第1章-10 誰かがデレた
決闘が一ヶ月後だと言われてから一時間後、ようやく一人になれた僕は用意してもらった一人部屋のベッドで横になり、両手を上にまっすぐ伸ばして一の字になりながら今日のことを思い出していた。
なお一の字のポーズに意味は無く、一が続いていたからなんとなく一を意識して一の字になっただけである。窓の外を見ると一羽の鳥的なやつが側にある木の枝でたたずんでいる。
辺りがすっかり暗くなってしまっているが、不思議とその白い鳥的なやつの姿は鮮明に見えた。
ギュオオオと印象的な声で一回鳴いた後に視線が一回合ったような気が何故かした。さすが異世界、不思議生物がいっぱいいるようだ。
ここまでで何回くらい『いち』と言っただろうか。そんなどうでもいいことを考えてしまうくらいには疲労が溜まっていた。
ちなみにこの世界の一ヶ月は地球とほぼほぼ同じくらいらしい。
なぜわかったかというと、ツアー本の裏表紙に豆知識一覧があり、そこに書いてあったからだ。
お金の単位とかも書いてあったので助かった。
お金は日本円が硬貨だけになったような感じで、単位はゴルドというようだね。例えば5000円使いたい時は5000ゴルドの硬貨を出す、みたいな。覚えやすくてありがたい。
ただ1万の上には100万ゴルド硬貨とか1億ゴルド硬貨があるようだけど、そんなのを見る日がくるのだろうか。ひとまず物価についてはそのうち街に出て値段を見てみようと思ってる。
「異世界に……来たんだよなぁ」
しみじみと思う。
アニメなどが好きな身としては異世界に来るのは憧れではあったけど、いざ自分がその立場になると混乱を隠せない。
それにしてもなぜ僕は異世界の貴族の屋敷のベッドで一の字になっているのだろう。冷静になるとかなり変な体勢だし、地味に維持がキツイ。
「じゃなかった! 疲れてるのか変な思考になってしまってるな、僕」
ガバッと起き上がった僕は頭をブルブルと振る。
思考をリセットして、枕元に置いたツアー本を開いて改めて見てみた。
「異世界についてはもう受け入れなきゃならない現実……なんだよね。
なら、生きていく為にも羽毛さんからもらったこのツアー本を有効活用しよう!」
思えば異世界に来てから落ち着いてツアー本を読む暇がなかったので、この機会に一気読みしてみるのがよいと思う。
そう思ったのだが……。
「この本……ほとんど白紙だ。書いてあるのは既に読んだことのあるページのところだけ」
つまり、必要になった時に必要な情報を与えてはくれるが、常に全部が開示されているわけではないということか。
まるで探したいワードが分かっていないとうまく探せなかったりAIが手伝ってくれたりする世界的に有名なネット検索機能みたいだ。
「困ったな。せめて強くなるヒントとか分かればと思ったんだけど……」
『5ページが開いた』
えっ……。
ま、まさかホントに検索出来る物なの、これ?
「……異世界のご飯事情とか」
『15ページが開いた』
「……異世界のトイレとか」
『20ページが開いた』
「……異世界のオススメ旅行ルートとか」
『9ページが開いた』
「……じょ、女性……関係……は?」
『69ページが開いた』
「このツアー本って万能じゃん!?」
【照れます】
「誰かが照れた!?」
【デレます】
「誰かがデレた!?」
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