんの補佐に回しましょう」
「ナディアさ――ん! 新人騎士のトレーニングメニューはこれでどうでしょうか!」
「拝見します……これだと若い新人騎士さん達の中で慣れない訓練に付いてこれない人が出るかもしれないので、まずは持久力優先のメニューを組み込みましょう。
食事による補佐と睡眠時間の確保も忘れないでくださいね」
ちなみにナディアとは私の偽名です。
さすがに本名は名乗れませんからね。
もちろん髪形をお団子ヘアーに変えたり眼鏡をかけたりと変装も抜かりありません。
さて、お嬢様達が軟禁されている部屋に辿り着くまでに色々と聞かれて時間がかかってしまいましたが、そろそろ到着出来そうですね。
あら……?
お嬢様達の部屋までの階段が見当たりませんね。
見取り図を見ておいてよかったです。
(突き当りにあるはずの階段が無い。もしや魔法で隠されている……とか)
聞き耳を立てて確認します。
お嬢様達の世話をサボっている侍女ではありませんが、聞き耳を立てて情報を集めるのは出来るメイドの嗜みですからね。
……なるほど、どうやらお嬢様達は2つ上の階にいらっしゃるようです。
この上の階にいる者が魔法の使用者ですね。
ならば使用者に聞こえるような声で……。
「侍女長から頼まれて上の階に行きたいのですが、これでは辿り着けなかったとお伝えするしかありませんね。
侍女長に魔法使いの方に妨げられたとお伝えするほうがよいのでしょうか」
「わぁぁあ、待て待て! 今階段出すから! 居眠りしてたわけじゃないから!」
なるほど、居眠りしていたのですね。
職務怠慢ではありますが、今回は私のハッタリに乗ってもらえたので褒めてあげましょう。
とにかくこれで上の階に上がれました。
「こちらこそお忙しいかったのに気づかず、すみませんでした。
こちら差し入れのクッキーです」
「へへ、これはどうも……」
睡眠薬入りですけどね。
この警戒心の無さ、どうやら彼はまだ新人なのでしょう。
どこも新人の教育には苦労致しますね。
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